武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 5月第4週に手にした本(27〜2)

*海外旅行のツアーに参加して、北アフリカのモロッコにいってきた。アトラス山脈を境にして、大西洋に面した地域と、サハラ砂漠に属する地域の両方を旅して、日本の風土とまったく違う風土に暮らす風俗と文化、歴史に接して、想像していた以上の収穫があり、充実した10日間をすごした。

 ◎ジャック・アタリ著林昌宏訳『金融危機後の世界』(作品2009/9)*2007年のサブプライムローン問題から、2008年のリーマンショックによる世界金融危機にいたる金融市場の詳細な分析は、まるでめまぐるしく展開するドラマを見るよう、根本問題はなにも解決されることなく、その後の景気回復への期待だけが膨らんできていることがよくわかった。今も資本主義はあやうい綱渡りを続けているということを確認できる本。

谷川俊太郎著『魂のいちばんおいしいところ』(サンリオ1990/12)*あとがきに新聞や雑誌などのメディアからの依頼によって書かれた作品を集めたものとある、まったくの手抜きなし、どの作品も読む喜びをかなえてくれる読み応えのあるものばかり。谷川の手を通ると何故か日本語がとてもすぐれた言語に見えてくるから不思議。

吉田秀和著『吉田秀和全集全10巻』(白水社1975)*現役時代から西洋音楽を聴いたり考えたりするための、最も頼りになる手引き書だったもの、図書館で借りたりしてほぼどの巻にも目を通してあったが、機会がなくて蔵書にできなかった。オークションで信じられないほど格安で入手でき喜んでいる。月報のほかにハガキやチラシなども当時のまま挟んであり、まだ読まれた形跡のない巻が多い良品。さっそく6巻の<ピアニストについて>の明快で説得力のある文体に引き込まれた。休眠状態の音源がまた聴きたくなった。

シモーヌ・ヴェーユ著/石川湧訳『抑圧と自由』(東京創元新社庫1965/11)*学生時代に手にして、著者20代の自由で真摯な考察に圧倒され、今でも書庫の片隅に残り続けている私的な必携図書。信仰の問題や哲学的な著作の多い著者の、マルクス主義関連の論考を集めたもの、さすがに今読むと古い感じは否めない