武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 1月第2週に手にした本(7〜13)

*14日の武蔵野は、珍しく朝から雪、湿って重いべっとりした雪が、あたりの風景を一変させた。成人式の日は、わりと荒れた天気になることが多い。若者たちを手荒く迎えるのは、天候だけにしてもらいたいものだ。

フレデリック・エブラール著/芹沢光治良細田直孝訳『愛と悲しみの間』(角川書店1958/10)*この著者の作品は、フランスでは20作以上出版されて人気があるのに、この国では本作のほか「プロヴァンスの秘密」しか紹介されていない。派手ではないが繊細で機知に富んだ文体は実にフランス的、もっと紹介されていい作家である。本作では夫への不信に揺らぐ女性の心理が、鮮やかな情景描写とともに、彩り豊かな情感を込めて描かれ見事、翻訳の日本語もすっきりして美しい。

荒俣宏著『稀書自慢 紙の極楽』(中央公論社1991/9)*著者のビブリオマニアぶりが気に入ったので、同傾向の1作目を手にした。なんとか字が読めるようになった小学生の頃からの愛書をめぐる回顧録。ほぼ同世代なので、時代の雰囲気が懐かしい。ただ、この時代、生まれ育った場所によって相当の違いがあった。マスメディアが発達してこういう愉しみの味が薄くなった。

ドストエフスキー著/亀山郁夫訳『カラマーゾフの兄弟』(Kindle光文社古典新訳文庫2006/9)*動きの少なかった1部2部が終わって、急に物語が動き出す。ドストエフスキーの登場人物たちの何とも多弁なこと、対話のシーンで、相手方もよく話を聞いていると、奇妙なところに感心したりしながら、古き良きロシアの物語に付き合っている。

◎河田党編著代表『日本幼虫図鑑』(北隆館1959/7)*日本で見られる幼虫約2000種から代表的なものを1700種選び、緻密な図版及びモノクロ写真に詳細な説明をつけた本格的な幼虫図鑑。図版が鮮明なので、生き物の意匠の多様性にふれてみるだけでも、手にとって見る価値がある。このところAmazonで驚くほど安く買える。

◎編集工房球編『レコードマップ+CD'09〜'10』(学陽書房2009/4)*20年以上続いていた中古レコード店のガイドが、終刊号を出したそうなので、少し古い号を安く入手した。まだ現役だった頃、CDが高かったので、このシリーズを頼りに中古CDを半額以下で随分買った。終刊号が出るということは、若い人は今では中古CDなど買わなくなったのだろうか。古い物の中には、膨大な過去が宝物のように埋もれていることに気づいて欲しい。。