武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

2005-10-01から1ヶ月間の記事一覧

 動物学的人間像のサブタイトルがついたこの本、1969年11月初版発行となっている。発売当初、大変な評判となり科学的啓蒙書の類としては画期的なベストセラーを記録したように記憶している。人間を改めて動物として捉えなおし、動物学者の視点にたち、多様な角度から種としての人間のありようを見つめなおしたもの。

著者はまず、人間を動物学的に特徴付けるために、192種の霊長類の中で裸の身体を持っているのは人間しかいないという事実に着目し、第1章の「起源」において、人類の起源と裸であることの進化の上での有利性を解明する。霊長類を他の動物との比較で特徴づけ…

 次に、東京国立博物館の『北斎展』を見に行った。

今月25日に始まったばかりなので、入場者がとても多く行列の動きに挟まれての鑑賞になった。こちらも、案内ページの文章を引用する。 北斎が世界中の人々に愛される理由、そのひとつは、流派や伝統にとらわれない自由な筆で、把握しがたいほど多彩な作品を描…

 『キアロスクーロ ルネサンスとバロックの多色木版画(フリッツ・ルフト・コレクションの所蔵作品による)』

最初に、国立西洋美術館で木版画<キアロスクーロ>を見た。<キアロスクーロ>なる木版画がどういうものかパンフレットから引用する。 ルネサンス美術たけなわの16世紀はじめ、版画の表現法が大きく広がった時期に、ドイツで新たな木版画の技法が発明されま…

 何事も調べてみることが大好き、わからないまましておくのが生理的に嫌いなために、これまで多種多様な事典や辞書のお世話になってきた。書棚の一角が全部百科事典や各種の事典、辞書の類にずっと占領されてきていたが、ここ何年か前から、辞典類の書棚に変化が起きはじめた。

小型の電子辞書が飛躍的に便利になったために、英語や国語など、言葉の意味を扱う辞書の類が、そっくりいらなくなった。長年お世話になってきただけに処分するに忍びなかったが、細かい字がつらいこともあって、とうとうお引取り願うこととなった。小型電子…

 朝から快晴、早めに用事を済ませて、9時頃から散歩に出た。(写真は農道脇で見つけたカラスウリの実)

近くの公園を回り軽くウォーミングアップ、住宅街わきの小さな果樹園をまず訪問、いろんな種類の実のなる樹木をうえていて木の間には花も多いが、この時期、咲いている花は僅か、所有者の伯父さんに挨拶して、先の農道へ進む。 日和がいいので農家の人が作業…

 ジム・ロジャーズ著・林康史+林則行訳(日経ビジネス文庫)

バイクを乗り物に使った旅行記は、自分でもバイクに乗りツーリング好きなので、これまで可なりの数読んできたが、そんな数あるバイク旅行記の中でも、これはベスト5の確実に入る1冊。バイク旅行記の枠を突破して、世界認識あり方の一つを、具体的に提起して…

 ルービンシュタインのベートーベン・ピアノ協奏曲第五番<皇帝>の演奏に触発されて

何よりも奏者88歳時のピアノ演奏がきわめて素晴しい。RCAから出ているCDを何度聴きなおしたか数え切れない。威風堂々がっしりと聳え立つような絢爛たる音の構築物、文句のつけようがない感動的な名演奏。 このCDのことを敬愛する音楽評論家、宇野功芳さんは…

(写真はつい先日近くの遊歩道を歩いていて見つけたハナミズキの実、宝石のように輝いて実に美しい)朝から雨が本降りだったので、散歩通勤はあきらめてバスに乗った。

同じように、自転車通勤している人もバスに切り替えるせいで、本降りの雨の日は、バスがなかなか混み合う。混んでいたせいか、運転手のトークが気になった。おそらくテープを使っていると思うが、女性の声のアナウンスが停車情報を伝えているのに、カーブの…

(写真は、フライバシー情報にブラシでマスキングした私の通勤定期)  生涯で最後の通勤定期を購入して、いささか感慨をもよおしたので一言。もうこれから先、公共の乗り物で通勤する必要がなくなる年齢がきたということをとりあえず喜びたい。

病気や事故より確実にこの日が来ることが分かっていたので、3年ほど前から徐々に意識するようにはなっていた。退職金や年金制度のことが他人事ではなくなり、自分のそうは遠くない時期の生活設計に関わることとして、実際にどうなっているのか調べてみるよう…

(写真は住宅街の舗道脇で見つけたホトトギス、数少ないこの時期の街の彩り、撮影10月16日)

昨夜からの雨が降ったり止んだり、秋の雨が街をぬらし、着実に夏の熱を吸収してゆく。昼前に図書館へ行き、航空公園を散歩した。若者達がフリーマーケットを開いていたのでひやかして歩いた。園内の広葉樹は色がくすみ、紅葉の準備をはじめている。ipodでチ…

  石渡利康・三谷芙沙夫訳編集(二見書房発行)

