武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 ディスポーザー(生ゴミ処理装置)是か非か

toumeioj32005-09-03

 最近販売されるマンションには必ずと言っていいほどディスポーザーなる装置が設置されている。台所かその近くに設置されていて家庭で発生する生ゴミを粉砕処理する便利な装置だが、処理された生ゴミの砕片は水と一緒に下水道に流されるため、課題となっている生ゴミの発生は抑えられるが、下水道への負荷が増加するという弊害が予想されるので、現状はどうなっているかチト調べてみた。(写真は、農道を歩いていて出会った素晴らしく立派なアゲハ)
 集合住宅(特にマンション)では、課題の一つがゴミの収集、自治体が決めているゴミ収集のルールを守らないワンルームマンションへの風当たりが強いのもその一例。まして、超高層の数百世帯が暮らす大規模マンションともなると毎日発生する生ゴミの量も半端じゃない。これを衛生的に効率よく処理するために登場したのがディスポーザー導入の理由だと思うが、ゴミ処理の負荷を下水道に転化することの問題がないのかどうか気になる。
 調べてみたら、東京都水道局から案の定、「ディスポーザー使用自粛のお願い」というお知らせが出ている。それを見ると「 ディスポーザを使用すると、台所から生ゴミがなくなりますが、生ゴミを多く含んだ下水は、下水管を詰まらせたり、腐敗して悪臭を発生させるもとになります。 さらに、このような生ゴミを多く含んだ下水をきれいに処理することは難しく、水再生センターでの処理に大きな負担となります。また、海や川へ悪い影響をおよぼし、水質や環境を悪化させる原因となります。」とある。安易に生ゴミを減らす目的で導入するには問題が多いことが分かる。
 ただし、「旧建設大臣が認定したディスポーザ排水処理システムのうち、下水道局が適正な維持管理が行われることを確認したもの」、又は「(社)日本下水道協会の基準に適合したディスポーザ排水処理システムのうち、下水道局が適正な維持管理が行われることを確認した」ディスポーザ排水処理システムは、使ってもかまわないのだと読み取れる。調べてみると、粉砕した生ゴミをそのまま下水道の流すのはまずいが、下水道に流す前に、あらかじめ浄化槽などを設置して下水道への負荷を軽減するシステムを設置してあれば、問題ないことにしましょうと言うことになっていることが分かった。この現在の行政の対応に問題はないのだろうか。
 それはさておき、都水道局の自粛のお願いの理由を見ていこう。「」と()は引用。
 第1の理由は、「下水処理施設(終末水再生センター)の能力不足」とされている。(下水の処理は、微生物の働きを利用しています。下水をきれいな水に処理することにより、汚泥が発生します。現在の下水道の処理施設は、ディスポーザの使用を予定して造られていないため、ディスポーザにより粉砕された生ゴミ等を下水道に流しますと、下水処理の能力を超えることになります。このため、水再生センターから放流される処理水の水質が悪化し、環境へ悪影響を及ぼします。また、生ゴミ等の下水が増え、汚泥(沈殿物)量が増加することにより、汚泥処理のための新たな施設を造るなど膨大な費用が必要となるほか、汚泥の最終処分地も不足します。)となっている。
 第2の理由は、「下水道施設への悪影響」とされている。(下水道管は、道路の地下に埋設されています。水道管のように圧力をかけて流すのではなく、下水道管に傾斜をつけて自然に流下させます。どうしても避けることができない他の埋設物と交差する場合は、伏せ越し構造のマンホールを築造して横断します。このような下水道管にディスポーザにより粉砕された生ゴミ流入すると、沈殿物が増加し、下水の流れを阻害します。その上、沈殿した有機物等が腐敗することで、悪臭や硫化水素ガスが発生して、付近住民の方々に大変迷惑をおかけするばかりでなく、コンクリートで出来ている下水道管やマンホール等の構造物を腐食させます。)となっている。
 第3の理由は、「公共用水域の水質汚濁」があげられている。(東京都の下水道は、大部分が合流式で出来ています。合流式下水道は、汚水と雨水を同じ管に取り入れる方式ですが、大雨の場合は下水の一部を途中で河川等へ放流しその他の下水を水再生センターまで運びます。汚水だけが流れる晴天時は、雨天時に比べて流量が少ないため、ディスポーザの使用により粉砕された生ゴミが沈殿・堆積しやすく、その一部が雨天時の急激な流量増により河川などの公共用水域に流出します。この粉砕生ゴミには、栄養塩類とよばれる窒素や燐等が含まれています。これらが、河川などの水質を悪化させたり、また、閉鎖性水域である東京湾に流出すると、富栄養化状態が進み東京湾内の水質悪化を助長します。)
 第4の理由は、「水使用量の増加」となっている。(「水」は、いうまでもなく生活を支える上で最も基本的かつ必要不可欠なものです。水の需要は、今後とも増えることが予想されています。東京都では、水資源を節約するため、節水型都市づくりを目指しています。しかし、ディスポーザを使用すると、粉砕生ゴミを流すために水の使用量が増加します。)
 この下水道局の自粛呼びかけの理由を読むと、ディスポーザーには環境面から、相当に問題があることが分かる。私なら、ここからさらに問題が広がることを予測する。
 ①自粛の対象から外されている浄化槽システムをもつマンションの問題、20年〜60年先のことを考えると、多くのマンションが売りっぱなしのこの国の現状からすると、メンテナンスに問題が発生するのは必然、浄化槽システムが故障したらどうなるのか、バイパス回路が設置してあれば、未処理の汚物が下水道に溢れてしまう。今はいいかもしれないが先が怖い。
 ②マンションの台所から浄化槽までの配管は、何十年もつのだろう。物がものだけに途中で詰まることはないのだろうか。マンション住人の暮らしのマナーが破られがちなのは、良く知られていること、無責任な使用が大きなトラブルを招かなければいいが。
 ③マンション以外の浄化槽なしのディスポーザーが販売され普及していること。ディスポーザーの便利さに慣れた消費者が戸建て住宅を購入すると、使い慣れたディスポーザーを設置したくなるのは成り行きだろう。ネット上でもたくさんの単体のものが販売されている。都の水道局が使用自粛を呼びかけていることからも分かるように、今後不正使用はますます増えてゆくに違いない。これからどうするつもりなのか。減ったりはしないと思うが。
 ④最後にゴミ処理のモラルの問題。将来的には資源循環型社会を目指しているのに、ゴミを安易に目の前からなくしてそれでよしとする生活が広がると、長期的には循環型社会への合意形成が苦しくなりはすまいか。ゴミ問題の最良の解決策は、ゴミそのものを出来るだけ出さないようにする方向だったはず。
 あまりに急激にディスポーザーが普及して広がっているようなので、少し気になって考えてみた。未来は暗いか明るいか、それはこれからを生きる人たちにかかっていることなのだが・・・・・。