武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 菅総理の浜岡原発停止要請を歓迎する

5月6日、テレビのニュースでこの報に接した時、身内に湧き上がってきた安堵感は、東北大震災以来久しく忘れていた、久々の気持ち良い感覚だった。ひょっとするとこれは、この国の大きな方向転換の第一歩になるかもしれないという予感を伴って、<幽かな希望の曙光>というフレーズが浮かんできた。現政権のこの姿勢を歓迎し、後押しする動きを各地で育ててゆくことが大事になってきた。
ネットを捜したら、この日の記者会見の模様を詳細に報道しているサイトを見つけた。「NHK「かぶん」ブログ」がそれ。http://www9.nhk.or.jp/kabun-blog/100/81095.html
いつまでネット上に存在し続けるか分からないので、以下に全文の引用しておこう。

浜岡原発停止要請・菅総理の記者会見全文紹介】2011年05月06日 (金)6日19時すぎからおこなわれた菅総理の記者会見の全文を掲載します。
国民の皆様に重要なお知らせがあります。本日私は内閣総理大臣として、海江田経済産業大臣を通じて浜岡原子力発電所のすべての原子炉の運転停止を、中部電力に対して要請を致しました。
その理由は何といっても、国民の皆様の安全と安心を考えてのことであります。同時に、この浜岡原発で重大な事故が発生した場合には、日本社会全体に及ぶ、甚大な影響もあわせて考慮した結果であります。
文部科学省地震調査研究推進本部の評価によれば、これから30年以内にマグニチュード8程度の想定東海地震が発生する可能性は87%ときわめて切迫しております。
こうした浜岡原子力発電所のおかれた特別な状況を考慮するならば、想定される東海地震に十分耐えられるよう、防潮堤の設置など、中長期の対策を、確実に実施することが必要です。
国民の安全と安心を守るためには、こうした中長期対策が完成するまでの間、現在定期検査中で停止中の3号機のみならず、運転中のものも含めて、すべての原子炉の運転を停止すべきと私は判断を致しました。
浜岡原発では、従来から、活断層の上に立地する危険性などが指摘をされてきましたが、先の震災とそれに伴う原子力事故に直面をして、私自身、浜岡原発の安全性について、様々な意見を聞いてまいりました。
その中で、海江田経済産業大臣とともに、熟慮を重ねた上で、内閣総理大臣として、本日の決定を致した次第であります。
浜岡原子力発電所が運転停止をしたときに中部電力管内の電力需給バランスが、大きな支障が生じないように、政府としても最大限の対策を講じて参ります。電力不足のリスクはこの地域の住民の皆様をはじめとする全国民の皆様がより一層、省電力、省エネルギー、この工夫をしていただけることで、必ず乗り越えていけると私は確信を致しております。
国民の皆様のご理解とご協力を心からお願いを申し上げます。
【以下、質疑応答】
Q)
安全性の観点から止めると言うことだが、中部電力はこれまで、東海地震並みの揺れが起きても安全性に問題はないとしてきて、国も容認してきたわけだが、なぜこの期にいたって突然、この浜岡原発だけなのかが解せないことと、もうひとつ、この夏場を迎えて、全部止めると言うことになると夏場の電力量よりも供給量が下回ってしまうと思うがその対策は具体的には?
菅総理
ただいま申し上げたましたように、浜岡原子力発電所が所在する地域を震源とする想定される東海地震が、この30年以内にマグニチュード8程度で発生する、そういう可能性が87%と、文科省関係機関から示されております。そういう、この浜岡原発にとって、特有といいますか、その事情を勘案をして、国民の安全安心を考えた結果の判断、決断であります。また、電力不足についての質問でありますけれども、私は、これまでの予定の中で言えば多少の不足が生じる可能性がありますけれど、この地域をはじめとする、全国民の皆様の理解と協力があれば、そうした夏場の電力需要に対して十分対応ができる、そういう形が取り得ると、このように考えているところであります。
Q) 浜岡原発への停止要請だが、どういう法律のどういう根拠に基づく要請であるのか?もし法的担保ない場合は中部電力が断った場合には総理はどうされるつもりか?
菅総理 
この要請に関して、後ほど海江田経済産業大臣から、詳しくご報告をさせていただきますが、基本的には、この私がきょう申し上げたのは、中部電力に対する要請であります。法律的に色々な規定はありますけれども、指示とか命令という形は、現在の法律制度では決まっておりません。そういった意味で要請をさせていただいたということであります。
Q) 中電側が断った場合は?
菅総理 
ここは十分にご理解をいただけるように説得をしてまいりたいと、このように考えております。

