武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

2008-01-01から1年間の記事一覧

 深まる武蔵野の秋

久しぶりにカメラを持って、自宅近くの農道を歩いてきた。近くの公園を横切り、北に向かうと都市近郊型の農家の野菜畑が一面に広がっている。特産の里芋畑は枯れた色を見せ、収穫待ちの畑と、既に収穫を終えた畑のどちらか。秋の情景が広がっている。ちなみ…

 『日本出版文化史』 岡野他家夫著 (発行原書房1981/1/31)

貸本文化について調べていて、背景の出版文化史が気になって、この「日本出版文化史」にめぐり会った。600ページを超える大部な本だが、記述が資料に基づき具体的で、年表を上段に配置して、下段の三分の二を本文の記述にあてたレイアウトなので、非常に読み…

『貸本マンガRETURNS 』貸本マンガ史研究会 編・著 (発行ポプラ社2006/03)

今日は貸本屋シリーズの最終回、子どもの頃身近に体験した<貸本マンガ>の時代について。このジャンルを丹念に調べている「貸本マンガ史研究会」というグループがまとめた一冊にたどりついた。全編、貸本マンガへのノスタルジーと愛着に満ちた素晴らしい本…

 『近世貸本屋の研究』 長友千代治著 (発行東京堂出版1982/5/30)

諸外国にも貸本屋が普及した時代があったことがわかったので次に、この国の貸本屋の歴史がどうなっているか調べるのに、格好の本があったので紹介しよう。「近世貸本屋の研究」がそれ、あまり研究がすすんでいない領域でもあり類書に乏しいので、まずこの本…

 『イギリスの貸本文化』 清水一嘉著 (発行図書出版社1994/3/31)

少年期のノスタルジーに後押しされて貸本屋について調べているうちに、意外にも貸本業が世界的な広がりを持つ文化現象であり、大衆文化の歴史の一時代を画す出来事であったことが分かってきた。公的私的両方の教育が普及し人々の識字率が向上、民衆の生活に…

 『日本古代文学史(初版)』 西郷信綱著 (岩波全書1951/10/15第1刷)

また一人、戦後のわが国をリードした存在感のある識者が亡くなった。国文学の世界では主流ではなかったかもしれないが、古典を学ぼうとする多くの若者たちを引きつけ強い影響を与えずにおかなかった国文学の改革者、西郷信綱氏が9月25日92歳で逝去された。 …

 中禅寺湖の紅葉

テレビや新聞で奥日光の中禅寺湖周辺の紅葉が、今年は特に見事だとのニュースに誘われて、晴天続きの天気予報をあてにして、中禅寺湖に二泊のキャンプに行ってきた。これが今年の最後のキャンプになるかもしれない。 金精トンネルの方から奥日光に向かったが…

 『ぼくらの時代には貸本屋があった−戦後大衆小説考』 菊池仁著(発行新人物往来社2008/8/5)

近所の新刊本屋をのぞいていて、<貸本屋>の一言にひかれて手にとった。副題の<戦後大衆小説考>も気になった。奥付けを見ると、著者は1944年横浜生まれとある。ほぼ同世代の大衆小説好きの、活字中毒患者とみた。 特に読みたかったのは、第一章の<貸本屋…

 『ミッシャ・マイスキー・ソロ・コンサート』(所沢市民文化センター ミューズ・アークホール)

2000人以上は入ると言う触れ込みの大ホールの明かりが絞られると、ステージの前方中央に置いてある、背もたれにチェロをデザインした洒落た椅子に、豊かな白髪を肩よりも長く伸ばしたマイスキーだけが一人、チェロを膝の間に置き、弾き始めた。豊かな音量が…

 『鳥が教えてくれた空』 三宮麻由子著 (発行NHKライブラリー2002/2)

