武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

読書

 『科学の事典』岩波書店発行/第1版1950/3 第2版1964/7 第2版増補改訂版1980/5 第3版/1985/3

《戦後の復興にかけた科学者たちの夢》 この頃、新刊書を手にする機会がぐっと少なくなり、それに反比例するように古い本を手にすることが多くなった。何となくそのほうが面白く気分が良いからである。読書にも高齢化の兆しが現れてきたということか(笑)。…

 『加藤周一著作集』加藤周一著/平凡社/1978.10〜1980.5

《入手した著作集のこと》 長い間、私は加藤周一の良い読者ではなかった。現在もそうである。ベストセラーになった「羊の歌」と「日本文学史序説」を手にしただけのある程度の距離を置いた通りすがりの読者だった。ところが最近、再び日本文学史序説を拾い読…

 赤城山に関連のある書籍紹介(02)

NHKのドラマ「花燃ゆ」の舞台として群馬県が脚光を浴びているようだが、赤城山のほうは少し寂れている印象をうける。首都圏に近すぎて観光客が通過してしまい、立ち止まって遊んでいってくれないというのが前橋市の悩みのようだ。立ち止まってその魅力を語っ…

 赤城に関連のある書籍紹介(01)

赤城山麓に山荘を入手、第二の老後生活のベースキャンプを築きはじめたのをきっかけに、赤城山にかかわりのある著作や作品をチェックしてみたくなった。5点を一区切りとしてアップしていくつもりだけれど、どこまで続くか分からない。当面は順不同でスタート…

[音楽]『ハイドン ロマンの軌跡 弦楽四重奏が語るその生涯』 井上和雄著/音楽之友社発行/1990/2

ハイドンの解説書を探していて本書を手にした。日本語で読めるハイドン関連の良書になかなか巡り合えなかったので、この本に出会えたことは素直に嬉しい。 著者紹介をみると神戸商船大学経済学教授なっており音楽は専門外、何でも学生の頃からブタコレラ・ク…

 『谷内六郎の作品・新潮文庫の6冊』谷内六郎著/新潮社発行/1981/07〜1982/5

4月がいちばん残酷な月なら、11月はいちばん憂鬱な月ではないか、霜月、雪待月とも言う。日没が早くなり日の出が遅くなり夜が長くなる。気温は下がり木枯らしが吹き、どうしても気分は落ち込み老年期を迎えた者にはこの時期の辛さはチト身にこたえる。そんな…

 退職者の日々、乱読からの転換(2)

乱読からの転換などと気取ってはみたものの、乱読以外の読書法が見つかったわけではなく、単にこれまでのように次から次へと手当たり次第に本が読めなくなったに過ぎないのが実情。読むスピードも遅くなったし、読んでいられる時間も短くなった。当然にも、…

 退職者の日々、乱読からの転換(1)

10歳ごろから始まった我が生涯の悪癖とも言うべき乱読に、勢いの衰えと言うか、明らかな減速傾向がみえてきた。理由と思われる出来事は、書庫の容量の限界による死蔵図書の増加だけではない。加齢が原因と思われる視力の衰えがある。60代に入った頃から…

 退職者の日々、第2段階へ(8)

2月の某日、売主との面会日、交渉にあたって準備したことは、土地と建物についての適正と思われる価格計算書と不動産購入申込書。こちらの方針としては、購入目的と適度の自己紹介により、この人たちなら売っても心配ないことを分かってもらうための自己紹…

 『清く正しい本棚の作り方』(TT)戸田プロダクション著/スタジオ・タック・クリエイション発行/2009・11

増えすぎた蔵書の死蔵を解消すべく、第二の書庫のための空き家を探していた頃、設置する本棚についてもどうしたらしいか手探りしていて本書に遭遇した。図書館から借りて一読、まれにみるハウツー本の良書なので、直ぐにネットでさがし購入したもの。 あらゆ…

 退職者の日々、第2段階へ(7)

不動産(なかでも土地)という商品のもう一つの特殊性は、同じものが二つとなく、売りたいという人が現れなければ、商品自体が存在し得ないという条件があること。有り得ないことだが仮に、すべての不動産所有者が売る気がなくなったとしたら、不動産の売買…

 退職者の日々、第2段階へ(6)

不動産の現地見学も件数が多くなると、自分が手に入れたい物件の概要が次第に固まってくるようだ。探し始めて100日が経過する頃あたりだったろうか。 現住所になっている自宅は手放すつもりはなかった。40年近く暮らして子育てをしたので、子供たちにとって…

 退職者の日々、第2段階へ(5)

それでは別荘でも競売物件でもない普通の民家の中古物件はどうだろうか。これは千差万別、そのままではとても住めない古いものや、管理状態が悪いのに信じられないほど高値のものまで、なかなか購買意欲をそそられる空き家に出会えない日々が続いた。 気が付…

 退職者の日々、第2段階へ(4)

ある不動産鑑定会社のサイトを眺めていたら、不動産取引の長くて複雑な過程を評して、取引が完了するまでが「一連の物語」になると書かれていて、なるほどと思った。 例えばデジカメの購入を想定すると、性能と品種を下調べして、カメラ店へ行き商品の現物に…

 退職者の日々、第2段階へ(3)

リゾートマンションをチェックしていた頃、レンタルのトランクルームやレンタルスペースなども一応検討してみた。でも、いずれも安価で手ごろではあるが、収納した本が死蔵になってしまうのは眼に見えているので、検討しただけでそれらは断念した。 それでは…

 退職者の日々、第2段階へ(2)

