武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 10月第1週に手にした本(9/30〜10/6)

*私的には、武蔵野の快適な気候は、年間を通じて5月と10月のわずか2ヶ月ではないかと思っている。特にバイクに乗っていると、あとは暑いか寒いかのどちらかの我慢の日々でしかない。それぞれの月や季節には、独特の趣はあるものの、総合的に快適かどうか考えてみると、本当に気持ちよく過ごせる時期は少ない。やっと快適な季節になってきた。

吉村昭著『縁起のいい客』(文芸春秋2003/1)*図書館の随筆コーナーを眺めていたら、よく読まれているらしく、ひときわくたびれた感じの1冊が眼を引いたので手にした。あとがきに「ひとつひとつを読み返してみると、私の生きてきた時間がよみがえる」とある。鮮やかに切り取られた著者の日常が、歴史小説にはない味わいを醸す。芳醇な佳作が目白押し。

吉村昭著『東京の下町』(文芸春秋人文書院1985/7)*歴史小説の作法にそって書かれた、著者の生育をなぞる連作エッセイ。表現領域としてエッセイの世界を我が物にしようという意欲によって高揚しているのだろうか、ひときわ密度の濃い張りのある文体が素晴らしい。北国育ちの私には、事実に即して丁寧に語られる古い東京の街の話は、不思議な懐かしさに彩られてとても興味深かった。一地方史として東京の下町を語った傑作エッセイである。東京の下町が、一地方都市だった頃の古い話の懐かしさがとてもいい。

◎コナンドイル著/深町眞理子訳『シャーロック・ホームズの冒険』(創元推理文庫2010/2)*ホームズを深町眞理子さんが翻訳していると知って、気にはなっていたがなかなか手に取る機会がなかった。図書館の書架で見つけて、とうとう手にとって見た。よどみなく流れる達意の日本語は、読んでいて、ふといろんなことを考えさせてくれる。余裕を持って読めるので、つい道草をしたくなると言うか、読み直しの読書の愉しみを保障してくれると言うか、期待通りの新訳に満足した。ホームズを読み返すなんて何十年ぶりだろうか。

◎中村昌広著『自宅で楽しむ発電』(ソフトバンク新書2013/6)*太陽光を中心に、水力と風力を視野に入れて、自宅で発電し、蓄電し、直流を使いこなすにはどうしたらいいかを、具体例を紹介しながら、分かりやすく教えてくれるハウツー本。<楽しむ>という軽さを大事にしながら進んでいくところが親しめていい。ソーラー発電の初心者向き。