武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

2008-01-01から1年間の記事一覧

 『栄養学の歴史』 島薗順雄著 (発行朝倉書店1989/5/25)

時折、ピンチヒッターとして台所に立つ男にとっては、グルメを志向する豪華レシピか、簡単を旨とするインスタント食品か、どちらにしても長期的展望とは縁がないわけだから、空腹を満たすか、招待客をうならせるか、栄養のバランスなど気にする方が野暮とい…

 今年のミステリー小説ベスト10

朝日新聞の今日の文化欄に、「ミステリー小説 主なベスト10」と題する記事が載っていた。代表的な4つのベスト10の特徴を紹介しながら、ジャンルとしてのミステリーの売れ行き不振傾向と、作家と作品の多様化を最近の特徴として締めくくる内容だった。 ネッ…

 『三浦家の元気な食卓』 三浦敬三、三浦雄一郎、三浦豪太著 (発行昭文社2005/1)

100歳の現役スキーヤー、故三浦敬三さんの本を紹介して、もう少し敬三さんの食事について知りたくなり、図書館でこの本を見つけた。きれいなグラビア満載のビジュアルな料理本の一種だが、三浦家二世代の食事が紹介されていて楽しく読めた。とりわけ、100歳…

 日溜まりに満開の山茶花

武蔵野の野に花が少なくなるこの時期、サザンカだけがいつも元気に花をつけるので、寒さに強い品種なんだと思いこんでいたが、やはり日光と暖かさが好みと見えて、ある農家の庭の片隅で、たっぷりと日差しを浴びて、絢爛と咲き誇っているのを見つけた。日陰…

 武蔵野の雑木林の冬景色

仲間と一緒にやっている雑木林のゴミ拾いボランティアに行って来た。古い大型のテレビやバッテリー、引っ越しで発生したらしい衣類混ざりの家庭ゴミ(子どもの服を含む)など、たった2時間ばかりの作業でも、軽トラックの荷台が溢れんばかり、人目がなけれ…

 『100歳、元気の秘密』 三浦敬三著 (発行祥伝社黄金文庫2004/2/20)

つい5年ほど前には、三浦敬三さんが我が家のヒーローだった。NHKの人間ドキュメントと言う番組で、 「99歳の現役スキーヤー・モンブラン氷河に挑戦」を見て吃驚したのがはじまり。99歳まで元気に生きておられると言うだけでなく、現役スキーヤーとして海外…

 『石田徹也―僕たちの自画像―展』インプレッション

穏やかな冬晴れの日和になったので、練馬区立美術館で開催されている石田徹也展に行って来た。2005年に不慮の事故に見舞われ31歳の若さでこの世を去った石田徹也は、数奇な運命にもてあそばれた画家の一人に入るだろう。生前は、いくつかのコンテストで入賞…

 『官能小説用語表現辞典』 永田守弘編 (発行ちくま文庫2006/10/10)

新刊書店をぶらついていて、いつの間にか<官能小説>と呼ばれるコーナーが空間を確保し、だんだん領地を拡大していることが気になっていた。以前に<エロマンガ評論>について書いたとき、<エロの壁>について触れたが、ビデオショップでは、暖簾で仕切ら…

 『百人一首』 大岡信著 (発行講談社文庫1980/11/15)

今と比べると極度に娯楽が少なかった昔の子ども時代、12月になると近所の悪ガキが誘い合って誰かの家に集まり、いつの間にか百人一首で遊んでいた。北国の冬は、12月ともなると曇りや雨霙の日が多くなり、気温が下がると雪が降り出す、そんな時、屋内の遊び…

 新刊本に距離を置いた1年だった(反省)

12月も上旬を過ぎると、いろいろなメディアでその年1年の回顧記事が出始める。一つの区切りとして、そんな記事を楽しみにしている。今週に入って、読売と朝日が文学作品の回顧記事を載せた。記事の中に、時評を担当した方が選んだ今年のベスト3があり、眼…

『栄養学と私の半生記』香川綾著(発行女子栄養大学出版部1985/5)

