武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

美術

 Google アートプロジェクト印象記

この2月2日に公開されたばかりのGoogleのArtProjectを見てみた。グーグルジャパンのブログによると「Googleは、世界的に有名な17の美術館と協力し、1,000以上の芸術作品をオンラインで鑑賞できるアートプロジェクト を開始します。」とある。 http://www.goo…

 奥谷博「奥谷博自選展―愛と生命の刻を描く―」の印象記

伊豆の温泉に行くとき、伊東市の池田20世紀美術館を訪問するのを楽しみにしている。今回もユニークな企画展で知られている個展が、奥谷博展だったので早速行って見てきた。 池田20世紀美術館に初めて行った時は、一階部分の広いフロアーを使った常設展示…

 「無為庵乃書窓」というサイトのご案内

ポール・デルボーの画像を検索していて、偶然にこのサイトに辿り着いた。この方と好みが一致していれば、自宅に置いてある重くて嵩張る大冊な画集は不要になるような気がするので紹介しよう。 それにしても、このサイトの管理人さんの偏愛する画家たちへの情…

 『デジデリオ・ラビリンス−1464、フィレンツェの遺言』 森下典子著 (発行集英社1995/4/30)

デキゴトロジーから育った書き手の一人森下典子さん、「典奴どすえ」をはじめとする作品で器用で軽いエッセイストとばかり思っていたが、この本を読んで、考えを改めた。 人の前世を透視するというオカルトっぽい導入からはじめて、鑑真和尚とともに中国から…

 『サルヴァスタイル美術館』のご案内

かなり前に、ネット上で絵画作品を閲覧できるサイトを探していて見つけ、5年以上も折に触れて訪問、ますます内容が充実してきているこのWeb美術館を、いつか紹介しようと思いながら、つい延び延びになっていた。今回、思い切って紹介してみたい。何よりも、…

 『ゴヤ全版画集』 ゴヤ作・谷口江里也編集 (発行講談社1984/08/10)

かねてからまとめて見たいと思っていたゴヤの全版画集を図書館の検索で見つけ、借りてきた。大型本で全ページ厚手のアート紙にオフセット印刷なので、重量も重いが内容はさらに重い。モノクロのエッチングで、これでもかと人間社会の歪んだ面や暗い面を形象…

 梅野記念絵画館の印象記

このところ多忙だった日々に、空白の一日ができたので、長野県東御市にある梅野記念絵画館に行ってきた。秋晴れの一日、楽しいドライブになった。 梅野記念絵画館は、<芸術むら公園>と名付けられた小高い丘の自然公園のため池の畔という、抜群のロケーショ…

 竹中英太郎記念館の印象記

甲府の湯村という所にある挿絵画家、竹中英太郎の作品を展示してある記念館に行ってきた。湯村温泉の住宅街の一角にあるので、車一台がやっと通れるような細い路地の奥の、斜面にひっそりとその記念館は建っていた。館長さんの話では、遺族のお住まいをリフ…

 分冊百科あるいは世界の美術館シリーズ

本の出版形態に<分冊百科>と呼ばれている出版スタイルがある。何十冊かで完結するシリーズ物だが、最初の何冊かの価格を抑えておいて買いやすくし、しかも最初だけは多額の宣伝費を投入、初期段階では赤字覚悟で部数を伸ばしておいて、後は初期販売部数の…

 『ネーデルラント絵画史』 マックス・フリートレンダー著 斉藤稔、元木幸一訳 (発行岩崎美術社1983/4/20)

ルネサンス絵画の素晴らしさはどれだけ讃えても讃えすぎることはないが、同じようにヨーロッパアルプスを越えた北の方で展開した北方ルネサンス絵画も、イタリアルネサンスに負けず劣らず素晴らしい。この国では、北方ルネサンスへの関心はそれほど高くない…

