武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 11月第2週に手にした本(05〜11)

*朝晩の冷え込みがきつくなり、武蔵野は平地の紅葉もすすみ、体感的には冬に近くなってきた。地域社会では文化的な行事が毎週のように催され、賑やかな交流の輪があちこちに広がっていて、とても忙しい。文化的にも今が収穫期なのだ。実りの秋も後半に差し掛かってきた。

横田順彌著『日本SFこてん古典1&2&3』(早川書房1980/5〜81/4)*3巻目の人名索引と書名索引および主要作品年表までも含めて、3巻からなる本書の資料的価値はとても高い。書誌的な生真面目さや研究論文的な硬さから遠く、随筆風の本文は親しみやすい愉しい読み物に仕上がっている。各巻頭に付されている画像資料では、見たこともない貴重な資料にたくさんお目にかかれる。古書蒐集と発掘の愉しみも味わえる力作。

◎久木綾子著『見残しの塔/周防国五重塔縁起』(新宿書房2008/9)*時は室町時代の中期15世紀、若狭と周防と日向の3地域に住まう人々の運命が複雑に絡み合い、周防国に建立される五重塔に収斂してゆく、味わい深い歴史物語。研ぎ澄まされた文章が美しく、物語の展開が手際よく、引き込まて読み終わるのが勿体無かった。本文のレイアウトも読みやすく、正方形に近い変形版の本体もカバーも美しく装丁されているので、文庫もでているが是非この版で読みたい。

◎蒲松齢著/柴田天馬訳『ザ・聊斎志異大活字版全1巻』(第三書館2007/1)*名高い柴田天馬の訳した聊斎志異を、本来の訳文に忠実に現代仮名遣いに移し変えた1巻全集。大活字が元の漢文の面白さと天馬訳のルビのユニークさを生かしており、非常に読みやすい。全体を6部に分類したことにも合理性があり、聊斎志異に対する半端ではない読み込みが生かされた編集になっている。天馬訳で聊斎志異を読みたい人にはこれがお薦め。私は、この版を手にして全1巻シリーズを見なおした。

浜内千波著『料理の基本/朝・昼・晩』(ナツメ社2003/8)*全体を朝昼晩の3部構成にして、定番料理を並べた基本的な料理本。小さな画像を多用して手順がわかりいいように工夫してある。調理法にも、随所に細かなアイディアや工夫が挟まれており、料理教室経営25年の著者のキャリアが生かされている。主婦に人気がある訳がわかる気がした。