今は亡き香川綾さんのことを「栄養学の母」と呼ぶ人がいるが、適切な言い方だという気がする。日本人の食生活に香川綾さんほど真剣に学問的に取り組んだ人はほかにいないのではないか。 多くの料理教室や家庭で、何気なく使われている計量カップや計量スプー…

「桑田佳祐Act Against AIDS 2008『昭和八十三年度ひとり紅白歌合戦』」(WOWOW12/2/19:00-22:30)

昨晩、桑田佳祐のソロコンサートAAA2008『昭和八十三年度ひとり紅白歌合戦』をWOWOWで見た。3時間を超える何とも長いライブ番組だったので、合間に食事を挟んだり煎餅をかじったりして時々気を散らしながら、最後までつきあった。歌う方も大変だろうが、バ…

 『中国の植物学者の娘たち』 監督/脚本:ダイ・シージエ (2005年カナダ/フランス映画)

90年代の中国を舞台に、若い女性二人の同性愛を主題にした耽美的な悲劇の恋愛ドラマ、背後に流れる音楽と、ドラマの舞台となる湖に浮かぶ孤島の蒸せるような南国的な美しさに、思わず画面に引き込まれてしまった。映像と音楽と見終わった後の悲哀に満ちた…

 武蔵野に初霜、亜熱帯性の野菜や哀れ

何日か確認は出来なかったが先週のある日、冷え込みがきつかった早朝、仲間と一緒に借りている菜園一帯に初霜が降りたという話を農家から聞いた。暦では10月24日が霜降、11月7日が立冬となっているから、季節的には何の不思議もないことだが、趣味的…

 『別冊太陽 発禁本3部作』 構成・米沢嘉博/文・城市郎、米沢嘉博 (発行平凡社1999/7/1〜2002/2/10)

この国の出版文化について調べていて、明治以降の出版史の背後に、国家権力との出版の自由をめぐる長い軋轢の歴史があることが気になっていた。また、マンガの戦後史を調べていて、米沢嘉博というマンガ研究者の重要性を再確認した。この二つのテーマが、米…

 岩崎一彰・宇宙美術館インプレッション

伊豆高原の一角にある岩崎一彰さんの宇宙美術館へ行って来た。申し訳ないことだが、岩崎一彰さんのお名前は私の記憶にとどまっていなかった。展示をみて吃驚、受付の方に「きっと懐かしい世界ですよ」と言われた訳がすぐに分かった。かつて何度も眺めて宇宙…

 『満ちゆく生命−遠藤彰子の世界展』インプレッション

ネットや本の画像で見かけてその絢爛たる幻想世界に魅せられ、大作主義の画家だと言うことが分かり、かねてより原画を拝見したいと願ってきたが、気がついたときには運悪く展覧会が終わっていたりあまりにも遠距離だったりして、なかなかお目にかかれなかっ…

 堀田善衛展(神奈川近代文学館)

横浜の<港の見える丘公園>の一角にある神奈川近代文学館で開催されている、今は亡き戦後作家堀田善衛展に行って来た。類い希な散文表現の名手だった堀田善衛の世界は、彼の作品の中にその全てが表現し尽くされていると思っているので、どのような展示を見…

 武蔵野の雑木林、晩秋の風景

仲間と一緒に雑木林の不法投棄されたゴミ拾いに行って来た。月に1回のゴミ拾いだが、いつの間にか雑木林の道ばたにいろんなゴミが捨ててある。多いのは飲み物の空き缶や空き瓶ペットボトルなどだが、中には使わなくなった電気製品や引っ越しの時にでたと思…

 『別冊宝島1500号 長くて曲がりくねった道』(発行宝島社2008/3/7)

76年に1号を出してから32年間に1500号を発行したのだそうだ。70年代には、マガジンとブックに間の位置するムックという出版形態自体が珍しくて新鮮だったことを覚えている。雑誌の特集にしては内容が充実しすぎているのに、なぜか書籍の形になる…

 「壱零base」さんのハンマードダルシマー演奏を耳にして

今日の夕方、図書館へ行った帰り、航空公園を歩いていて、耳慣れない音楽が聞こえてきたので気になり、桜の木の下で演奏していた人に声をかけてみた。そこで教わったのがこの「ハンマードダルシマー」という楽器名、スタンドの上に斜めにおいてある。10c…