まず本書の「感性の夜明け」というエッセイから著者の言葉を引用させていただく。 私は眼圧を下げる手術により、四歳で全盲になった。文字どおり一日にして光を失ったのだ。一年近い入院の間、数回の手術が施されたが視力は回復しなかった。 このような境遇…

 4種のハバネロ入り調味料レシピ

前にも報告したが、菜園で栽培しているハバネロが予想以上に激辛だったので、そのままでは料理に使えそうもない。素晴らしくフルーティな香りと辛さを何とか使いこなしたくて、いろいろ調べたり工夫したりして、香りと辛味を調味料に抽出して適量を使うとい…

 『インターネット図書館 青空文庫』 野口英司編著(発行はる書房2005/11)

快適にPCで読書するにはどうしたらいいか。10年近く工夫を重ねてきた。経年劣化で茶色くなった古い文庫のびっしり詰め込まれた小さな活字を見ると、処分するしかないなという気になる。公平な比較とはいえないが、そんな古い文庫に比べると、好みのテキス…

 『のはらうたⅠ』 工藤直子著 (発行童話屋1984/5)

装丁、レイアウト、本文レイアウト、内容の構想、内容そのものなどなど、1冊の詩集を構成するすべての条件において、これほどバランスよく作られた本を他に知らない。小型の本なので児童書のコーナーに並んでいると全く目立たないが、おそらく子ども達には到…

 『紙芝居昭和史』 加太こうじ著 (発行旺文社文庫1979/10)

今は亡き父や母は紙芝居を嫌っていたようだが、私は好きだった。近所に紙芝居屋さんが来ると、商売の駄菓子を買う小遣いをもらえない私は、皆から少し離れて紙芝居を見ていた。聞き取りにくいので耳を澄まして、集中力を尖らせて必死でストーリーを追い絵に…

 武蔵野の彼岸花はそろそろ見納め

今、武蔵野は季節の変わり目、北風の吹く日と雨の降る日が多くなり、ぐんぐん気温が下がってきた。昨夜など、うっかり夏掛けで寝たら寒くて夜中に目が覚めてしまい、あわてて毛布を追加した。 今日も朝から弱い雨が降っていたが、小止みになったので写しそび…

 信頼できる家庭用医学情報・メルクマニュアル医学百科

体調がいい時は気にならないが、身近な人や家族または自分の身体のどこかが具合悪くなると、病気や怪我の症状について出来るだけ詳しくて確かな情報がほしくなる。注目されてきているセカンド・オピニオンの活用などもその現れ、医療制度への不信も影を射す…

 『東洋文庫ガイドブック2』平凡社東洋文庫編集部編(発行平凡社2006/5)

大きな書店か図書館でしかお目にかかれない東洋文庫だが、新刊はもとより通常の文庫でも読めない貴重な資料が、たっぷりと集積された壮大な文献の山脈、常に欧米が科学や文明の中心だと思い込んでいる人には縁の薄い叢書かもしれないが、広く偏りなく世界を…

 再開、航空公園の朝の散歩

9月中旬ころから、武蔵野の朝晩の気温が涼しくなってきたので、朝の散歩を再開した。真夏の頃は、歩いていると汗が吹き出し、べとべとして不快だったので近所を軽く回るだけにしていたのだが、この頃は、車で公園の駐車場まで移動して、1時間近く公園の中を…

ETC割引という高速道路利用者にとってのオイシイ情報

先日、気の合った仲間とちょっとしたドライブに行った。その折、高速道路を利用したのだが、ガイド役を引き受けてくれた方が、高速道路のETC割引を計算に入れたプランを立ててくれた。諸物価値上がりの折、驚くほどの割引率が期待できることが分かり、調べて…

 信州川上村で見かけた草花

昨日の川上村紀行の続き、朝、友人の別荘の近くを散歩している時に見かけた草花、昨夜までの雨で山野の緑が一段と鮮やかに朝の光に輝いていた。私は子どもの頃から、朝露や水滴が草花やクモの巣についてきらきらしているのが大好き、今回も、そういう情景に…

