武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

  石渡利康・三谷芙沙夫訳編集(二見書房発行)

toumeioj32005-10-15

奥付を見ると昭和47年1月発行となっている。1972年になるので、今から35年以上も昔のことになるがとても有益で過激な児童向けの一冊の図書が話題になった。教育関係者の間では、賛否両論が飛び出し、なかでも親たちの良識を代表する各地のPTAが子ども達に読ませたくない図書に指定するなど、この本を問題視する声が世間に巻き起こった。
 もともとは、デンマークで出版された児童向けの「ザ・リトゥル・レッド・スクールブック」の日本語版、フランスやイギリスでも物議をかもしたという触れ込みで、この国でも発売となったもの。
 話題性のある本が好きなので、さっそく買って読んでみた。一読、若干は大胆ではあるが、基本的な考え方と記述されている内容と情報に間違いはなく、子ども達におおいに読まれるに値するいい本だと思った。子ども達が一番知りたいと思う事柄については、とかく、世の大人は曖昧にしか情報を伝えようとしない傾向があるので、寝たふりをして実はとっくに眼ざめてしまっている世の良い子達にこっそり勧めてみたことがある。
 著者達の姿勢は明確、子ども達が必要として求めている情報は、可能な限り正確に包み隠さず、率直に提供してあげようというもの。話題になったのは、やや大胆な性の情報部分、本全体から見れば本の1〜2割程度、私はそれ以外の部分の正当すぎるほど正当なところを、何よりも高く評価したのに。
 あとがきにもあるように、本書は、「やる気のない教師に対する告発の書、無責任な大人や体制に対する痛切な批判の書、社会の因習に対する造反の書、徹底したセックス指導書」などといった性格を持っている、稀に見る児童図書だった。今は、どこを探しても見つからなくなった本の一つ、残念でならない。
 最後に、まっとうな内容がよく分かるので、同書の目次を次に引用する。これだけの情報をがっちり身に着けお子さんはチトで手ごわいぞ。

はじめに
第一章 なにをどうして学ぶのか?
  悪くまなぶとき
  よく学べるとき
  もっといい授業をうけるには
第二章 レッスン
  時間割について
  10人の先生のうち9人が教えること
  10人の先生のうちI人のすること
  授業にあきてしまったとき
  悪フザケとは?
  キミ自身にやれること
  授業時間の使い方
第三章 宿題  なぜ宿題があるのか?
  両親はキミたちを助けることができるか?
  協力作業
  宿題の利用法
  計画的な勉強をしよう
  虎の巻
第四章 先生
  先生について
  先生の知っていること
  職員会議でおこなわれること
  先生たち相互の関係
  先生に影響をあたえる法
  贈りものについて
  もっといい授業について
  情報
  キャンペーンをはろう
  前もって知っておくこと
  疲れはてるまで先生に質問すること
  先生を人気ものにしたり、しなかったりする方法
  匿名でやること
  ストライキとか、その他の集団行動について
  注意すること
  先生を訴える方法
  材料を集めること
  先生に、あるいは生徒会に行くこと
  教育委員会への訴え
  当局に訴えること
  キミ自身の権利を主張せよ、ただしテイネイに・・・
第五章 学校での罰則
  なにが許されているか
  校則
  キミの先生がしてもいいこと
  クラスの変更権
  家に送ってしまうこと
  先生はブッてもいいか?
第六章 生徒・友だち
  いくつかの事実
  キミは知っているか
  知っておくこと
第七章 インテリジェンス
  インテリジェンスは変えられる
  でも違いはある
第ハ章 成績
  バカか利口か?
第九章 自由時間
  大人がキミたちに対してやれること
  キミ自身でやれること
第十章 セックス
  オナニー
  性交とペッティング
  ベビーを作らない方法
  遺精とメンス
  変質者
  ベビーを生まない方法
第十一章 刺激剤
  刺激剤の習慣性と依存性
  タバコ
  アルコール
  酔っぱらいとはなにか
  酔っぱらった状態から逃げ出すには
  ハッシシュ
  マリワナの種類
  ハッシシュを吸ったら?
  ハッシシュは危険か?
  LSD
  麻薬
  モルヒネ
  ヘロインとアヘン
  コカイン
  睡眠薬精神安定剤
第十二章 体制・キミの場所
  クラス
  試験
  学校はひとつの社会である
  キミとキミの社会

あとがき