 唐辛子の辛さの単位<スコヴィル値>とハバネロ

日頃からの辛さ好みが高じて、今年は仲間と借りている武蔵野の畑の片隅に、島唐辛子とハバネロの苗を植えて育ててきた。このところ木枯らし1号が吹いたりして晩秋の色が濃くなり、激辛唐辛子達の実が赤く熟して、この1ヶ月ばかり週末がくるたびに少しずつ…

 『子どもの昭和史・少年マンガの世界Ⅰ・Ⅱ 』 構成米沢嘉博 (発行平凡社1996/3/23〜12/29)

別冊太陽の<少女マンガの世界>が楽しかったので、この<少年マンガの世界>も併せて紹介することにしよう。こちらも全面的に米沢嘉博さんが協力してできたものらしく、至る所に米沢さんのセンスと言うかマンガ観が色濃く反映しており、そのことがこの二冊…

『エロマンガ・スタディーズ「快楽装置」としての漫画入門』 永山薫著(発行イースト・プレス2006/11/3)

非難や攻撃の対象にはなっても正面から評論の対象として取り上げられることの少なかった不幸な表現世界、エロマンガを本格的に論じたマンガ論、この国のマンガ文化の一端をしめるこのジャンルの蓄積は、すでに膨大な量となり、質的にも高度な水準の表現世界…

 『4分間のピアニスト』 クリス・クラウス監督 (モニカ・ブライプトロイ、ハンナー・ヘルツシュプルング主演、スヴェン・ピッピッヒ助演) 2006年ドイツ映画

最近見た映画の中で、久しぶりにお話の展開に引き込まれて、最後まで時間の経過を忘れて見入ってしまった映画があるので、紹介したい。 お話の柱になっているのは、80歳をこえる老ピアノ教師と、殺人の罪で収容されているピアノの才能を秘めた手が付けられな…

 『子どもの昭和史少女マンガの世界Ⅰ・Ⅱ 』 構成米沢嘉博 (発行平凡社1991/7/20〜10/17)

視覚的効果を最もうまく生かした本に平凡社の「別冊太陽」がある。単行本にすると重苦しい感じになりかねない造本とテーマを、ソフトカバーの雑誌形態でかわして、独自の出版形態を発達させた似たような企画に「別冊宝島」があるが、いずれもこれまで随分と…

『本棚が見たい!シリーズ』 川本武、津藤文生、大橋弘本、野辺 律子編著 (発行ダイヤモンド社1996/06〜1998/02)

知り合いのお宅を訪問した折など、案内された部屋に本棚があると、しばらくそちらの方に視線が吸い寄せられてしまい、しばし話題に集中できなくて困ることがある。その昔、国家による思想弾圧が厳しかったころ、官憲は取り締まり対象者の本棚に目を光らせ、…

 グーグルマップ ・ルート案内・インプレッション

10月29日から、グーグルマップが、また新しいサービスを始めた。歩行による移動ではなく、車による移動を想定して作ったナビゲーション機能、実際に宗谷岬から石垣島までを入力して使ってみたが、可なり厄介な計算のはずなのに、ほぼ瞬時に結果が出たのには…

 『きみがくれたぼくの星空』 ロレンツォ・リカルツィ著 (発行河出書房新社2006/6/30)

この物語はミステリーではないので、ネタバレになってもこれからこの物語を読む人の妨げにならないと信じて、思い切ってストーリーに踏み込むことにする。気になる方は、お読みになってから再度お訪ね願いたい。 これは相当の高齢者小説、最近の言葉で言えば…

『現代漫画博物館』小学館漫画賞事務局・竹内オサム著(発行小学館06/11/20)

この国のマンガ文化史をどのように組み立てるか、長い間マンガに親しんできた者にとっては、これはとても興味のあるテーマ、この本は、そんなテーマに思いきって取り組んだ勇気ある挑戦の一つめ。ジャンル別ではなくマンガの総合的発達史を目指したところが…