武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 4月第4週に手にした本(22〜28)

*近場を気軽に移動する日常の足として、ホンダのスーパーカブ110の中古を手に入れた。思い起こせば中学3年の時に、父親が乗っていた当時のスーパーカブを拝借したのが、エンジン付きの乗り物に乗った初体験だった。あれ以来、内燃機関としてのエンジンを動力源として、一体どれだけ利用してきたことか。あれは半世紀前の5月の出来事だった。スーパカブは、商標としても乗り物としても基本設計を今なお引き継いで現役でいるということが凄い。手軽な乗り物として、実に良くできていることに改めて感心した。

夏目漱石著『我輩ハ猫デアル』(新選名著復刻全集・近代文学館1979/1)*馴染みの古書店を久しぶりに覗いて、あまりに安かったのでつい手に取ってしまった。店主と話すと、今は全く本が売れない時代だと、嘆くことしきり。発売当初のスタイルで、お気に入りの本を読むのは愉しい。明治38年にでた本書を、綺麗なままの復刻版で読むのは格別である。

◎荒川じんぺい著『パソコンで森暮らし』(カッパブックス2002/11)*10年以上前の本なので、内容は古いが、著者が嬉しそうにパソコンのスキルを向上させてゆくプロセスが愉しい。八ヶ岳の別荘と都内を行き来しながら、田舎暮らしと都会生活の二足のわらじを器用に履きこなしている姿が微笑ましい。一年間の生活を日記スタイルでまとめているので、季節感が随所に滲んでおり、気分よく読めた。ブックオフの105円コーナーで見つけた出色の拾い物だった。

柳原良平著『第5船の本』(至誠堂1976/7)*1章が良平の帆船パレード、2章が良平の海軍図鑑、3章が良平の船旅絵日記、2章の海軍図鑑が重かった。すべて戦前の軍艦をテーマにした記事だが、出てくる船のほとんどが先頭の結果、沈没していて、乗っていた兵士たちのことを思うと何とも痛ましい。戦後のこの国が、いかに多くの悲惨を経た後の事であることか、改めて考えさせられてしんみりした。

埴谷雄高著『死霊全1巻』(講談社1998/2)*著者の全集の1巻目、箱も表紙も黒々とした800頁を超える大冊。ずっと気になっていた本なので、驚愕するような価格で出ていたので衝動買いしてしまった。この著者の小説を読むと、虚構とは何か、いつも考えさせられる。いつになったら読み終えられるだろうか。

北原白秋著『白秋全集40巻』(岩波書店1987)*1冊分の価格よりも安い値段でこの膨大な全集を入手した。定価を調べると154700円だった。旺盛な言語表現者だった白秋の全貌を、機会があれば一度手にしてみたいと思っていた。念願がかなって嬉しい。挟まっていたチラシの書店印を見ると、岡山で販売された本のようだ。巡り巡って、武蔵野の私の書庫に辿りついた。得がたい愉しみが増えた。