武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 5月第2週に手にした本(6〜12)

*エアコンが不要な季節になったと喜んでいたら、日差しが強い時間帯には今度はクーラーがほしいような夏日になってきた。初夏の太陽光は強い。昨年、導入したべランダのミニ太陽光発電が、元気いっぱいに発電していることが、センサーを見るとよくわかる。気温が上昇する前の、早朝散歩が気持ちいい。

◎水野肇著『夫と妻のための老年学』(中央公論社1978/6)*今から35年前のベストセラー、私が30代の前半だったころ、友人に薦められて、初めて老年について自分の問題として興味を持つきっかけになった本。多分、このころからこの国の将来の高齢化社会が、深刻な社会問題として意識されはじめたのだろう。老年期の課題を、医師の視点でいろいろと指摘している点は、今読んでも説得力がある。

安藤鶴夫著『安藤鶴夫作品集全6巻』(朝日新聞社1970/8〜1)*直木賞作家にして古典芸能評論家だった天性の趣味人、安藤鶴夫の古い作品集が意外に安価だったのでまとめて入手した。私見ではこの著者の作品はでき不出来の落差がかなり大きいので、きちんとセレクトされた選集を読むのが効率がいいように思う。その意味で、このシリーズはよく選びぬかれた著者のエッセンスを集めたベスト叢書になっている。

山田風太郎著『戦中派虫けら日記』(未知谷1994/4)*昭和17年から19年までの著者20代前半の日記。この著者のよく知られている敗戦時のリアルな日記の前編に当たる部分。20歳で書き始めた日記を契機に自己を見つめ、自分の世界をこつこつと確立してゆく過程が記録されており、生々しい作家誕生秘話として読める。

マイクル・クライトン著/乾信一郎訳『大列車強盗』(ハヤカワ文庫1981/7)*実話に基づく英国ビクトリア時代の強盗事件に取材した悪漢小説にして時代小説、犯罪の計画段階に焦点をあてた見事な物語展開が圧巻。著者の徹底した取材と、筋立ての鮮やかさが輝く娯楽読み物の秀作。首謀者の魅力的な悪漢振りについ感情移入してしまいそうになる。