武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

2005-09-01から1ヶ月間の記事一覧

 用事があって八ヶ岳の山麓にある清里周辺へ3日間の日程で行ってきた。(写真は咲き残りのリンドウ、枯れ始めた草むらのなかでよく一目を引く)

標高1000mの高原地帯では、日中は20度を越え爽やかに過ごせたが、朝方は13度前後まで気温が下がり、秋の気配が忍び寄って来ていた。広葉樹の緑に勢いがなくなり、心なしか紅葉に向けての準備が始まっているような感じを受けた。 夏の間は、熱めの風…

  浜田明訳(講談社世界文学全集第78巻)インターネットの発展の恩恵をこうむることが多いが、とりわけ、欲しいと思っていた書籍を入手するのに絶大な威力を発揮してくれる。(画像はこの本の印象的な函カヴァーを少しトリミングしたもの)

以前は、欲しい本や調べたいことがあると、まず大きな図書館に行って下調べをして、それから大きな新刊本屋か古書店街にでかけた。下調べに半日、書店での本探しに1日、足を棒のようにして探し回って、見つかれば運の良い時、空振りに終わることも多かった…

 1969年ウイーン生まれの躍進著しい若手ヴァイオリニスト、ベンヤミン・シュミットのリサイタルに行ってきた。会場は所沢市民文化センターミューズのマーキーホール、プログラムはモーツアルトからイザイまで、マリアーネ・ヘーリングさんのピアノとのデュオが3曲とソロが1曲、どの演奏も力強く、メリハリ気が利いていてよく響きわたる素晴らしい演奏だった。弱音でたっぷりメロディーを歌わせるところでは歌心があふれだし息を呑むような美音を奏でてくれた。

モーツアルトでは愉悦に満ちた愛らしい舞い踊るような楽しさ、ピアノとの躍動感あるやり取りがとても楽しかった。2番目のバッハ無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番ニ短調では、技巧の冴えを響かせながら難曲のシャコンヌを盛大に盛り上げ会場を…

  最近、ふとしたきっかけから、島崎藤村の長編「夜明け前」を読み出した。2部構成で、文庫本は上下に分かれるので4冊になる長編、しんどい話だが、読み始めたら、巧みな設定と緻密な時代考証に基づいた重厚な展開に引き込まれ、飽きずに読み続けている。先を急ぐ若いときだったら研究目的でもなければ、興味深く読めなかったと思うが、ゆっくり展開する厚みのあるストーリーを楽しめるような年齢になったので、けっこう楽しんでいる。

第一部の上巻は、嘉永6年(1853年)6月頃から話が始まる。いわゆるペリー浦賀来航の年、長年続いた江戸幕府が、欧米の圧力を受けて徐々に崩壊の時を刻み始める年。誰が読んでも、作者が描こうとしているのは幕末の変革の時代だと言うことはすぐ分かる…

 埼玉県でも有数の質を誇り、温泉そのものが楽しめる本格的な温泉だと言う「白寿の湯」へ行ってきた。(写真はこの時期、沢山の花を付けているサルスベリ)

湯船には赤褐色に濁った湯が溢れ、湯につかると身体が見えなくなる。浴室の床には温泉の茶色い土のようなものが層をなして薄く堆積していて雰囲気がある。浸かっていると土の匂いなのか独特の匂いに包まれる。舐めてみたが、ピリッと来る強い塩味がした。浴…

  久しぶりに丸木美術館に行ってきた。以前に行った時と違っていたことがあったので、報告しておこう。(写真は、最近ほとんど見なくなった蝉の抜け殻、先月に写したものから)

まず、車で行く人のために、以前にあった駐車場は使えなくなっていて、美術館のすぐ近くの空き地が駐車場になっていた。車で行く人は美術館のすぐ側まで、狭い道でも車で進まれることをお薦めする。 次に、展示作品だが、以前行った時には、原爆の図の全作品…

 『新版貧乏旅行記』つげ義春著(新潮文庫)

つげ義春のマンガが気に入って、昔、「ガロ」という月刊マンガ雑誌でよく読んだ。一読、ストーリがうまいわけでも、絵が特にうまいわけでもないが、なぜか強い印象を残して、また読み返してしまう。不思議なマンガ家だった。コマとコマの間に、時折とんでも…

 『遊歩大全』コリン・フレッチャー著 芹沢一洋訳(発行森林書房)

「ハイキング、バックパッキングの喜びとテクニック」と言うサブタイトルのついたこの本は上下2巻に別れており、通しのページを見ると、全部でなんと670ページにもなる分厚さ。歩くことについての薀蓄を期待して読み始めると、じきに失望し途中で挫折し…

 『井戸』笹原常与著(発行思潮社)

