武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 1月第1週に手にした本(2〜8)

*情けないことに書庫にあることを忘れて同じ本を買ったり、読んだことすら忘れて図書館に予約を入れたりするようになってきた。読んだり読みかけたりした本を備忘録としてメモ、週1で更新しています。

山村修著『花のほかには松ばかり―謡曲を読む愉しみ』(檜書店2006/8)*書評の達人狐さんの最後の著作、謡曲の台本を読み物として愉しむ提案、この人の読み方は、テキストを実際以上に面白く読み込むところが、長所であり短所、凡人が読むとさして面白くないテキストもある。謡曲が読み物として面白いかどうかは、人によるのではないか、私には他に面白い者がいっぱいありすぎる。
◎ヴィカス・スワラップ著子安亜弥訳『ぼくと1ルピーの神様』(ダンダムハウス講談社文庫2009/2)*映画スラムドッグ&ミリオネアの原作、映画も素晴らしかったが、この原作も文句なしの傑作、インド社会が抱える諸々の矛盾を見事に物語に変換している。連作短編集の構成がこれほど巧みに活かされた物語も珍しい。インドの混沌が生み出した稀代の物語作家の誕生、次作を読みたい。
殿山泰司著『三文役者あなきい伝(1)(2) 』(ちくま文庫1995/1)*今は亡き個性派俳優、殿山泰司さんの話を聞いているような不思議な文体で綴られた自由奔放な自伝、独特の語り口について行けるかどうかで評価が分かれよう。
山田孝雄著『櫻史』(講談社学術文庫1990/3)*ずっと気になっていたこの本が105円で手に入った。上古から現代まで、この国の桜にかかわる文献を蒐集しまとめた名著、桜の季節になったら改めてじっくり読みたい。
ドミニク・ラピエール著長谷泰訳『歓喜の街カルカッタ(上)(下) 』(河出文庫1992/4)*カルカッタの世界最大のスラム街に取材したノンフィクション、果てしのない貧困の中に暮らすインド人から人間の何たるかを学ぶ欧米インテリの生き方を辿る、もう一つの「インドで考えたこと」、インド好きにお勧め。
関口良雄著『昔日の客』(夏葉社2010/10)*著名な古書店山王書房の店主の随筆集、稀覯本が復刊されたので取り寄せてみた、古書店古書店として文化的価値を発揮していた古き良き時代の回想録、小春日和の窓際でほのぼのなりながら読むのに最適の書、著者の人柄が行間から漂うしみじみ読書用の好著。
森下典子著『日日是好日―「お茶」が教えてくれた15の幸せ』*茶道に疎い人でもしみじみと茶道の良いところを読み物として楽しめる好著、森下さんの筆運びの冴えを楽しむ本かな。
スーザン・ジョージ著小南祐一郎/谷口真里子『なぜ世界の半分が飢えるのか―食糧危機の構造』(朝日新聞社1980/3)*30年以上前の本、部分的に古くなった部分もあるが基本的な地球の食の構造は変わっていないので、今でも充分に耳を傾ける値打ちがある。ダイエットに関心があるなら、こういう本を読んで視野を広めつつ摂取量の削減に取り組んでみるのも面白い。
西條八十著『西條八十全集2詩Ⅱ』(国書刊行会2005/11)*西條八十純粋詩2巻目、「一握の玻璃」「石卵」拾遺などをまとめたもの。多才な表現者だったが、詩人としてはやや中途半端なままだった。第一詩集「砂金」の清々しさがベストか。