武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

死生観

 『死とどう向き合うか』アルフォンソ・デーケン著(NHKライブラリー)

本書の表紙のコピーに「生と死を深く見つめてデーケン「死生学」の集大成」とあるが、全くそのものずばり、死を対象とする学問的な話題から医学的なアプローチを除いたほぼ総てが、簡潔に分かりやすく書かれていて「死生学」入門書としてこれ以上ないと思わ…

 『よりよく生きるための教訓』松本信愛

悲嘆ケアについて調べていて、英知大学教授の松本信愛さんのサイトにたどり着いた。その中に、ほぼその通りだと思われる教訓集が掲載されていたので、そっくり引用する。長い人生を経てくると、突然の別離や不条理としか言いようがない不幸に見舞われること…

『楢山節考』深沢七郎著(新潮文庫)

この小説をはじめて読んだ時、物語のどこを探しても作者の視点と言うか、作者の物の見方を代表している登場人物が見当たらないことに、戸惑ったことを覚えている。若い頃は作者の自己主張の強いものを好んで読んでいて、作者の分身のような視点人物が不在の…

 ボーヴォワールによってまとめられたサルトル晩年10年間の記録 ゆっくりと老い死に行く20世紀を代表する知性の最後の10年間の姿が静に暖かく甦ってくる

この本は、2部に分かれている。前半は、ボーヴォワールによって回想されたサルトルが死ぬまでの11年間の回想記、70年から80年まで。後半は、74年の夏に収録されたボーヴォワールによるサルトルへの長いインタヴューの記録。 まず前半の生涯の伴侶ボ…

『死にゆく人の17の権利』デヴィッド・ケスラー著/椎野淳訳(発行集英社) 現代における人の死についてやさしく毅然とした人間的な立脚点を確立した書、人間性回復の書。イデオロギーや宗教の傾向的色彩を帯びていないので安心して死について考えることが出来る死者の人権宣言。

この本の「はじめに」の断り書きの中で著者は、この本が書かれた理由を説明している。そこを読むと人の死が時代の刻印を穿たれるということがわかる。現代という時代が、人の人生から死を疎外する時代だということ、本書が書かれた理由もそこにあるというこ…

 『クレーの絵本』パウル・クレー+谷川俊太郎(講談社)

素晴らしい絵本にして画集、そして詩集でもある。 この本を手にした回数は、数え切れない。私の蔵書の中で最も多く眺めた一冊。薄い本なので何ページかなと思ってページを見ようとしたら何とページがない。代わりにクレーの絵の表題の一部に紛れ込んで絵の番…

 健やかに生きて安らかに逝くために「自分で選ぶ終末期医療」リヴィング・ウィルのすすめ大野竜三(朝日選書)

幸いなことに現時点では私は病人ではない。人並みには健康なつもりでいる。フルタイムで働いているので職場では定期健康診断があるが、考えがあって20年ほど受診していない。胸部エックス線撮影だけは義務制なのでを受けている。QOLを維持できている時間が…