武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 管首相のエネルギー基本計画の白紙撤回と再検討発言を歓迎する

浜岡原発の原子炉全面停止発言の次に、やはり来るべきものがきた。この国の2030年までのエネルギー政策であるエネルギー基本計画の全面的な見直し発言も、期待通りの良い発言だった。原発依存度を50%以上に持って行くと言う基本計画の構想は、今回の大震災で根底から崩壊したと言っていい。再生可能なエネルギーこそ50%以上にしなければ、未来を開くエネルギー計画とは言えない。国の政治に少しでも期待がかけられるというのは良いことだ。
再生可能な自然エネルギーへの転換こそ、この国の震災復興を牽引する力となる。
Asahi.comに5月10日の菅首相の記者会見全文がアップされていた。首相の会見の全文がこうして紹介されるのはいい。消えてしまう前に全文引用しておこう。

震災から2カ月 菅首相の記者会見全文〈5月10日〉2011年5月10日23時3分

菅直人首相の10日午後の記者会見は次の通り。
【冒頭発言】
「明日で東日本大震災発生から2カ月になる。このGWの間、多くの国民のみなさまがボランティアとして被災地を訪れ、10日間で8万人の方がそうしたボランティア活動をして頂いたとお聞きしている。大変多くのみなさんのそうした活動に心から敬意を表したいと思う。また、私もこの連休中、(福島県双葉町原発で避難されておられるみなさんの避難所にいってきた。多くのみなさんから元の生活に戻りたい、また政府の対応についても厳しい言葉もたくさん頂いた。私も改めて、こうした被災者のみなさんに何としても一日も早く元の生活に戻れるように一層の力を注がなければならない思いを新たにした。また連休中、福島県の産品を売っている東京・八重洲のお店に行ってきた。福島でのお酒やお米や野菜やみそやそういうものを買わせて頂いた。同時にその後、ネットを活用して、そうした被災地で育った野菜やいろいろなものを扱っているみなさんにお集まり頂き、話を聞くことができた。このネットという手段は、ボランティアにはちょっと行けない、あるいはものを送ることはできるけどもほかに何をやっていいかわからない、そういうみなさんにとって、ネットを通して産品を買う、どこに住んでいてもそういう形で協力ができるということで、大変多くのみなさんが利用されていることを改めて知った。また同時に、モノを買うということだけではなくて、被災地のみなさんの声が逆にそうした買って下さるみなさんにも届けられている。そこに本当に人間と人間のつながりが新たに生まれているということを知って、もっともっとこうした活用によって応援の輪が広がっていくことを期待しているところだ」
「さて、5月2日に1次補正の予算が全党一致、全員一致で可決頂き成立した。いよいよさらに復旧の活動を強めると同時に復旧から復興への足取りを進めていかなければならない。まずは復興基本法、そしてその体制をつくるうえで内閣法の改正、この二つについて、ぜひ今週中にも内閣として方針を決めて国会に提出をして参りたい。ぜひ与野党それぞれのご意見を聞きながら、成立をするために全力を挙げたいと考えている。浜岡原発については、中部電力が早い段階で私どもの要請を受け入れて頂いた。大変うれしく、ありがたく思っている。浜岡原発の運転停止によって電力の不足が生じるのでは、とのご懸念がある。それについて、海江田経産大臣と検討した。今後を含めて他の電力会社に協力頂き、個々の企業や国民にも協力頂くことによって、電力不足はクリアできる。そのようなご協力をお願いしたい。この要請をしたのは、記者会見の折にも申し上げたが、何といっても、国民の安全・安心を考えてのことだ。同時に、万が一にも、浜岡という地で事故が起きた場合、日本経済に与える影響も極めて甚大だ。そういうこともあわせて考慮した。そういった意味で、関係者にはご苦労をかけるが、しっかり国民の安全・安心のために進めて参りたい」
「また、原子力事故について、原子力事故調査委員会を発足させるための準備を進めている。原子力事故調査委員会を発足するにあたって、三つの基本的な考えが重要だと考えている。一つは、従来の原子力行政からの独立性だ。つまり、そうした過去の関係者ではなく、そういうところから独立した判断ができる方を中心になって頂く。第二には、国民のみなさん、あるいは、国際的にも事実をしっかり公開する公開制だ。第三番目には、包括性が必要だと考えている。技術という分野だけでなく、いろいろな制度やいろいろな組織的な過去のあり方がどのような影響を今回の事故でおよぼしたのか。そういう分野を含めた包括的な検討が必要だ。独立性、公開性、包括性の三つの原則で事故調査委員会を立ち上げる、その準備を進めている」
「同時に、今回の事故による賠償のスキームづくりも進めている。賠償は、いつも申し上げているところだが、一義的には、事業者である東京電力の責任だが、それが適切に賠償が行われるよう政府として責任をもって対応して参りたい。こうした中で、今後のエネルギー政策についていろいろと議論が巻き起こっている。まず、原子力についてはまず何よりも安全性を確保するということが重要だ。原子力化石燃料がこれまで特に電力においては大きな二つの柱として活用されていた。これに加えて、今回の事故を踏まえて、また、地球温暖化の問題をふまえて、あと二つが重要だと考えている。その一つは、太陽、風力、バイオマスといった再生可能なエネルギーを基幹エネルギーの一つに加えること。もう一つは省エネだ。エネルギーをたくさん使う社会のあり方がこのままでいいのか。いろいろな工夫によって、社会のあり方を選択することで、エネルギーを今ほど使わない省エネ社会を造っていく。このことが、もう一つのエネルギー政策の柱になりうると考えている。これまでの原子力については安全性を、化石燃料についてはCO2の削減をしっかり進めていくと同時に、支援エネルギーと省エネをもう二つの柱として、そこに、これまで以上に大きな力を注いでいくべきだ。このような考え方でエネルギー政策全体の見直しの議論を進めていきたい。最後に、今回の原子力事故、直接の原因は地震津波によるものだが、これを防ぎ得なかった責任は、事業主、事業者である東電とともに、原子力政策を国策として進めてきた政府にも大きな責任があると、このように考えている。その責任者として、本当に国民のみなさんに、こうした原子力事故を防ぎ得なかったことを、大変申し訳なくおわびを申し上げたい。そういう責任者の立場を考えて、原子力事故が収束するメドがつくまでの間、総理大臣としての歳費は返上したい。6月から返上することにした。以上、私から、国民のみなさまに、原子力の問題、今後の復興復旧の進め方について申し上げた」

