武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 5月第1週に手にした本(29〜5)

*退職してからゴールデンウィークは、自宅近くを離れないことにしている。若い現役の人たちの貴重な休暇の時間なのだから、リタイヤ組までが渋滞に加わって、混雑をひどくすることもあるまい。自宅周辺を散策していても、まるで真夏の高原のように爽やか、武蔵野の新緑は初夏の光に輝いて、なかなか見事な景観である。目立たないが、所々樹木に咲く花が微かな花の香りを漂わせて、街の空気をちょこっと華やかにしてくれている。いい季節になってきた。だがいい季節は長く続かない。

池谷伊佐夫著『神保町の蟲/新東京古書店グラフィティ』(東京書籍2004/11)*この著者の描き出す古書店のイラスト風景が好きで、添えられた文章のさりげない調子がいい。前半が<神保町の蟲>と題する神保町の古書店エッセイ、後半が<新東京古書店グラフィティ>と題する著者お気に入りの古本屋紹介記になっているが、それ以外の古本エッセイも散りばめられている。古書と古本屋が好きな人にとっては堪らない一冊。

◎斎藤政喜著『日本全国スーパーカブの旅』(小学館2009/8)*ホンダのスーパーカブを手に入れたので、何かのご縁と、カブを使ったこの旅行記を手にした。半分以上が巡礼紀行をしめていたので、若いのにこの著者どうしたことかと訝った。だが、考えてみれば、雑誌社の注文で書いた寄稿文だろうと思い、納得した。荷物を満載した野宿自炊旅行がとても楽しそうに書いてある。同じスタイルの旅の経験者としては、文章ほどに楽しい事ばかりでないのは承知している。読み物としては愉しかった。

◎LOFT BOOKS編集発行『新・ニッポン放浪旅ガイド250』(イースト・プレス2009/5)*個性的な安宿をいかにも楽しげに紹介したガイドブック。若かった頃、お金をかけずに旅をすることが無性に愉しかったのを思い出して、今時の安宿に興味が湧いたので手にした。お金を使わないで、心豊かな旅をするのは、意外に難しいということを、苦い記憶と一緒に思い出した。貧乏旅行を上手に楽しんで貰いたいと思った。

◎スー・ハリソン著/河島弘美訳『母なる大地父なる空・上下』(晶文社1995/10)*紀元前7000年前の氷河期、アリョーシャン列島の小島に暮らす女の子を主人公にしたファンタジー。過酷な運命に翻弄される主人公を視点人物にして、リアルに物語が綴られている。三部作をなす膨大な長編なのでこれからが愉しみ。