新刊本に距離を置いた1年だった(反省)
12月も上旬を過ぎると、いろいろなメディアでその年1年の回顧記事が出始める。一つの区切りとして、そんな記事を楽しみにしている。今週に入って、読売と朝日が文学作品の回顧記事を載せた。記事の中に、時評を担当した方が選んだ今年のベスト3があり、眼を通して愕然とした。
朝日も読売もどちらも、1冊も読んだ本がなかった。新刊書店で眼にはしていたが、買うまでに至らずそのままになっていた。これはもしかすると、リタイアして現在進行形の文芸に興味を失ってしまった、老化現象かもしれないと思い、少なからぬショックを受けた。
引用して記憶にとどめ、図書館あたりで借りて、手に取ってみようと言う気になった。皆さんは、何冊お読みになっただろうか。
[読売新聞]5氏が選んだベスト3
●池田雄一(文芸評論家)/・津村記久子『カソウスキの行方』(講談社)/・諏訪哲史『りすん』(講談社)/・村田沙耶香『ギンイロノウタ』(新潮社)
●石原千秋(早稲田大学教授)/・楊逸『時が滲む朝』(文芸春秋)/・喜多ふあり『けちゃっぷ』(河出書房新社)/ ・青木淳悟「このあいだ東京でね」(新潮9月号)
●川村湊(文芸評論家)/・平野啓一郎『決壊』(新潮社)/・飯嶋和一『出星前夜』(小学館)/・津島佑子『あまりに野蛮な』(講談社)
●斎藤美奈子(文芸評論家)/・古川日出男『聖家族』(集英社)/・桐野夏生『東京島』(新潮社)/・町田康『宿屋めぐり』(講談社)
●沼野充義(東京大学教授)/・黒川創『かもめの日』(新潮社)/・楊逸『時が滲む朝』(文芸春秋)/・川上未映子『乳と卵』(文芸春秋)[朝日新聞]〈私の3点〉
●北上次郎 文芸評論家/▽志水辰夫『みのたけの春』(集英社)/▽中田永一『百瀬、こっちを向いて。』(祥伝社)/▽打海文三『覇者と覇者』(角川書店)
●小池昌代 詩人・作家/▽清水眞砂子『青春の終わった日』(洋泉社)/▽水村美苗『日本語が亡(ほろ)びるとき』(筑摩書房)/▽佐野洋子『シズコさん』(新潮社)
●斎藤美奈子 文芸評論家/▽古川日出男『聖家族』(集英社)/▽桐野夏生『東京島』(新潮社)/▽町田康『宿屋めぐり』(講談社)
●津島佑子 作家/▽リービ英雄『延安』(岩波書店)、『仮の水』(講談社/▽町田康『宿屋めぐり』/▽小池昌代『ことば汁』(中央公論新社)
●沼野充義 ロシア文学者/▽黒川創『かもめの日』(新潮社)/▽水村美苗『日本語が亡びるとき』/▽今福龍太『群島―世界論』(岩波書店)
●松浦寿輝 作家・詩人・仏文学者/▽町田康『宿屋めぐり』/▽安藤礼二『光の曼陀羅(まんだら)』(講談社)/▽高貝弘也『子葉声韻』(思潮社)