武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 4月第2週に手にした本(8〜14)

*早朝に出かける散歩がますます快適になってきた。日によっては手袋の必要がなくなり、素手を大きく振って歩いても冷たさや痛さを感じないで歩けるようになってきた。防寒用に着ていた薄いダウンの上着も脱いだ。身軽になって、背筋を伸ばし、歩幅を広く取って、武蔵野の新緑の下を逍遥していると、今日一日が何だか良い日になるような気分になってくる。本を捨てて街に出ようと、呟いてみたくなる。

柳原良平著『第3船の本』(至誠堂1972/1)*ますます内容がマニアックになってきた。1部が<船キチガイ文化>、船と港のギャラリーが著者らしく無類に愉しい。2部の<良平の商船学校>当然にも船乗りになるためのステップを取材して興味深い。身近に船乗りを職業とする人がいないので興味深かった。第3部<良平の船舶事典>勿論船についてのウンチク集、イラスト付きで知らなかったことばかり。これも愉しい大人向けの船の絵本。

◎堀秀彦著『年齢をとるということ/その哀しみ、楽しみ、そして知恵』(カッパ・ブックス1979/11)*著者による老人エッセイ集の第1作目、老人になることを多様な角度から赤裸々に語って、独自の老境表現の世界を切り開くきっかけとなった本、本書は死と愛と金銭に焦点を当てている。自在で気ままな感じのする軽い語り口が、重いテーマにうまく調和して面白い。

モンテーニュ著/関根秀雄訳『モンテーニュ全集全4巻』(白水社1957/11)*昭和32年にでた新仮名遣いへの改訂版、旅行記と書簡集が追加されて一応全集と名乗っているもの。旧仮名遣いの、まるで明治生まれのお爺ちゃんが語っているような古風な旧版と比べると、モンターニュが若返ったような感じがする。一人称が<わし>から<わたし>に変更された影響が大きい。意味がスッキリ通るようになった。

◎藤野順著『放浪読書学/定年からの旅立ち』(山手書房1979/6)*元新聞記者の定年退職後の読書論と書評集。はじめはどうなることかと思ったが、著者が旅に出るようになり、読んでいる本と関係のあることを取材するようになって、文章が立ち直り充実して、ほっと胸をなでおろした。座ってただ本を読んでいるだけではダメなんだと教えられた。