武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 退職者の日々、第2段階へ(2)

 <書物の死蔵>という言葉が浮かんできた。背表紙が見えるように本棚に立てて置けなくなって、横積みになったり、それが何段にも積み重なって、どこに何があるか分からなくなったりして、探している本にアクセスできなくなったら、その状態が死蔵である。蔵書として所有している意味がない。
 この悲劇が決定的になってなってしまった。解決の手立ては二つ、必要性の低いものから処分して、書庫の容量内に量を制限するか、新たな書庫を増築するか、いずれかしかない。増築しかないの分かっている。この結論にたどり着くまでの右往左往は、辛くて楽しい日々だった。

 とりあえず、軽い気持ちで不動産探しをはじめた。子育てに必要な家探しから数えて、40年ぶりの不動産探しである。40年前の不動産探しとは、すっかり様変わりしていた。あの頃は、新聞チラシと利用駅沿線の不動産屋まわりが、主な不動産探しの手立てだった。週末になると電車で移動し、足で探し回る日々だった。

 今はインターネットという強力な情報検索のツールがある。探したい物件の概念をキーワードに変換して、PCを駆使することになる。
 最初は、安いリゾートマンションはどうかと思って、手探りで探し始めた。以前に週刊誌などでも話題になった越後湯沢や苗場などの中古リゾートマンションがヒットしてきた。100万円以下の、中には数万円の子供のお年玉でも買えそうな格安物件が次々と見つかった。

 あまりにもショッキングな値段なので半信半疑、業者に内覧を申し込み早速現地に行ってみた。季節はずれの人影のないリゾート地は閑散としている。価格差をつけて数件みた、よく管理が行き届いていてチリひとつ落ちていない。人気のない巨大な建物はなんとなく気味が悪い。思わずシャイニングを思い出した(苦笑)。

 帰ってきて、あまりにも安い理由について情報を集めて、理由が分かった。バブルとリゾートがブームだった頃、湯沢や苗場にリゾートマンションを所有するのは一種のステータスだった。バブルは弾けスキーブームは凋み、転売しようにも買い手がいなくなり、固定資産税と管理費の支払いだけが残っているのだ。
 案内してくれたクールな感じの営業の人も、余りにも売れないので価格が下がり、現状のようになってしまったということだった。

 この経験から、各地にあるリゾートマンションも似たようなものだろうと推測して、リゾートマンションはすべて対象から外すことにした。