武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 電子書籍 事始め(3)

電子書籍専用端末としてのキンドル

 電子書籍のシリーズを始めてはみたが、なかなか更新がすすまない。暮れに買ったキンドルの端末を使ってみているが、期待していた程にワクワクしないせいに違いない。
 あまり本を読まない知り合いに、キンドルの話をしたら、汎用端末と勘違いしたのか、買ってみようかなと言い出した。私は焦って、本しか読めないし、読める本は限られているし、必要だったら本を買えばいいので、高いお金を出してまで買うほど完成した商品ではないと、買わないように説得している自分に驚いた。
 しかし、こんなことを言っていても、電子書籍専用端末にまったく魅力がない訳ではない。いくつか気づいた点をあげてみよう。

(1)青空文庫との提携により、著作権が切れている古典的な名作が、無料でダウンロードできることが嬉しい。ドグラマグラなどの傑作ミステリィは、いつか読みなおしてみたいと思っていたので、さっそく入手したけれど全く嵩張らないので満足。このセールスポイントは、どのメーカーも同じことではあるが。

(2)この嵩張らないという長所を生かしたのが、大菩薩峠や半七捕物帳などの全巻セット販売。数百円と紙の本に比べて格安にしてあるので、試しに半七捕物帳を全編300円で入手しておいた。これも全く嵩張らないのが素晴らしい。この手のコンテンツは今後どんどん増えるものと思われる。 (右の画像は全編ダウンロードした半七の表紙)

(3)これはPCのテキストビューアでは当然にできていたことではあるが、ある程度自由に余白や行間、文字の大きさを変えられること、これは嬉しい。
 私のように年を取り、午前中と午後では視力や眼のコンディションに違いがでる者にとっては、これは大変に有難いことなのだ。眼の調子にあわせて本文レイアウトを調整できるのは、快適な読書時間の延長につながる。

4)英文の読書は苦手だが、実は英文テキストこそ大変な宝の山になっているのが、インターネット世界である。試しにソローのWaldenをダウンロードして、少しずつ読みだして驚いた。英文でも和文でも、内蔵されている辞書機能があって、難解語句を指で数秒抑えると、瞬時にその意味がパネルに表示され、表示を全文表示にすると辞典の周辺語句までもがズラリと出てくる。これは嬉しい機能である。この辞書機能が進化すると、紙の辞書だけでなく電子辞書の機能も影が薄くなってしまいそう。内蔵辞典は、デジタル大辞泉プログレッシブ英和中辞典、The New Oxford American Dictionaryの3種類。  (左の画像は、デジタル大辞泉の参照画面)

(5)以上の長所はほとんどが<嵩張らない>という点に関するものだが、他に読みたいものがコンテンツにあればと言う条件付きで、読みたくなった時に手に入れられるということがあげられる。深夜でもどこにいても、通信環境さえあれば、いつでも読みたい作品をダウンロードできるという長所もある。正月の夜、突然、このブログのタイトルの元になった荷風の日和下駄を参照したくなり、Amazonから無料で入手、気になりだしたことを確かめることができた。

(6)バッテリーの持続時間にていては、通信機能をオフにして使うと一日数時間の読書でも1週間近くもつので、機内持ち込みや旅行なのでも不安はないだろう。数週間もつと言うのは、あまり本を読まない人のことだろう。

(7)ただし、ペーパーホワイトは読書専用端末なので、汎用端末と比べると音楽も色彩も動画もゲームも諦めるざるを得ないことになる。今の技術では、長時間読んでもあまり疲れないという条件は、相当に厳しい要求なんだということがよく分かる。
 快適に読めることが最優先の方にはお薦めしてもいいかなという印象である。
(続く)