武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 ヨアヒム・ブーケラールJoachim Beuckelaer讃歌

 ロンドンのナショナル・ギャラリーで見つけた16世紀フランドルの風俗画家、ヨアヒム・ブーケラールのことを調べようとしたが、日本ではあまりメジャーな画家ではないらしく、手持ちの西洋美術史を見てもみつからなかった。国立西洋美術館に1点作品があるようだが、その程度、「十字架を担うキリスト」がその1点。
 しょうがないので、ウェブギャラリー・オヴ・アート Web Gallery of Art http://www.wga.hu/index1.html で探してみた。このハンガリーのサイトは巨大なウェブ美術館、膨大な絵画情報を高画質の画像として収録、いつもとても参考になる。さすがにここでは10数枚のブーケラールの絵画作品が見られてうれしくなった。
 Wikipediaにも若干の記述が見つかったが詳しいことは分からなかった。http://en.wikipedia.org/wiki/Joachim_Beuckelaer
 単なる風俗画家としてしか評価されていないのかもしれないが、作品によっては、画面から躍動する生命感が溢れて零れ落ちてきそうなほど、実に生き生きしている。圧倒的な表現力、筆力が凄い。
 食品が主人公で絵の前景をがっちり占めて、その背後に庶民が中景として配置され、遠景は普通の何でもない自然、風俗画の中に静物画がはみ出してきたようなこの不思議な構図、ブリューゲルの時代にこんな異色の鬼才画家がいたことがなんともうれしい。
 ナショナル・ギャラリーのサイトにも旅行で見た6点の作品がアップされている。http://www.nationalgallery.org.uk/ Beuckelaerで検索してぜひ見てほしい。ズーム機能を利用すると少し実物に近づいたような感じを受ける。面白い見せ方だ。 (画像はナショナルギャラリーのサイトからの借用、画面からみずみずしい野菜がこぼれ出そうな感じがしませんか、これが両手をいっぱいに広げたほどの大きな絵、絵の前に立つと野菜を自慢する賑やかな娘さんの声が聞こえてくるよう)