武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 梅野記念絵画館の印象記


 このところ多忙だった日々に、空白の一日ができたので、長野県東御市にある梅野記念絵画館に行ってきた。秋晴れの一日、楽しいドライブになった。
 梅野記念絵画館は、<芸術むら公園>と名付けられた小高い丘の自然公園のため池の畔という、抜群のロケーションに立地している。着いた時、すぐ側の草原で近くの叔母さん達がゲートボールのようなゲームを楽しんでいる姿があった。のどかな雰囲気につつまれていた。
 この絵画館の見所は、二つある。一つは、館長を務める梅野隆さんのコレクションを基にした常設展示。幸いにも今回は、直に館長さんのお話をうかがうことができ、三代に渡る梅野家のコレクターの血の濃さに感嘆させられた。300号を越える手書き写真貼りの会報「藝林」の迫力にも目を瞠った。梅野館長が画商にはならず、生涯をコレクターとして生きてこられたお話しがとてもよかった。
 もう一つは、この絵画館の企画展、今回は版画家秀島由己男の版画と精緻を極めた油彩の展示と、「ねこまみれ」と題されたネコを題材にしたコレクションの展示の二本立て。昔の二本立て興行が常態だった全盛期の映画館を思い出した。二つの企画展が、一遍に見られて得をした気分にる。

 私が一番感心したのは「ねこまみれ」、浮世絵から油彩、水彩、陶芸、彫刻などなど、誰もが知っている有名な大家達のネコを題材にした作品がずらり、ネコという生き物の本質にせまったと思われる何点かの傑作と呼びたくなる作品には、思わずニンマリさせられた。ネコ好きなら何としても自分のものにしたくなるのはよく分かる。
 背後にいるこれらのネコ作品を収集したコレクターの情熱には、やはり脱帽させられる。ネコ関連のものを集めているコレクターは少なくないと思うが、このコレクションは半端ではなく凄い。この情熱はただ事ではない。 (左の画像は、ネコ作品の展示風景、同絵画館のサイトの画像をお借りしたもの)
 梅野隆さんというユニークなコレクターの審美眼を通して企画されるこの絵画館の企画展には、他の美術館では見かけない独特の面白さが期待できる。今何をやっているかな、と時々気にかけてみる価値のある絵画館だった。