武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 4月第1週に手にした本(1〜7)

*早朝の散歩が爽やかな季節になってきた。歩き始めは少し寒い気がするけれど、ウォーミングアップがすんで歩幅を広げ速度を上げる頃になると、顔を撫でる風も気持ちよくなり少しずつ身体も温まってきて手足の動きもなめらかになり、どこまでも歩けそうな気がしてくる。足腰をギアチェンジして緩やかだけどトップギアの速さにもってゆく。全身を温まった血液がよどみなくなめらかに循環しているのが実感できるような感じがする。坂道に差し掛かると、脈拍が早くなり少し汗ばみ始める。自分が歩く動物であることが納得できる瞬間がくる。やがて少しずつペースを落として帰りの準備を始める。こういう一日の始まりもある。

柳原良平著『第2船の本』(至誠堂1969/10)*1巻目に比べてイラストの割合が増えて、さらに趣味の本らしくなった。<船キチガイ>と題された船の随筆のほかに、著者の筆による船会社と海軍の船舶史とイラストによる船の図鑑など、内容はひたすら船づくし。著者の船に関する知識の広がりに瞠目するしかない。大人向けの船の絵本。

矢内原伊作編『続・辻まことの世界』(みすず書房1978/6)*虫類図譜補遺ほか著者得意のイラスト付き寸評が90ページほど収録されており無類に愉しい。そのほか、創作、詩論、絵画論、山岳随筆など、著者の文章を多様な角度から分類して収録してある。上下巻合わせると文字通り<辻まことの世界>の展望が得られる。

◎堀秀彦著『石の座席』(朝日新聞社1984/9)*「銀の座席」が老年期を語るのに赤裸々だったので本書を手にした。さらに年齢を加えたせいか、より一層死の影が濃厚、無宗教モラリストらしく、いかなる既成概念に頼ることなく死と向き合う姿が壮絶の一言。老年期の愛や孤独についても、一人称でこれほど切実に語った文章は珍しい。元気のない時には読まないほうがいいかもしれない。

堀田善衛著『ミシェル城館の人・争乱の時代』(集英社1991/1)*モンテーニュの文学的な評伝、著者の最晩年の労作。曇りのない筆致でひょうひょうと語り継いでゆく文章に乗せられて、16世紀の争乱に満ちた近世フランスに導かれるのは何とも愉しい。これからの全3巻のモンテーニュ世界への逍遥が愉しみ。

モンテーニュ著/関根秀雄訳『モンテーニュ随想録1〜3』(白水社1936/6)*昭和10年に初版が発行されて評判となり、翌年に再販されたもの、旧仮名使いのものだが手頃な値段だったので入手した。70年以上経過した古書ではあるが、保存状態がよくて読むには支障なし。旧仮名遣いの少し重々しい調子が気に入っている。古書を手にする愉しみここにあり。フランス装の3巻目の途中まで、ページを切ってあるがその先は袋状のまま、70年前の古書の初読みの読者になる至福、お分かりいただけましょうか。