【2次補正予算案】
 ――震災2カ月で1次補正も上がって、これから本格的な復旧が始まる。本日、自公の党首会談で2次の補正を早期提出すべきだとの話が出たが、総理は終盤国会、今の国会に2次補正を提出するのか。いったん仕切って臨時国会を開いて2次補正を出すのか。

 「成立した1次補正は4兆円を超える規模の、かなり大きな補正になっております。そしてこの復旧にあたっていくに必要な財源は、この補正で相当程度というか、まかなうことができる。そういった意味でこれから復興を目指すことに関しては、現在、復興構想会議でどのような考え方で復興を進めていくのか、ご議論をいただいているし、またそれに必要となる財政規模などもこれから検討していく必要があると、このように思っている。そういった意味で、まずは復旧に現在かかっている作業を積極的に推し進めるということが第一であり、今どの時期に、その復興をめざす第2次補正を提出するべきなのか、現在のところまだ白紙の状態だ」

原発政策】
 ――原発政策について。総理は停止を要請した浜岡原発について、特別なケースといっているが、地震の発生確率の危険度が低かった福島でも今回のようなことが起きている。周囲の活断層がある原発について、本当に大丈夫なのかという国民に不安もあると思う。今後、安全基準を含めた原子力政策を見直していくなかで、他の原発についても停止や見送りもあるのか。先ほど言われた自然エネルギーも一つだということだが、将来的には原発の依存を減らしていくと考えていいのか。

