グザヴィエ・デ・メストレ・ハープリサイタル印象記
レコードやCDでは何度も耳にしているが、実は、ハープだけの生演奏は初めて。オーケストラの一角を占めている演奏は何度か聴いたことはあるがソロ・コンサートは聴いたことがなかったので、それだけで楽しみにして聴きにいった。しかも、泣く子も黙るウィンフィルのハープ奏者と言う触れ込み、期待するのも無理ない。
演奏は、かっこよかったの一語。時間の隙間を細かい粒だった綺麗な音が、無数の織り目をなして埋め尽くしてゆく。びっしりと織り上げられた音の絨緞のうえに、さらに、鮮明な音の構築物が配置されてゆく、なんとも見事な音の眺め。ハープ演奏の技術的なことはよく分からないが、技巧の限りを尽くして演奏を組み立ててゆく様子が手に取るように分かる。休憩を挟んで、2時間余り、ハープ演奏の醍醐味をたっぷりと味わわせてもらった。
曲目では、バルトークのルーマニア民族舞曲、スメタナのモルダウ、この2つの演奏が気に入った。親しみ深い美しいメロディーが音の織物の中から、鮮やかに浮かび上がってきて、こちらの琴線に触れてくる。拍手も一番多かった。最後の曲、ルニエの伝説という曲の演奏も美しかった。ハープイコール優雅という図式を押しのけるようなダイナミックな演奏だった。特に張りのある高音部の力強さが印象的だった。遠くまで音の粒が弾け飛ぶような気がした。
ハープという楽器のレパートリーそのものが余り多くないのか、メストレ君はハープのレパートリーを広げるのに力を入れているそうだ。びっしりと音を敷き詰めてゆくのがハープらしい演奏なのかもしれないが、もっと隙間のある1音1音を聴かせるような、間を生かした演奏も聴いてみたい気がした。最後に、今日のプログラムを引用しておこう。
◆ドゥセク:ハープ・ソナタハ短調作品2−3(1.アレグロ2.アンダンディーノ3.アレグロ(ロンド))
◆リスト:ナイチングール
◆バルトーク:ルーマニア民俗舞曲(1.棒の踊り 2.飾り帯の踊り 3.足踏み踊り 4.ブチュムの踊り 5.ルーマニアのポルカ 6.速い踊り)
◆スメタナ:交響詩「ヴルタヴァ(モルダウ)」
◆ハチャトゥリャン:オリエンタル・ダンス/トッカータ
◆ドビュッシー:2つのアラベスク
◆ルニエ:伝説