 信州川上村の初秋

気の置けない仲間と誘い合わせて、仲間の一人が所有する長野県の川上村にある別荘へ、泊まりがけのグループ旅行に行ってきた。温泉有り宴会ありの、楽しいロングドライブだった。早朝、別荘オーナーの案内で周辺を散歩、山の中腹から見た秋晴れの空が、久し…

『13歳のハローワーク』 村上龍著 (発行幻冬舎2003/12)

村上龍の「半島を出よ」が面白かったので、図書館の児童書のコーナーで「13歳のハローワーク」を借りてきた。手にとってレイアウトとイラストが素晴らしいのに感心した。こういう本が値段が高くてもミリオンセラーになるのか、と納得した。気づいたことを列…

 『石川岩男のたのしいツーリング入門・旅ゆくライダーのために』 石川岩男著 (発行交通タイムス社1983/6)

我が家の子ども達がある程度大きくなり、休日にオートバイを押し出し、ツーリングにでも出かけてみようかと思いだした時期、本屋で何気なく手にした一冊。表紙をめくって吃驚、そこにあったものは著者の遺影と編集部の追悼文。「たのしいツーリング入門」の…

 近世の畸人、滝野瓢水という人物

日文研のデータベースの「近世畸人伝(正・続)」から「滝野瓢水(たきのひょうすい)」という人物のデータを拾い出してみよう。 播磨加古郡別府村の人、滝野新之丞、剃髪して自得といふ。 富春斎瓢水は俳諧に称ふる所なり。 千石船七艘もてるほどの豪富なれ…

 『半島を出よ(上)(下)』 村上龍著 (発行幻冬舎2005/3)

数年前に大変評判になりベストセラーになっていたので、お読みになった方も多いだろうが、最近古書店の105円コーナーに並んでいるのを見つけ読んでみた。一読、もっと早い時期に読んでおけばよかったという思いがした。素晴らしく面白いうえに、いろいろ考え…

 武蔵野の片隅で育てる唐辛子

仲間と一緒に借りている畑に5月頃、「島唐辛子」と「ハバネロ」の苗を植えたのが、何本か無事に成長し、やっと収穫できるようになってきた。いつ頃からか、辛いものが好きになり、食卓にいつも辛い物を欠かさずに置くようになった。辛い物好きがついに栽培…

 地面に寝ることの快楽

キャンプの魅力について考えてみるに、辿り着いた一つの結論が、地べたに寝ることの気持ち良さではないかということ。グランドシートと薄いマットそして寝袋を隔てただけで、そのすぐ下が地面、そこが草地なら草の感触、石ころがあれば身体のどこかに当たり…

 奥日光キャンプの印象

天気予報が全国的な秋晴れを予想していたので、9日から4日間、奥日光の中禅寺湖の畔にキャンプに行ってきた。予報通りの天気で、真っ青に晴れ渡った高原の初秋を満喫した。 中禅寺湖に流れ込む川が全部でいくつあるか知らないけれど、キャンプ場の周りには…

 藤本和子さんの文章がたっぷり読めるサイト【水牛の本棚】

「アメリカの鱒釣り」の翻訳で有名な、作家で翻訳家の藤本和子さんの素晴らしい文章が、いっぱい読めるサイトに出会ったので紹介したい。 私は、藤本さんの翻訳も、オリジナルの作品もどちらも好きだが、一番好きなのは、藤本さんの本の最後に付けられた<あ…

 岩合光昭写真展(美しき地球に息づくものたち)印象記

一昨日、近くで動物写真家の岩合光昭さんの写真展をやっているので、見に行ってきた。日程の終了間際、しかも週日の昼間だったせいか会場は空いていて、ゆっくり鑑賞できた。 (画像は、入場券の半分に印刷してあったホッキョクグマのお花畑でくつろぐ一瞬、…