<書物の死蔵>という言葉が浮かんできた。背表紙が見えるように本棚に立てて置けなくなって、横積みになったり、それが何段にも積み重なって、どこに何があるか分からなくなったりして、探している本にアクセスできなくなったら、その状態が死蔵である。蔵…

 退職者の日々、第2段階へ(1)

昨年の秋頃、とうとう住まいの書庫という書庫が満杯になってしまった。身辺を見回してみると本だけではない。二十代半ばからの子育て年代の遺物から、長年の現役時代の遺物まで、愛着があって捨て切れなかった品々に囲まれて、老年期の現在が押しつぶされそ…

『庭づくりのプロに学ぶ/はじめての庭木手入れ・剪定のコツ』日本造園組合連合会著(家の光協会2008/1)

良い啓蒙書を読んでいると、読んでいるだけで自分が何だかその分野に通じてきて自然に素人でなくなったような錯覚をおぼえてしまう。実際にやってみると、甘くはないということを悟らされる羽目になるのだが・・・。集合住宅に暮らしている関係で輪番の役員…

 電子書籍 事始め(3)

《電子書籍専用端末としてのキンドル》 電子書籍のシリーズを始めてはみたが、なかなか更新がすすまない。暮れに買ったキンドルの端末を使ってみているが、期待していた程にワクワクしないせいに違いない。 あまり本を読まない知り合いに、キンドルの話をし…

 電子書籍 事始め(2)

《CD-ROMに詰め込まれた情報》 電子辞書の次に思いつく 電子書籍のようなもの は、新潮社のCD-ROMシリーズ(1995/12) だ。CD-ROMに大量の書籍情報を収録して商品化したものが、Wndows95でPC市場が急拡大するのに合わせて、90年台の後半頃に次々と登場してきた…

 電子書籍 事始め(1)

暮れに、予約しておいたキンドル(ペーパーホワイト)が届いたので、電子書籍が自分の読書生活にどのように入り込んできているか、極私的なレベルで少し考えを整理しておこうという気になった。 まず、どこまでを電子書籍とするかという問題、Wikipediaの定…

 柴田天馬訳の聊斎志異について(4)

機会がなくてなかなか入手すること かなわなかった創元社の柴田天馬著『聊斎志異研究』をようやく手にすることができた。古書として可成りの価格がついているので、その内容を少し詳しく紹介しておきたい。 まず印象的なのは、12ページにわたる「聊斎志異全…

 柴田天馬訳の聊斎志異について(3)

興味のある人について調べていると、どうしてもその人の肖像が見たくてたまらなくなる。柴田天馬さんは、どんな顔つきの人だったのか。服装や、声の調子まで気になってくる。大佛次郎氏の随筆によると、「やせた瀟洒とした好紳士であった。身だしなみよい地…

 柴田天馬訳の聊斎志異について(2)

1945年8月、長かった15年戦争(1931〜1945)が終わり、焼け跡にやっと平和が訪れた。中国との戦争を、日中戦争<8年間の戦争>(1937〜1945)と捉える考え方もあるが、そうなると、第一書房版完訳聊斎志異第1巻が33年に発禁処分になった背景がぼやけてしまい…

 柴田天馬訳の聊斎志異について(1)

今年の5月に出たちくま学芸文庫の1冊、柴田天馬訳の「和訳聊斎志異」を読んでいたら、聊斎志異を初めて手にした中学生の頃を思い出して、好奇心が目覚めた。南條竹則氏によるこの文庫の解説には、大変に力がこもっており、「ちくま」6月号の東雅夫氏の推薦文…

 『<老い>をめぐる9つの誤解』ダグラス・H・パウエル/久保儀明・樽崎靖人訳(青土社2001/10)

《老年期を快適に生きるための最良の処方書》 自分が高齢者の一人であることを素直に自覚し、老年期を生きる自分を頼みとし誇り高く快適に生きるための励ましを得るために、数年に一度は読み返すことにしているバイブルのような本が何冊かある。 この本はそ…

 『杉山平一全詩集上下』 (編集工房ノア1997/2)

かつての四季派から誕生した畢生の抒情詩人 杉山平一氏が、5月下旬に亡くなられた。現代における叙情詩のあり方を、飽くなき執念で追求され、最後にはライト・バース(深刻な内容をあえて小粋なスタイルで表現した作品群)とでも呼ぶしかないような、軽妙な…

戦前の名翻訳者/佐々木直次郎の仕事(05)

《ポオ以外の直次郎の翻訳》 直次郎のポオ訳が気に入ってこれまで書き継いできたけれど、直次郎の仕事には、ポオ以外の翻訳作品が少なからずある。それらは、どのような仕事だったのか、気になったので探してみた。活躍した期間が1931年から亡くなる43年まで…

戦前の名翻訳者/佐々木直次郎の仕事(04)

ここまで書いてくると、どうしても直次郎さんご本人の肖像を見てみたくなってくる。どんな顔つきの人だったのか、勝手にイメージが膨らんでいってしまいかねない。ところが探せば見つかるもの、以前にも引用した宮永孝氏の『ポーと日本その受容の歴史』のグ…

戦前の名翻訳者/佐々木直次郎の仕事(03)

その後の調べで、佐々木直次郎が第一書房から、豪華版の『エドガア・アラン・ポオ小説全集』を出すに至った経緯が少し分かってきた。第一出版の社主長谷川巳乃吉氏の文章が見つかり、事の成り行きを記す手がかりが掴めたのである。『第一書房長谷川巳之吉』(…