一読、抑えに抑えた慎重な発言ではあるけれど、この発言は状況を揺るがす力を秘めている。浜岡原発に取り組んできた多くの方々の想いが背後に渦巻いている。これを歴史的な発言にしたい。


ところで、5月5日子どもの日の朝日新聞の朝刊に、気になる記事が載った。原発推進勢力のおぞましい姿が浮き彫りになったという意味では、注目すべき記事だった。記念にこれも全文引用しておこう。このような策動を許してはならないという意味で一読に値する。自民党にもいろんな立場があるということ。
(画像をクリックすると大きなサイズで紙面が読めます。) 

自民 原発推進派はや指導 「原子力守る」政策会議発足 (2011年5月5日 朝日新聞 朝刊4面)

東京電力福島第一原発の事故に収束のメドが立たない中、国策として原発を推進してきた自民党内で早くも「原発維持」に向けた動きが始まった。原発推進派の議員が集まり、新しい政策会議を発足。「反原発」の世論に対抗する狙いだ。
この会議は「エネルギー政策合同会議」。自民党内の経済産業部会、電源立地及び原子力等調査会、石油等資源・エネルギー調査会の三つを合体させた。電力需要対策とエネルギー戦略の再構築の検討を目的に掲げるが、党幹部は「原発を守るためにつくった」と明かす。
幹部には原発推進派が名を連ねる。委員長は元経済産業相甘利明氏。旧通産省(現経産省)出身の細田博之官房長官が委員長代理、西村康稔衆院議員が副委員長に就いた。先月12日の会合では、幹部陣の隣に東電の元副社長で現在は東電顧問の加納時男・元参院議員が「参与」として座った。
甘利氏は「安易に東電国有化に言及する閣僚がいる」と指摘する資料を配布。会議後に河野太郎衆院議員が「原発推進派が並ぶ人事はおかしい」と抗議したが、認められなかった。
自民党中曽根康弘元首相らを中心に「国策・原子力」の旗を振ってきた。1955年、研究と開発を進める原子力基本法を制定。74年に「電源三法」を制定し、立地自治体に手厚く補助金を出してきた。電力業界は資金と選挙で自民党を支援。電力各社でつくる電気事業連合会電事連)は80年代前半から11年間で約65億円を党機関紙の広告費として自民党に支払った。
谷垣禎一総裁は震災後の3月17日の記者会見で「現状では、原発を推進していくことは難しい状況」と述べたが、1週間後には「安定的な電力供給ができないと製造業など維持できるのかという問題もある」と軌道修正した。党内では「推進派から反発されたため」と受け止められた。
会議は大型連休後、中長期のエネルギー戦略の議論を始める。甘利氏は「我々は市民活動家ではない。膨大なコストや不安定を覆い隠し『自然エネルギーで何とかなる』と言うのは無責任だ。現実問題として原子力を無くすわけにはいかない」と言っている。(渡辺哲哉、土佐茂生)

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原子力の選択肢を放棄するな ―東電顧問・元参院議員 加納時男氏(2011年5月5日 朝日新聞 朝刊4面)

地元が要望 雇用に貢献

──福島の現状をどう感じていますか。

 「東電出身、元国会議員として二重の責任を感じている。インターネット上で『お前は絞首刑だ』『A級戦犯だ』と書かれてつらいが、原子力を選択したことは間違っていなかった。地元の強い要望で原発ができ、地域の雇用や所得が上がったのも事実だ」

