武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

老年期

 退職者の日々、乱読からの転換(2)

乱読からの転換などと気取ってはみたものの、乱読以外の読書法が見つかったわけではなく、単にこれまでのように次から次へと手当たり次第に本が読めなくなったに過ぎないのが実情。読むスピードも遅くなったし、読んでいられる時間も短くなった。当然にも、…

 退職者の日々、乱読からの転換(1)

10歳ごろから始まった我が生涯の悪癖とも言うべき乱読に、勢いの衰えと言うか、明らかな減速傾向がみえてきた。理由と思われる出来事は、書庫の容量の限界による死蔵図書の増加だけではない。加齢が原因と思われる視力の衰えがある。60代に入った頃から…

 退職者の日々、第2段階へ(8)

2月の某日、売主との面会日、交渉にあたって準備したことは、土地と建物についての適正と思われる価格計算書と不動産購入申込書。こちらの方針としては、購入目的と適度の自己紹介により、この人たちなら売っても心配ないことを分かってもらうための自己紹…

 退職者の日々、第2段階へ(7)

不動産(なかでも土地)という商品のもう一つの特殊性は、同じものが二つとなく、売りたいという人が現れなければ、商品自体が存在し得ないという条件があること。有り得ないことだが仮に、すべての不動産所有者が売る気がなくなったとしたら、不動産の売買…

 退職者の日々、第2段階へ(6)

不動産の現地見学も件数が多くなると、自分が手に入れたい物件の概要が次第に固まってくるようだ。探し始めて100日が経過する頃あたりだったろうか。 現住所になっている自宅は手放すつもりはなかった。40年近く暮らして子育てをしたので、子供たちにとって…

 退職者の日々、第2段階へ(5)

それでは別荘でも競売物件でもない普通の民家の中古物件はどうだろうか。これは千差万別、そのままではとても住めない古いものや、管理状態が悪いのに信じられないほど高値のものまで、なかなか購買意欲をそそられる空き家に出会えない日々が続いた。 気が付…

 退職者の日々、第2段階へ(4)

ある不動産鑑定会社のサイトを眺めていたら、不動産取引の長くて複雑な過程を評して、取引が完了するまでが「一連の物語」になると書かれていて、なるほどと思った。 例えばデジカメの購入を想定すると、性能と品種を下調べして、カメラ店へ行き商品の現物に…

 退職者の日々、第2段階へ(3)

リゾートマンションをチェックしていた頃、レンタルのトランクルームやレンタルスペースなども一応検討してみた。でも、いずれも安価で手ごろではあるが、収納した本が死蔵になってしまうのは眼に見えているので、検討しただけでそれらは断念した。 それでは…

 退職者の日々、第2段階へ(2)

<書物の死蔵>という言葉が浮かんできた。背表紙が見えるように本棚に立てて置けなくなって、横積みになったり、それが何段にも積み重なって、どこに何があるか分からなくなったりして、探している本にアクセスできなくなったら、その状態が死蔵である。蔵…

 退職者の日々、第2段階へ(1)

昨年の秋頃、とうとう住まいの書庫という書庫が満杯になってしまった。身辺を見回してみると本だけではない。二十代半ばからの子育て年代の遺物から、長年の現役時代の遺物まで、愛着があって捨て切れなかった品々に囲まれて、老年期の現在が押しつぶされそ…

 『<老い>をめぐる9つの誤解』ダグラス・H・パウエル/久保儀明・樽崎靖人訳(青土社2001/10)

《老年期を快適に生きるための最良の処方書》 自分が高齢者の一人であることを素直に自覚し、老年期を生きる自分を頼みとし誇り高く快適に生きるための励ましを得るために、数年に一度は読み返すことにしているバイブルのような本が何冊かある。 この本はそ…

 初めて「おじいちゃん」と呼ばれたショック

つまらないことなので忘れてしまおうかと思っていたのだが、 繰り返し思い出してしまうので、 記念すべきことかもしれないと思い、 書き記しておくことにした。 27日の夕方、時間が空いたので、古書店へ読みたい本を探しにでかけた。 店内は空いており、 売…

