武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 2月第1週に手にした本(4〜10)

*風のない天気が良い日に、武蔵野の雑木林の手入れに行ってきた。余分な常緑樹を切り払って、枝葉を片付けていた時、視界を青い羽ばたきが横切った。オスのルリビタキが林の中で作業をしている人影を見つけて様子を見に来た。先月の作業の時に来たのと同じ個体だろう。しばらく周りを飛び回って、そのうちにいなくなった。鮮やかな背中の青い輝きが眼に残っている。

丸谷才一著『快楽としての読書/日本編』(ちくま文庫2012/4)*昨年秋に亡くなった丸谷才一氏の書評名作選、思わず唸りたくなるほど達者な書評が、多数収録されており、まとめて読むと褒め上手だった著者の、達者な技巧に改めて感心させられた。良い書評集を読むと、読みたい本がさらに増えて困る。

橘玲著『永遠の旅行者(上)(下)』(幻冬舎文庫2008/8)*同じ著者の1作目が面白かったのでこの2作目を手にした。20億の資産を息子ではなく孫に全部相続させて国に一円も税金を収めたくないと言う依頼を受けた元弁護士が主人公、税金と金融に関する情報を巧みに織り交ぜたミステリィ仕立ての冒険譚。1作目に漂っていた虚無感が薄らいで、重さが減った分物語の展開がはやくなり、一層生活感が希薄になった。この作者にとって、次回作が作家として勝負の山になる気がする、期待して待とう。

ディケンズ著/中野好夫訳『デェヴィッド・コパフィールド(1) 』(新潮世界文学全集1963/4)*古い文学全集の一部だと、ビクリするほど安い。このディケンズの自伝色の濃い教養小説も、昔読んだものの再読。若い時には気にもとめなかったビクトリア時代のイギリスの風俗描写が、古色蒼然として興味深い。ディケンズケレン味たっぷりの文体も愉しい。中野好夫の名訳の一つだろう。

◎谷口雅男著『ふるほん文庫やさんの奇跡』(新潮OH!文庫2001/12)*文庫専門の古本屋と図書館に取り組んでいる著者の自伝的長編エッセイ。以前、紀田順一郎氏との共著を見て、この国の文庫と言う出版メディアの広がりに感心したことがあったが、この著者はその文庫だけに焦点を絞ってビジネスを展開しようとして奮闘している。エネルギッシュな文体と活動に思わず引き込まれるような迫力がある。

◎クレア・キップス著/梨木香歩訳『ある小さなスズメの記録』(文芸春秋2010/11)*この話は以前に大久保康雄訳の「小雀物語」として当ブログで紹介したことがあるので、内容には触れない。http://d.hatena.ne.jp/toumeioj3/20090422
今回で二度目、梨木さんの訳は、スッキリして読みやすく、一羽の子スズメを巡る情感あふれる話に再び引き込まれてしまった。