 「まず、他の原子力発電所について。今回、浜岡についての停止を要請したのは、文科省に設けられた地震調査研究推進本部の評価の中で、30年以内にマグニチュード8程度の大きな地震が起きる可能性が、87%ときわめて高いという指摘がなされている。そういうことを理由として停止の要請をした。他の原発についても、もちろん、いろいろな可能性はあるが、少なくとも、そうした地震の研究所の展望では浜岡のような逼迫(ひっぱく)した状況とは報告されていない。もう1点、今後のエネルギーのあり方について、原子力をどのように続けるかという質問だが、現在のエネルギー基本計画では、2030年において総電力に占める割合として原子力が50%以上、再生可能エネルギーは20%を目指すとなっている。しかし、今回の大きな事故が起きたことによって、この従来決まっているエネルギー基本計画はいったん白紙に戻して議論する必要があるだろうとこのように考えている。そういう中で、原子力については一層の安全性を確保する。そして、もう一方、自然エネルギー、再生エネルギーについては、より大きな力で推進する。そういう方向性が必要ではないか。そういう方向性を念頭に置きながら、議論を進めていきたい」

東京電力
 ――東京電力の経費節減策について。東電が本日、枝野長官、海江田大臣に代表権をもつ役員の報酬全額削減などのリストラ策を申し入れた。総理として、これで十分であるとお考えになるか、それ以上のものが必要になるか。さきほど総理がおっしゃった、総理の歳費を見直すという、これは国会議員の最低相当額は引き続き受け取るのか、他の閣僚方にも呼びかけるのか。

 「賠償を進める上で、東電として最大限の努力をされると聞いており、その中には資産を売却するとか、より人員構成をぎりぎりにスリム化するとか、そして給与の問題についても削減を行うとか、そういうことがあると認識しており、今回の東電の提案というか申し出は、東電の努力の一環であると受け止めている。それで十分かどうかということは、今後の検証というか、今後の話し合いのなかで考えなければなりませんが、東電としてもそうした姿勢を示していると理解している。それから総理の歳費の返上というのは指摘のように、大臣というのは国会議員の場合だが、国会議員の歳費にいわば上乗せする形で総理の歳費、2重取りはしていないのでそういう形になっているが、私としては、一般の国会議員としての歳費は一般の国会議員の皆さんと同じように、一部は返上しているが、国会議員の歳費は受け取らせて頂きたい。総理の歳費は、月々のものもボーナスも含めて返上させて頂きたい。他の閣僚については、私からは特にまだお話をしていない。この分野で最も責任があるのはいうまでもなく総理大臣だ。ただ同時に、海江田大臣は海江田大臣として、自ら判断されるのではなかろうかと。他の大臣とはこの件は、話していない」

【重要法案】
 ――終盤国会に向けた重要法案の対応について赤字国債を発行する公債特例法案は成立のメドがたってない。この国会を延長してでも必ず成立させるのか、別の選択肢もあるのか。

 「この問題は、3党の間で政調会長が合意をして頂いている。そういう3党の合意も踏まえながら、できるだけ早い時期に何らかの形で前進できればと思っている。ただ、今の段階でどのような形でそれが可能か、これは国対あるいは幹事長を含めていろいろと相談をしているが、現時点ではこの国会でそれが前進するよう最大限の努力をすると、そういうところにある」

原発事故の被災者】
 ――復旧、復興という言葉が出たが、原発の被災者は災害進行中で、復旧、復興には入れない。生活の場も抱えている。仮設に入っても生活費は自分で払わないとならない。補償するというがいつになるかわからない。そういうことをみなさん訴えている。そういう人に生活支援を支えていく方法はすぐに決められないのか。

 「私も先ほど申し上げたように、原発事故で避難されている方がかなり大勢おられた埼玉県の加須に行ってきた。非常に埼玉県知事あるいは加須市長を含めて、いろいろな努力をして頂いている。高校の跡なので廊下にはハローワークなどからのいろんな雇用の案内などもあった。いろいろお話を聞くと、やはり一番被災者のみなさんの口々から出たのは、もちろん一日も早く戻りたいということはもちろんだが、それがなかなか簡単でないとすれば、どの時期にどうできるのかというメドを示してもらいたいと。そうしないとそういう仕事に新たに就くにしても、あるいは避難所から出て別のいろんな公的な住宅などで希望すれば入れるところがかなり出てきているが、そういうところに移るということになかなか踏ん切りがつかないということも、多くの方に言われた。そういう意味ですでに2カ月になるが、東電が示している工程表などもきちんきちんと進んできて、完全に原発の事故が新たな放射性物質を出さないで低温停止になるというメドがつけば、逆にその後のメドもお示しできるということを私その場でも申し上げてきた。今ご指摘の生活の問題、仕事の問題、政府としても全力をあげてそういうみなさんがきちんと生活ができるように、また次の展望が持てるように最大限の努力はして参りたいと思っている」

