武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 1969年ウイーン生まれの躍進著しい若手ヴァイオリニスト、ベンヤミン・シュミットのリサイタルに行ってきた。会場は所沢市民文化センターミューズのマーキーホール、プログラムはモーツアルトからイザイまで、マリアーネ・ヘーリングさんのピアノとのデュオが3曲とソロが1曲、どの演奏も力強く、メリハリ気が利いていてよく響きわたる素晴らしい演奏だった。弱音でたっぷりメロディーを歌わせるところでは歌心があふれだし息を呑むような美音を奏でてくれた。

toumeioj32005-09-23

 モーツアルトでは愉悦に満ちた愛らしい舞い踊るような楽しさ、ピアノとの躍動感あるやり取りがとても楽しかった。2番目のバッハ無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番ニ短調では、技巧の冴えを響かせながら難曲のシャコンヌを盛大に盛り上げ会場を大きく沸かせた。ヴァイオリン一つで見事に聴衆を引き付け、感動に導く表現力は見事と言うほかない。
 休憩をはさんで後半は、フランク作曲の優しい感じのする叙情的なヴァイオリンソナタ、それほど構成的な曲だはないところを気持ちよく聞かせるところがうまかった。最後は、サンサーンスピアノ曲をイザイが編曲したカプリース、技巧が前面に出た切れ味のいい華やかな演奏で楽しませてくれた。
 終始、ヴァイオリンのもつ幅広く深い表現力を、じっくり味わわせてもらったいいリサイタルだった。ヴァイオリンの表現力をここまで引き出す技量に大きな将来性を感じた。最後に今日のプラグラムを引いておこう。

モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 変ロ長調 K.454
②J.S. バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番 ニ短調 BWV1004
③フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調
サン=サーンス(イザイ編曲):カプリース