 『画家・彫刻家・建築家列伝(第2版)』 ジョルジョ・ヴァザーリ著

あまりにも有名なこの本のことを調べてみると、この国ではまだ全訳は出ていないということに気がついた。部分訳は何種類かでているが、抜けている部分が多いので、(Wikipedia)を参考に、本来の内容をおさらいしておこう。イタリア・ルネサンス期に輩出した…

 『カルロ・クリヴェッリ〜マルケに埋もれた祭壇画の詩人〜』 石井曉子著 (発行講談社出版サービスセンター2008/08/31)

95年に出版された「カルロ・クリヴェッリ画集 (ピナコテーカ・トレヴィル・シリーズ)」に続く、この国で発行されたカルロ・クリヴェッリ関連の2冊目の本が本書。クリヴェッリというイタリア・ルネサンスの初期を飾る祭壇画の鬼才が、次第に多くの人に注目さ…

 『イタリア・ルネサンスの巨匠たち全30巻』 (発行東京書籍)

このシリーズの特徴は、解説文がほぼ時系列にそって記述されていて、作品の重要さの程度に応じて画像の大きさを変え、記述にあわせて部分拡大なども織り込み、図版と伝記的経過が巧みに組み合わされて非常に分かりやすいところ。1冊を読めば、画家の生涯と主…

 『石田徹也―僕たちの自画像―展』インプレッション

穏やかな冬晴れの日和になったので、練馬区立美術館で開催されている石田徹也展に行って来た。2005年に不慮の事故に見舞われ31歳の若さでこの世を去った石田徹也は、数奇な運命にもてあそばれた画家の一人に入るだろう。生前は、いくつかのコンテストで入賞…

 岩崎一彰・宇宙美術館インプレッション

伊豆高原の一角にある岩崎一彰さんの宇宙美術館へ行って来た。申し訳ないことだが、岩崎一彰さんのお名前は私の記憶にとどまっていなかった。展示をみて吃驚、受付の方に「きっと懐かしい世界ですよ」と言われた訳がすぐに分かった。かつて何度も眺めて宇宙…

 『満ちゆく生命−遠藤彰子の世界展』インプレッション

ネットや本の画像で見かけてその絢爛たる幻想世界に魅せられ、大作主義の画家だと言うことが分かり、かねてより原画を拝見したいと願ってきたが、気がついたときには運悪く展覧会が終わっていたりあまりにも遠距離だったりして、なかなかお目にかかれなかっ…

 『アルブレヒト・デューラー』 エルンスト・ヴィース著 相沢和子訳(発行エディションq)

昔の偉人の業績をいかに辿っても、その人間像に近づくことは難しい。詳細な評伝は限りなくその人物に接近する手掛かりになるが、それでも何だかもどかしい。そんな時、周到かつ巧緻に仮構された伝記作品が、もっと知りたいという心の渇きを癒してくれること…

『スズキコージズキンの大魔法画集』 鈴木康司著 (発行平凡社)

この素晴らしい画集の作者である鈴木康司さんは、絵本作家以外にも多彩な活動を繰り広げる、いわばマルチな造形作家と呼ぶしかないような多才なお人。今回は、そんなスズキコージとカタカナ読みするお方の、画家としての魅力を1冊に集めた魅力的な画集を紹介…

 ヨアヒム・ブーケラールJoachim Beuckelaer讃歌

ロンドンのナショナル・ギャラリーで見つけた16世紀フランドルの風俗画家、ヨアヒム・ブーケラールのことを調べようとしたが、日本ではあまりメジャーな画家ではないらしく、手持ちの西洋美術史を見てもみつからなかった。国立西洋美術館に1点作品があるよう…

 『マザー・グースのうた 全5巻 』 谷川俊太郎訳 堀内誠一イラスト (発行草思社 1975/01 )

30年以上前に出た古い絵本、ロングセラーを続けて現在もなお現役、今でも新刊本が入手できる素晴らしい出版物、全部で5巻からなる安くない本だが、どれか1冊手にしたら全部ほしくなるにちがいない。 英米文学を少しでも読むと、きっとどこかでおめにかかるイ…