福島第一原発
 ――福島原発の事故の収束がどうなるのか、今後日本がどのようなエネルギー政策に転換するのか、国際的にも注目されている。近々のサミットや、首脳会談などの場で、総理は日本が目指すエネルギー政策、脱原発も含めて、福島の事故を今後についてどのように説明するのか。

 「おっしゃるように今月21日には日中韓の3カ国の会合があり、26、27日にはフランスでG8サミットが行われる。また6月に入ると、国際原子力機関IAEA)の閣僚会議も日程が決まっており、それまでにはそれに向けての報告書も提出をしなければならない。そういった中で、今後のエネルギー政策についてどのように考えるかという質問だが、まずは原子力について言えば、徹底的に検証して、より安全な原子力のあり方をしっかりと求めて実行していきたいと、そのことを一つの大きな柱として、国際会議の場でも、申し上げていきたいと思っている。そのためには、日本自身が努力することはもちろんだが、今回の日本の原子力事故のいろいろなデータや内容をしっかりと国際社会にも、これまでもお伝えしているが、さらにしっかりとお伝えをし、そういう国際社会にとっても今後より安全な原子力エネルギーの供給というものが可能となるような、そういうものに貢献できれば幸いだと考えている。これに加えて、先ほど申し上げたように、原子力化石燃料に加えて、欧米の多くの国も風力やあるいは太陽エネルギーに力を注いでいる。我が国はややこの分野で出遅れているところがあるので、そうした分野についても一層、力を入れて参りたい。そういった姿勢を含めて、国際社会にも日本の姿勢をお示しをしたいとこう思っている」

浜岡原発
 ――浜岡原発停止について、発表についてあまりに唐突で、政府が工程なしにしたことに、批判もでているが、経団連の米倉会長は「思考過程がブラックボックスだ」と厳しい批判をしている。なぜそんな急になったのか、改めて総理から説明を。また、中部電力は、それによるコスト増など国の支援を求めているが、全額、国が穴埋めする考えはあるか。

 「浜岡原発については従来、活断層の上にあるという指摘があったわけだが、今回のことが、3月11日の大震災を受けて、そういった震災を受けても大丈夫といわれてきた東電の福島原発が、いわゆる冷却機能が停止してああした事故につながったということが大きく影響したということはいうまでもない。その折から、他の内閣として防災会議なども開かれた中で、いろいろな地域の地震の可能性などを改めて議論した結果、87%という数字を確認しまして、そういう中で、この問題をどう扱うか、いろいろな方に意見を聴いた。そして、海江田経産大臣も様々な方に意見を聴き、私とも最終的には意見交換をし、私たちなりに熟慮を重ねた。こうした要請を行うことが、国民の安全、安心を考慮し、結論に達した。(浜岡原発停止の補償については)これからの相談だと思うが、一般的にいえば国もできるだけ協力するということだが、具体的にどういう形でどういうコストが上がること自体をどういう形でフォローできるのかは、これからの話し合いによるものだと考えている」

事故調査委員会
 ――総理が冒頭に触れた原発事故の調査委員会について。これまで総理は原発事故の検証をしていかねばならないと言っていた。今回の浜岡原発の停止要請はその検証に先だって出された。原発事故の調査委員会は、福島原発の事故原因を究明するところにとどまるのか、あるいは原因究明の結果によっては新たな停止要請に踏み込むこともあるのか。

 「先ほど言ったように、今回設置を調整している調査委員会では独立性、公開性、包括性という形で先ほど申し上げた。そのなかには技術的な問題だけでなくて、制度的な問題などについても今回の事故の背景として関連することについてはしっかりと調査をして頂きたいと思っている。それを踏まえてどうするかということは、一応これは調査委員会の報告が出たなかでそれを踏まえての議論は必要になるかと思う。調査委員会そのものが他のことまで何か結論なり方向性を出すことは、いま私の想定しているなかではそこまでではないのではないか。まずは今回の東電福島原発の事故、そしてそれに至る背景というところを徹底的に調査を頂くことにとどまると考えている」