武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 1月第1週に手にした本(31〜6)

*例年のように年末から新年にかけて、厳しい寒波が押し寄せてきて、山では遭難が、平地では交通渋滞が続いた。できるだけ外出を控えて、暖房器具の近くで本を読んで過ごしている。北風の強い日は散歩に出るのも億劫になる。

マンディアルグ著/細田直孝訳『満潮』(河出書房新社1989/10)*幻想小説マンディアルグの文体実験を通してエロティシズムを執拗に追求した短篇集。表題作を除く作品は試作品のような感じがして、官能を愉しむにはやや難解過ぎる気がした。

荒俣宏著『稀書自慢 紙の極楽』(中央公論社1991/9)*著者のビブリオマニアぶりが気に入ったので、同傾向の1作目を手にした。なんとか字が読めるようになった小学生の頃からの愛書をめぐる回顧録。ほぼ同世代なので、時代の雰囲気が懐かしい。ただ、この時代、生まれ育った場所によって相当の違いがあった。マスメディアが発達してこういう愉しみの味が薄くなった。

野村宏平著『ミステリーファンのための古書店ガイド』(光文社文庫2005/1)*実地踏査を重ねた全国古書店ガイド、ミステリー以外をターゲットにしている人にも役立つように編集してある。駅を軸にした略地図に、お薦めの店が表示してあるので分かりやすい。整理された索引が付いているともっと付加価値がついたのではないか。

日本古書通信社編『21世紀版全国古本屋地図』(日本古書通信社2001/7)*かなり古いが、略地図付きの全国古書店ガイドは、これが最後なので今のうちと思い入手した。残念なことにこの号を最後に<古本屋名簿>に様変わりして、ガイドブックではなくなってしまった。77年に初めてでた最初の全国古本屋地図には随分お世話になった。

モンゴメリー著/神山妙子訳『赤毛のアン』(Kindle版)*旺文社文庫とともに市場から消えて新刊では読めなくなっていたもの。アニメの赤毛のアンの台本に使われたことで、この版は有名になった。原作に忠実で、丁寧で分かりやすい日本語になっていて、読みやすい。キンドルにダウンロードしておいて、気が向いた時、好きな今日を拾い読みするつもり。

◎ヘレーン・ハンフ著/江藤淳訳『チャリング・グロス街84番地』(中公文庫1984/10)*ニューヨークに住む本好きの女性脚本家と、ロンドンの古書店マークス社のフランク・ドエル氏と社内の人々との間でかわされた書簡集。古書店と顧客との古書注文のやり取りが、書物愛を介して、ほのぼのとした人間的交流に発展してゆく。手紙と書物を介して交わされた大人の純愛物語と言えよう。本好きの方にお薦め。