 『北斎漫画―初摺(全)』 絵葛飾北斎 (発行小学館)

凡例では次のように本書の内容を説明している。「本書は文化11年(1814)より65年間という長年月にわたって刊行されつづけた、葛飾北斎(1760〜1840)の筆になる絵手本(木版画)シリーズ『傳神開手北斎漫画』初編〜15編の初摺本全15冊を、各表紙と大方の広…

 川上澄生全集を愉しむ 中央公論社(発行昭和54年)

11月14日(水)の21:00からのBSiの番組「 ハイビジョンのひととき 私の美術館 - 風となりたや・川上澄生美術館」を見て、急に川上澄生の版画詩を思い出した。奇妙に印象の強い様式化された版画と、素朴な味わいのある詩文。小春日和の陽だまりで、背…

 パリ美術館巡り印象記

先週、1週間ほど、あるツアーに参加して、パリへ美術館巡りに行ってきた。自由になる時間があり訪問できた美術館の数は多くはないが、積年の夢をかなえる旅だっただけに、少なからぬ印象を刻む旅となった。記憶に留める一助に印象を書きとめておく。 まず、…

 『美しい日々』 片山健画集 (幻燈社)

初めにお断りしておくが、この画集は、多分現在は入手困難、昭和44年に1000部限定で出版されたもので、私が所有しているのは323番。古書店を検索してもかなり高い値段が付いている。当時はあまり売れなかったらしく、大きい書店ではよく見かけたも…

『石田徹也遺作集』(発行求龍堂)

31歳で05年の5月になくなった石田徹也の画集だが、何度眺めても、言葉を失う。人前で見るにしのびないいほどの負の情感がどの絵からも暗くもやもやとわき上がる。いつも同じ焦点の定まらない男の顔が、視線を遠くに投げているばかり。ほぼ平行に伸びて…

 『ぼくらの小松崎茂展』印象記(逓信総合博物館)10月7〜12月3日

私の少年時代は、圧倒的に小松崎茂のイラストに影響された時代だった。戦後文化の代表の一つのマンガは勿論だが、絵物語というメディアによって物語を読む楽しさを、小松崎茂のイラストを通して学んできたことを痛いほど実感した展示だった。 すべてを雑誌や…

 ベルギー王立美術館展印象記(国立西洋美術館)9月12〜12月10

ブリュッセルにあるベルギー王立美術館にいったのは何年前になるか、確かオランダ、ベルギーと同時期に旅行したのだったが、旅行の何よりの楽しみが美術館探訪だった。その折の目玉だった王立美術館の名品が来るというので上野に行ってきた。 予想していた以…

 池田20世紀美術館(静岡県伊東市)

4日間ほど伊豆へ旅行に行ってきた。その折に立ち寄った「池田20世紀美術館」が、周辺の環境を含め美術館の建物、収蔵品のレベル、展示方法など、いずれも素晴らしく、見事な20世紀の現代美術を堪能する時間を過ごさせてもらった。美術の書籍などの画像…

 『ルソーの見た夢、ルソーに見る夢』 世田谷美術館企画展の印象記

一度見ると忘れられなくなることが、ひとつの名画の物差しになるような気がする。最初に見たアンリ・ルソーの絵がどれだったかは忘れてしまったが、見たとたんにアッこれはルソーだなとすぐに分かる。そして、何度でも見たくなるのが私にとってのルソーの絵…

 大塚国際美術館見学の印象記(画像は近くの別の展望台から美術館周辺を俯瞰したもの、小高い丘がそっくり施設と一体化している様が分かるかな)

四国の徳島におもしろい美術館があるという話を伝え聞き、一度行って見たいと思っていたが、ちと遠いのと日程の都合で行く機会がなかった。今度ようやく時間にゆとりができたので思いきっていってきた。羽田から徳島空港行きのスカイエアラインで約1時間、…