武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 4月第2週に手にした本(9〜15)

*情けないことに書庫にあることを忘れて同じ本を買ったり、読んだことすら忘れて図書館に予約を入れたりするようになってきた。読んだり読みかけたりした本を備忘録としてメモ、週1で更新しています。(今週もたくさんの本を手にしたが全部読了できたわけではありません。

朝日新聞日曜版「世界/名画の旅/フランス編1,2」取材班著『世界/名画の旅』(朝日文庫1989/4,5)*84年の秋頃から始まった日曜版のカラフルなこの連載は愉しかった。海外旅行どころではなかった現役の頃、海外の美術館の名画を実際に見ることは、手の届かない憧れだった。短い旅行記のような記事の展開が、名画への道筋を見せてくれているようで、欠かさずに読んだものだ。廉価本の古書を手にして、あの頃の感触をもう一度愉しんでいる。記録を見ると2年かも続いた長期連載だった。
大谷光瑞著『大谷光瑞全集第八巻/食』(大乗社1935/4)*著名な食の随筆が収録されているので本書を手にした。食の情報が乏しかった時代に、これほど広範に食について語ることが出来たことは凄い。宗教家でありながら全く宗教色なしで食について語り尽くした姿勢は評価したい。単行本は1931年に出ているので、私が生まれる前の話。
自然エネルギー推進市民フォーラム著『だれでもできるベランダ太陽光発電』(合同出版1999/10)*脱原発を具体的にすすめるための手立てが欲しくて本書を手にした。解説が丁寧で読みやすい、製作意欲が湧いてくる。電力浪費型の生活を反省するのに役に立つかもしれない。個人として自然エネルギーに関わる糸口にしたい。
中野次郎著『誤診列島』(集成社文庫2002/3)*この国の医療制度に対する徹底的な批判の書、アメリカで50年近く医学教育に携わってきた著者の指摘は手厳しい。本書を読むと、病院に行かなくて済むならこのまま病院に近寄りたくないという気持ちにさせられる。
山田風太郎著『おんな牢秘抄』(角川文庫1984/3)*異能の作家が作り出したとびっきり捻りのきいた捕物帖、舞台を小伝馬町の女牢に据え、ご存知大岡越前の娘を探偵役として、女囚人の身の上にまつわる謎と秘話を物語りのネタとする、風変わりな探偵劇。短編連作の形をとりながら幕府を揺るがす陰謀話に結びつけてゆく。稀代のストーリーテラーの手腕を愉しむ一級の娯楽作品。
杉森久英著『大谷光瑞』(中央公論社1975/1)*時代伝記ものを得意とした著者の丁寧な作品、近代日本社会に大きな足跡を残した大宗教家の生涯のアウトラインが知りたくて手にした。生まれも育ちも庶民とはかけ離れた大谷の生育歴が、その後の桁外れとも言える大谷の言動に繋がっていく様子がよく分かる。明治・大正・昭和をこういう風に生きた人もいるのかと言う不思議な感慨がわく。