淡い形而上学的叙情とでも評すしかない爽やかな傑作詩集、ほとんど知る人のいない詩集だと思うので紹介したい。 まず、詩集の表題にもなっている一編を全編読んでみていただきたい。かくも繊細に言葉を取り扱う言語感覚、そっと掬い取られる和えかな産毛のよ…

 ヘンリク・ミコワイ・グレツキ作曲、告発の歌ではないが重い意味が込められた現代の交響曲。全編、嘆きと悲しみに浮いたり沈んだりして、たゆたう悲歌のシンフォニーとしか言いようのない、つらい音楽である。作者グレツキは1933年ポーランドのオシェウェンツィム生まれ、このポーランド語の地名を読み替えるとアウシュヴィッツ、ナチの強制収容所があったところ。資料を見ると、アウシュヴィッツの強制収容所建設が開始されたのが1940年、ということは、グレツキ少年7歳の時。

グレツキの評伝は知らないが、この事実が彼の人生に与えた影響は、小さくなかったのではないか。「悲歌のシンフォニー」と呼ばれるこの曲を聴いて、一番気になったのは、まずそのこと。音楽を聴いて、作曲者の伝記的なストーリーを気にする聞き方はどうかと…

  石田勇治・星野治彦・芝野由和編訳(発行白水社)

国家による戦争、第2次世界大戦、20世紀、現代文明、民族国家、これらのどの課題を考えるにも、私にとってはナチによるユダヤ人多量虐殺は、避けて通れない扉のようなものとなって久しい。一部の人から、自虐的と言われようが、この国が犯したアジアへの武力…

 『窓際OL トホホな朝 ウフフの夜』斉藤由香著(新潮社)

作家の息子や娘、孫たちが、素晴らしい文章力を駆使して活躍するのを見ると、文章力は遺伝するのかな、と不思議な気がする。ちょっと思い浮かべるだけで、何人も名前が浮かぶ。この本も、「祖父・斉藤茂吉、父・北杜夫」という帯の文句に目が行き、秀逸な題…

 これは、何時読んでも昔懐かしい少年時代に引き戻してくれて、読み進むにつれ読者が心癒される稀に見る傑作博物誌。それもそのはず、サンケイ児童出版文化賞と国際アンデルセン賞優秀作品賞をダブル受賞した児童文学の押しも押されもしない傑作エッセイ集。しかし、残念なことにネット上どこを探しても新刊本は品切れ、申し訳ないが古本を探すしかないのが現状のよう。

初版が偕成社からでたのが1975年、今からたった30年前なのに、こんな素晴らしい本が手に入らなくなっているなんて、何ということ。確かにチト地味ではあるが、何かとせわしないあわただしいこの時代、週末のひと時をこんな優しい静かな本で過ごすことこそ、…

 『美しきもの見し人は』堀田善衛著(発行新潮文庫)

この新潮文庫版の「美しきもの見し人は」を何度も手にして、四隅がこすれてまるくなってしまった。同じ著者の同じ本が朝日選書からも出ているが、ポケットに入るサイズが手ごろでしかもカラー写真が70枚モノクロ写真が22枚、文庫にしてはかなり豪華なこの本…

 ディスポーザー(生ゴミ処理装置)是か非か

最近販売されるマンションには必ずと言っていいほどディスポーザーなる装置が設置されている。台所かその近くに設置されていて家庭で発生する生ゴミを粉砕処理する便利な装置だが、処理された生ゴミの砕片は水と一緒に下水道に流されるため、課題となってい…

 散歩(ウォーキング)の健康影響について。(写真は、散歩の際、足元で咲いていたニラの花、ニラの香りを撒き散らして咲いています)

先日通勤電車の帰りに、数年ぶりにかつての同僚と再会、しばらく話が弾んだ。その時、健康管理が話題となり、歩くことの効用に話が及んだ。91歳の同居のおばあちゃんの面白い話を聞いた。半年ほど前のことだが、室内で転んでその時の打ち身のせいか、体調を…

この国の教育では、医学と薬学についての基礎的な国民レベルでの一般教養は、小中高段階の教育課程からほぼ完全に排除されている。健康教育の重要な柱となる内容だと思うが、生物で身体の仕組みは学習するが、医学的なアプローチも薬学的なアプローチも考慮の枠外になっているのが現状。こんなことでいいのかとずっと思ってきたこと。

医療は医師と言う専門家に、投薬は医師の処方箋と薬剤師の処方に排他的独占的に支配され、一般人は医療と投薬の対象者、言い換えれば患者の位置におしとどめられているのが実情。外国の事例は知らないが、医学情報から完全に疎外された結果が、医療過誤が発…