武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 12月第4週に手にした本(24〜30)

*単なる通過点と分かっていても、年の終わりには感慨がわく。今年も読みたい本が限りなく現れてきて、頑張ってはみたけれど、その半分も読みきれずに一年が経ってしまった。面白かった本も多いが、途中で頁を閉じたものも少なくない。暮れになって、キンドルが我が読書生活に加わった。これからどうなるか、樂しみにしている。

アンドレ・ピュイグ著/細田直孝訳『未完の書』(新潮社1978/6)*サルトルが長文の序文を寄せたことで評判になったフランス現代文学アンチ・ロマンの一冊、実験的な意図が先行するタイプの叙述が、愉しめる読み物にならなかったところがつらい。文学史的興味なくしては手に取る人はあまりないかもしれない。

現代詩手帖編集部編/村上龍Ryu Book/現代詩手帖特集版』(思潮社1990/9)*古書店の廉価コーナーで見つけて手にした。個人特集だけあって、エッセイ、評論、インタビュー、アルバムなどなど、村上龍をめぐる記事が盛り沢山、この手の本をきちんと読んだことはないが、所々気になる箇所を拾い読みするのは愉しい。

ドストエフスキー著/亀山郁夫訳『カラマーゾフの兄弟』(Kindle光文社古典新訳文庫2006/9)*実にこの亀山訳は読みやすい。漢字が少ないこと、複雑なロシア式ネームをハーストネームに絞ったことなど、十分のその工夫が生きているのだろう。そのせいか、濃厚なドストエフスキー節が薄まったような気もするが、これはこれでいいのだと思って、錯綜する展開を愉しんでいる。<大審問官>のくだりを軽快に読むのも悪くない。

◎安田守著『イモムシハンドブック』(文一総合出版2010/4)*個人的に蝶や蛾の幼虫であるイモムシを大変に美しいと思っているので、本書は嬉しいミニ図鑑だった。小冊子なので携帯に便利で、写真がとても美しいので、気が向くと眺めて愉しんでいる。嫌いな人も多いジャンルなので、みだりに人に薦めないように我慢している。

荒俣宏著『ブックライフ自由自在』(太田出版1992/6)*本好きというよりも、本に魅入られて生きているような著者の生き様が凄まじい。真似できないし真似したくもないが、壮絶な書物探索からこぼれてくるエピソードの数々は面白く、本に触発されて綴られた感想や着想は、非常に興味深かった。豊富に引用されている貴重な図版に目を見張った。荒俣氏の好奇心に脱帽した。