武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 12月第3週に手にした本(17〜23)

*寒さが厳しくなってきたので早朝の散歩はあきらめて、昼食後の比較的気温が高めの午後に歩くようにしている。武蔵野の落葉樹はすでにほとんどが丸裸、天気が良ければ林床にまで日光が届いて、雑木林は一年中で一番明るい。積もっている落ち葉を踏んで歩くと、落ち葉がクッションになってフカフカして自然の絨毯を踏む感じがする。二時ころをピークに急に気温が下降し始める。日陰の水たまりでは氷が溶け残るようになってきた。

◎エミール・マール著/田中仁彦、池田健二、磯見辰典、平岡忠、細田直孝訳『中世末期の図像学(上/下) 』(国書刊行会2000/9)*中世の図像体系三部作をしめくくる最終巻、終章のタイトル「中世の芸術はいかにして終焉を迎えたか」が象徴的、しのびよるプロテスタンティズムルネサンスの影響を背景に、教会内部で自らの論理によって頂点に昇りつめた図像体系をリセットしてゆくプロセスの記述は説得的。三部作の完訳は、記念すべき文化的事業として高く評価したい。

ドストエフスキー著/亀山郁夫訳『カラマーゾフの兄弟』(Kindle光文社古典新訳文庫2006/9)*これまで米川正夫訳と江川卓訳を手にしてきたので、評判の新訳をキンドルで読み始めた。米川訳や原訳よりも確かに読みやすいが、個人的には一切の信仰とは無縁の人間なので、宗教が主題となる部分は今回もわかりづらい。キンドルは文字の大きさを8段階、行間を3段階に切り替えられるので、眼の調子や気分で本文レイアウトを変更できるので、気分転換になる。

ドストエフスキー著/江川卓訳『カラマーゾフの兄弟』(集英社世界文学全集1975/10)*亀山訳と比較するために書庫から引っ張りだしてきたもの、こちらも十分に平明な訳、新刊で出た頃は分かりやすさと全1巻がセールスポイントだった。

◎安斎育郎著『人はなぜ騙されるのか/非科学と科学する』(朝日文庫1998/12)*現代にはびこる様々な非合理的な事象を、具体的に取り上げ、軽い感じで論じたコラム集。文章が短いので深く納得するまでには至らないが、多種多様な事柄を集めてあるので興味は尽きない。