奥付を見ると昭和47年1月発行となっている。1972年になるので、今から35年以上も昔のことになるがとても有益で過激な児童向けの一冊の図書が話題になった。教育関係者の間では、賛否両論が飛び出し、なかでも親たちの良識を代表する各地のPTAが子ど…

『窯変源氏物語』②③橋本治著(中公文庫)

①がとても新鮮で面白かったので②と③を続けて読んだ。前回書いた橋本訳のユニークな楽しさは変わらないが、続けて読んだせいか、源氏物語そのものが持つ物語としての豊穣、奥深さが感じられた。古典があまり好きではない私に、源氏が面白いなどと言う感想を持…

 「脱・初心者を目指すあなたに」と題されたこの本は、どれを読んでも分かるのを拒んでいるような感じを与えるPC参考書が多かった当時、文字通り<ファイル>というたった1個のキーワードをとことん展開して、Windows95 というやっかいなOSを見事に解説した「眼からウロコ」の1冊だった。奥付を見ると、平成9年6月初版発行とある。Windows95 が発売されてブームとなった1995年から遅れること2年、PCが本格的に大衆化して、分からなくて困っている人が大量に出始めた頃だった。

私も事情があって、人にPCを教える立場に立たされて、今ひとつ、何を教えていいのか確信がもてずに悩んでいた時期だった。マウスとキーボードの使い方でお茶を濁し、本当はもっと別のことを教えなきゃいけないんだけど、難しがられるだろうなあと困り抜いて…

 今日、所沢市民文化センター・ミューズにて小林研一郎指揮の日本フィル演奏会があり、小研(コバケン)さんの盛大に盛り上がる指揮を期待して聴きにいってきた。プログラムはチャイコフスキー、小山実稚恵さんのピアノによるピアノ協奏曲第1番と交響曲第4番。

まず、前半の小山実稚恵さんのピアノが良かった。昨年、スクリャービンのピアノソナタ全集をリリース、話題になった実力派ピアニスト、期待通りメリハリのある立派な演奏、この曲は高らかに鳴り響くオーケストラと体重を鍵盤に叩きつけるような分厚いピアノ…

 『キラーストリート』サザンオールスターズ(ビクター)

久しぶりにサザンの新しいアルバムが出た。さっそく買って聴いてみた。いつもサザンしっとりとした叙情的ロックを楽しく聴いてきたが、今回もたっぷり満足した。 日本語をリズムとメロディーを基調に使うので、あっと驚く新鮮なサウンドと言葉の出会いが楽し…

  小山ゆうのマンガが大好き。「おれは直角」のデビュー作以来、毎回、間違いなく楽しい読書の時間を提供してもらったことに感謝が尽きない。沢山ある小山マンガの中でも、特に気に入っているのがこの「スプリンター」という長編作品、読み出したらいつも14巻の最終回まで連れて行かれてしまう。傑作だとつくづく思う。

ストーリーはいたって単純、結城光と水沢純子という2人の主人公の愛と成長の物語、物語のゴールは最速のスプリンターを目指すと言う話だが、複雑に錯綜する複線のストーリが豊かで楽しい。分類してしまえば、戦後マンガのスポーツ根性物に入れられてしまう…

 (写真は数日前、八ヶ岳高原で写した咲き残りのアザミと蜜集めのハチ)10月に入って秋の気配を運ぶ雨が降る。朝の通勤時間、つかの間の雨上がりの時間帯を利用して、通勤散歩、雨模様なので歩く人影が少ない。朝練の中学生達も姿を見せない。

自宅を出ると公園の脇を抜け、高層マンションの間を通り、小さな商店の間を辿って住宅街に入る。イヌを散歩させている人ともあまりあわない。雨の中をうれしそうに歩くイヌもいるが、雨が嫌いなイヌもいると聞いたことがる。 手入れの行き届いた庭が並ぶスト…

本棚の奥から懐かしい本が出てきた。ネットでざっと検索してみたが、入手するのが難しそうなので簡単に紹介してみたい。

表題の通りこの本は、音楽の記録メディアがレコード全盛だった頃のジャズ名盤案内書。この国のジャズファンは、この頃はほとんどレコード鑑賞を通してその魅力に触れ、ファンに留まったり、マニアに成長したりして、ジャズという音楽の深みに嵌っていったも…

 先日、古書店をぶらぶらしていて100円コーナーで、窯変源氏物語の①から③までを見つけ、もともと気になっていた本なので3冊とも購入した。橋本治さんは、桃尻娘以来、旺盛な創作力ある稀に見る才人としていつも視界に入れてきた作家。ある時からこの国の古典の現代語訳に守備範囲を広げ、見事な活動を展開している様子、気になって仕方がなかったが手に取る機会を逸してきた。

さっそく、窯変源氏物語を文庫で読み始めてみて感心した。橋本治さんの現代語訳は、これまでの沢山ある源氏物語の現代語訳と一線を画す画期的な仕事だということに気が付いた。「一人称で語る光源氏の物語」という宣伝文句だが、確かにその通り。だが、才人…