 ──原発推進のため国会議員になったのですか。

 「そうではない。当時財界と自民党との間に溝があり、経団連は財界の声を反映させたかった。特定の業界のために仕事をしてきたわけではない」

 ──電力会社役員から個人献金を受け、自民党原子力政策に甘くなったことは。

 「お金をもらったから規制を緩くしたとか、そんなことはない」

 ──河野太郎氏は「核燃料サイクル」政策は破綻していると主張しています。

 「反原発の集会に出ている人の意見だ。自民党の意見になったことはない。反原発の政党で活躍すればいい。社民党に推薦しますよ。福島瑞穂党首は私の大学の後輩だから」

 ──今後も原発を新設すべきでしょうか。

 「太陽光や風力というお言葉はとってもロマンがある。しかし、新増設なしでエネルギーの安定的確保ができるのか。二酸化炭素排出抑制の対策ができるのか。天然ガスや石油を海外から購入する際も、原発があることで有利に交渉できる。原子力の選択肢を放棄すべきではない。福島第一原発第5、6号機も捨てずに生かす選択肢はある」

低線量放射線、体にいい
 ──東電の責任をどう考えますか。

 「東電をつぶせと言う意見があるが、株主の資産が減ってしまう。金融市場や株式市場に大混乱をもたらすような乱暴な議論があるのは残念だ。原子力損害賠償法には『損害が異常に巨大な天災地変によって生じたときはこの限りではない』という免責条項もある。今回の災害があたらないとすると、一体何があたるのか。全部免責しろとは言わないが、具体的な負担を考えて欲しい」

 「低線量放射線は『むしろ健康にいい』と主張する研究者もいる。説得力があると思う。私の同僚も低線量の放射線治療で病気が治った。過剰反応になっているのでは。むしろ低線量は体にいい、ということすら世の中では言えない。これだけでも申し上げたくて取材に応じた」

◇1935年生まれ。元東京電力副社長。98年参院選比例区日本経団連が支援する「財界候補」として当選、2010年まで2期務めた。現在は東電顧問。

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安全神話」もとから「おとぎ話」衆院議員 河野太郎氏(2011年5月5日 朝日新聞 朝刊4面)

核廃棄物 捨て場所ない

 ──自民党で数少ない「脱原発」論者です。

 「最大の疑問点は使用済み核燃料など高レベル放射性廃棄物、いわゆる『核のゴミ』を捨てる場所が日本にはないのに、原発を増やそうとしたことだ」

 ──3・11で原発安全神話が崩れました。

 「もともと、おとぎ話の世界だ。土木学会原子力土木委員会津波評価部会のメンバーの多くは、電力会社で占められていた。お手盛り津波対策をつくりながら、今さら『想定外でした』というのは通らない」

 ──「神話」はどう作られたのでしょうか。

 「中心は自民党経済産業省、電力会社だ。自民党は電力会社から金をもらい、立地自治体かに補助金を出しやすい制度を整えてきた。経産省は電力会社に出させて公益法人を作り天下っている。東芝や日立などメーカーに加え、建設業界など産業界も原発建設を後押しした。電力会社は大学に研究費を出し、都合の良いことしかいわない御用学者を作り出す。多額の広告代をもらうマスコミは批判が緩み、巨悪と添い寝してきた。政・官・産・学・メディアの五角形が『安全神話』をつくった」

利権で行政をゆがめた

 ──自民党内で東電と原発を守る動きがあります。

 「甘利明氏の会議がそうだ。推進派がズラリと並び、引退した加納時男氏まで座る。次の選挙でそういう議員を落とすしかない。国民の目が必要だ。3月11日で隠してきたうみが全部出た。自民党がやるべきことは謝罪だ。利権で原子力行政をゆがめたのだから。政府には原子力政策を促進した中曽根康弘元首相に近い与謝野馨氏がいる。与謝野氏の発言は、明らかに東電を守ろうとしている」

 ──世論調査では半数が「原発現状維持」です。

 「正しい情報が伝わっていないからだ。時間をかけて原子力を止めていけば国民の暮らしへの影響は少ない。原子力は環境にやさしくない。海外では再生可能エネルギーが伸びているが、日本では加納氏らが『原子力の邪魔』とつぶしてきた。経産省が出そうとしない情報をきちっと出せば、世論は変わる」

 ──東電の賠償問題をどう考えますか。

 「賠償金はいずれ電力料金に上乗せされる。国民が負担するのなら東電の存続を前提にしてはダメだ。逆立ちしても鼻血が出ないぐらいまで賠償金を払わせるべきだ」

◇ 1963年生まれ。当選5回。法務副大臣衆院外務委員長を務め、現在は自民党影の内閣」の行政刷新・公務員制度改革担当相。