武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 1月第5週に手にした本(28〜3)

*寒気と暖気が交互に列島を横切るようになってきた。二ヶ月ほど先の陽気が武蔵野に押し寄せてきた思ったら、翌日は、この時期にふさわしい寒風が吹きすさぶ。汗をかいたりブルっと震えたり、落ち着かない気候は、季節が変わり始めたサインだろう。少しずつ日が長くなってきたので、縮こまっている雑草も元気を取り戻すだろう。

◎ローレンス・ゴールドストーン&ナンシー・ゴールドストーン著/朝倉久志訳『古書店めぐりは夫婦で』(ハヤカワ文庫1999/9)*誕生日の贈り物探しをきっかけに、古書店めぐりの愉しみに目覚めた夫婦は、やがて初版本や稀覯本あさりをするマニアックな世界に入り込んでゆくという筋書きの、古書探求随筆。著者たちの道行とともにアメリカの古書業界事情が飲み込めてきて、古本好きならきっと愉しく読める。読書家としての土俵にかろうじて踏みとどまっているところに好感が持てた。古本屋めぐりは宝探しに似ている本好きのゲーム。

橘玲著『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫2003/4)*多様な金融情報を巧みに詰め込んだお手本のような情報小説、謎解きのミステリィの味と、困難を乗り越える冒険小説の味をミックスしてあり、これが新人のデビュー作とは恐れ入る。主人公の心情を浸している生活感の希薄な透明な虚無感に奇妙な魅力を感じた。10年以上前の作だが、今でも十分に愉しめる。

週刊文春編集部著『傑作ミステリーベスト10』(文春文庫2001/5)*文春の年末企画、傑作ミステリーベスト10を、99年までの24年間分まとめたもの、仕事の憂さを晴らすためか、新刊のミステリィをハードカバーでひっきりなしに読んでいた現役時代が懐かしい。読み捨てるようにして処分してしまったものがほとんどなので、回想の手掛かりにして、読み返したいものを探し出す資料として使うつもり。リサイクル書店の廉価本の中から見つけた。

◎松村昌家編『ディケンズ小事典』(研究社出版1994/1)*19世紀イギリスの偉大な大衆作家ディケンズについて少しまとまった知識が欲しくなって本書を手にした。英文学の大学の先生達が執筆しているせいか、情報がなんだか堅苦しくて、知る喜びにワクワクしないのが難点だが、要領よくまとまっているのでよしとしよう。研究としてではなく、喜びとしてのディケンズブックを待ち望む。その方がはるかにディケンズにふさわしい。