武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 『ウェブ進化論』−本当の大変化はこれから始まる 梅田望夫著 (ちくま新書)

toumeioj32006-05-15

 インターネットの驚異的な普及が、社会になにをもたらすか、無視し得ない興味深いテーマなので、関連の書物には、可能な限り目を通すようにしてきた。特に、ばら色に未来を染め上げるものよりも、大したことはないとするいささか暗い未来予測のほうに説得力を感じてきた。
 このウェブ進化論なる新書は、どちらかというとばら色に近いほうだが、なかなかの説得力があり、聞きなれない話題(自分にとって(笑))も豊富で、ワクワクしながら楽しく読ませてもらった。著者は1960年生まれ、ある程度の若さが残っている時代にコンピュータとインターネットに接した世代は、こうゆう風に物事を考え世界を認識していると言うことが分かり、蒙をひらかれる思いで読んだ。
 パソコンとインターネットが大衆的に普及して約十年、唖然とするようなスピードで情報技術の革新が続いている。職場内でパソコンやインターネットの普及と管理にかかわっていた関係で、この十年間の進歩ほどびっくりさせられたことは多くない。何時からとは特定できることではないが、情報量の処理能力一つをとっても、量的な変化がある時点から、かかわっている人々にある質的な影響を及ぼすかもしれないという感じを抱くようななってきた。連日報道される情報流出事件などもそうだが、情報技術の進歩に社会の仕組みや私達人間の素朴な生活感が目立って遅れ始めたような気がしていた。
 私的な感想として、この本を読むまで、グーグルという企業の本当の新しさと凄さをわかっていなかった。グーグルアースや検索エンジンの凄さに感心していたが、それらを生み出してくる背後の企業活動のあたらしさを本書を読んではじめて知った。また、この本の重要なキーワードである<不特定多数無限大>という発想の一定程度のリアルさにも感心した。<こちら側><あちら側>というインターネットをめぐる技術の仕分けの方法も面白かった。
 その意味では、この本は私のようなある程度の年齢の読者を対象に書かれたのかもしれない。若手の先端的であることに何のためらいもないような人にとっては、当たり前のことなのかも知れないが、いまこの世界の見えないところで起こりつつあることに興味があるが、乗り遅れそうになっている人にとってはウェブ世界に目を開いてくれる格好の入門書ではないかという気がした。内容の総てが分かったわけではなく、また、総てに興味を抱いたわけでもないので、全体を一覧できるので目次を引用する。

序章 ウェブ社会―本当の大変化はこれから始まる
第1章 「革命」であることの真の意味
第2章 グーグル―知の世界を再編成する
第3章 ロングテールWeb2.0
第4章 ブログと総表現社会
第5章 オープンソース現象とマス・コラボレーション
第6章 ウェブ進化は世代交代によって
終章 脱エスタブリッシュメントへの旅立ち

 終章では、この国の現状に苛立ちのようなものを覗かせる著者だが、今後のさらなる著作活動を期待したい。