 『老いを光らせるために』 松永伍一著 (発行大和書房1996/5/30)

ある調べ物をしていて、松永伍一さんが昨年の春に亡くなられていたことを知り、ショックだった。かつて「日本農民詩史」という類い希な力作を手にして、その粘り強い取材と、執拗な構成力に圧倒されたことを思い出した。再び読む機会はないかもしれないと思…

 『100歳、元気の秘密』 三浦敬三著 (発行祥伝社黄金文庫2004/2/20)

つい5年ほど前には、三浦敬三さんが我が家のヒーローだった。NHKの人間ドキュメントと言う番組で、 「99歳の現役スキーヤー・モンブラン氷河に挑戦」を見て吃驚したのがはじまり。99歳まで元気に生きておられると言うだけでなく、現役スキーヤーとして海外…

 『きみがくれたぼくの星空』 ロレンツォ・リカルツィ著 (発行河出書房新社2006/6/30)

この物語はミステリーではないので、ネタバレになってもこれからこの物語を読む人の妨げにならないと信じて、思い切ってストーリーに踏み込むことにする。気になる方は、お読みになってから再度お訪ね願いたい。 これは相当の高齢者小説、最近の言葉で言えば…

 『黄落(こうらく)』佐江衆一著(発行新潮社)

この小説は95年頃のベストセラー、NHKのテレビドラマとなり、それをもとにした映画も上映されたりしたので、内容を御承知の方も多いと思うけれど、bookoffの105円コーナーで見つけて読んでみたところ、読み手を引き付けて離さない素晴らしく魅力ある読み物、…

 『蕨野行』村田喜代子著(発行文春文庫)

鳥獣戯画の筆致で書かれた、人間喜劇を見ているよう。悲惨極まりない棄老伝説を題材にした物語ではあるが、読後感は持ち重りのするズシンとした手ごたえだが奇妙にほの明るく透き通った印象。映画や演劇の原作として、複数のメディアから歓迎された作品、分…

 『嫌老社会−老いを拒絶する時代』長沼行太郎著(ソフトバンク新書)

老人問題関連の書物を読み飽きて、しばらく遠ざかっていたが、たまたま気軽に手に取った1冊が面白かったので、取り上げてみることした。短時間で読める薄い新書ながら、内容が充実していて、興味を引く問題提起があり参考になった。 今年度から、団塊の世代…

 『プログラムとしての老い』日高敏隆著(発行講談社)

「動物行動学の第一人者が解き明かす「老い」の正体」という帯のキャッチフレーズにひかれて、この本を手にした。軽くすいすい読めて面白かった。何度かナルホドと感心させられたり納得させられるところがあり読んでよかったと思った。内容は、老いの解明と…

 ルービンシュタインのベートーベン・ピアノ協奏曲第五番<皇帝>の演奏に触発されて

何よりも奏者88歳時のピアノ演奏がきわめて素晴しい。RCAから出ているCDを何度聴きなおしたか数え切れない。威風堂々がっしりと聳え立つような絢爛たる音の構築物、文句のつけようがない感動的な名演奏。 このCDのことを敬愛する音楽評論家、宇野功芳さんは…

 高齢化社会と介護問題を著者の最近の関心事を基に縦横に語った問題提起の書、鋭い指摘が随所に光り考えさせられる

良い書き手は引用が上手い。引用が下手でピントがずれているような物書きにろくな人はいない。上野千鶴子は、セクシーギャルズ以来つとめて読んできたが、引用が抜群に上手い人だといつも感心してきた。今回はどんな引用の冴えを見せてくれるか、それが彼女…

 健やかに生きて安らかに逝くために「自分で選ぶ終末期医療」リヴィング・ウィルのすすめ大野竜三(朝日選書)

幸いなことに現時点では私は病人ではない。人並みには健康なつもりでいる。フルタイムで働いているので職場では定期健康診断があるが、考えがあって20年ほど受診していない。胸部エックス線撮影だけは義務制なのでを受けている。QOLを維持できている時間が…