武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 『ミッシャ・マイスキー・ソロ・コンサート』(所沢市民文化センター ミューズ・アークホール)

 2000人以上は入ると言う触れ込みの大ホールの明かりが絞られると、ステージの前方中央に置いてある、背もたれにチェロをデザインした洒落た椅子に、豊かな白髪を肩よりも長く伸ばしたマイスキーだけが一人、チェロを膝の間に置き、弾き始めた。豊かな音量が、大ホール全体に伸び広がってゆく。柔らかい良い音だった。
 切れのある演奏でもないし、端正な演奏でもない。振幅の大きなうねりをつくり、感情豊かに訴えかけるような演奏。きっちりと構成された組曲を、ロマン派風に崩してアクセントをつけて、ドラマチックに聴かせてくれた、ワクワクしながらとても気持ちよく楽しんで聴いた。
 特に3番目に弾いた<無伴奏チェロ組曲第5番 ハ短調>の表情豊かな演奏は、他では聴いたことのない、情感のこもった表情豊かな演奏だった。コブシを利かせたようなうねりのあるマイスキーの弾き方に引き込まれ、バッハ作曲であることを忘れたほど。マイスキーには短調がよく似合う、60歳にしてあの元気とあの気持の入れ込みようは立派、良いものを聴かせてもらった。 (画像は当日配布のチラシの中に入っていたコンサートの宣伝用チラシをチョイと加工したもの)
 今日の曲目は以下の通り。

J.S. バッハ:①無伴奏チェロ組曲第1番 ト長調 、②無伴奏チェロ組曲第3番 ハ長調 、③無伴奏チェロ組曲第5番 ハ短調、④アンコールは無伴奏チェロ組曲第2番のプレリュードとサラバンド

 演奏がとても個性的だったせいか、家に帰って、ヨーヨーマの無伴奏を聴き直してみたくなった。