武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 『東洋文庫ガイドブック2』平凡社東洋文庫編集部編(発行平凡社2006/5)

 大きな書店か図書館でしかお目にかかれない東洋文庫だが、新刊はもとより通常の文庫でも読めない貴重な資料が、たっぷりと集積された壮大な文献の山脈、常に欧米が科学や文明の中心だと思い込んでいる人には縁の薄い叢書かもしれないが、広く偏りなく世界を知るためには掛替えのない書物の宝庫。
 どんなに褒めても褒めすぎとはいえないと思う程、この叢書はエライ(笑)。経営的に見て短期的には絶望的なほど儲からないと素人でもわかる読み手の少なそうな書物群(御免)、こういう地道な出版物がその国の文化の奥行きを支えるような気がする、現在778冊(今年の9月の時点で)まで冊数を充実させてきている。この「東洋文庫ガイドブック2」には、その750部が、簡潔な解説付きでガイドされているので時間がある時、ちらちらと眺めてみるといい、知的好奇心を確実に快く刺激してくれるに違いない。
 この本の前3分の2は、東洋文庫にかかわる気楽に読める対談やエッセイが並んでいる。本当にいろいろな東洋文庫の利用法というか、楽しみ方があるものだと感心する好読み物。知性と才気にあふれる方々のレビューのようなものなので、思わずニンマリさせられる洒落た名文が多い。東洋文庫の魅力を語りたい<東洋文庫ファン>は、いろんなところにいらっしゃることに吃驚。東洋文庫を好む人には、一癖ある人が多いという気がしなくもない(笑)。
 文庫全体の概要を一言で言うと、アジア・東洋の古典を日本語ですらすら読めるようにした文献集。
①私が感じる東洋文庫の最大の魅力は、とにかく読みやすいこと、必要最小限につけてあるルビが程良く、この国の相当に読みにくいはずの古典が原文通りにすらすら読める。ほかの文庫などよりも私にとっては、これが一番読みやすい。おかげで、これまで随分とお世話になった。
②付いている解説文が、他の文庫では考えられないほど詳しく充実している。一部の岩波文庫を除いては、東洋文庫の解説に及ぶものは見当たらない。それだけでも立派に読み物として通用する解説が多い。その他にも索引が充実しているなど、文献として使いやすいように工夫されているなど、出版物として随所に良心的な仕事ぶりが光る。1か月に1冊のペースで着実に増え続けていることにも感心。

 この東洋文庫電子書籍としてPCでも全部読めるようになっていることをご存じだろうか。。これは嬉しい。この<東洋文庫ガイドブック>の解説目録が無料でダウンロードできる。私は、電子書籍で読むのも好きなので、このサービスは大歓迎。値段は本のおよそ半額、これを高いと思うか安いと思うかは人にもよると思うが、私は高すぎるとは思わない。買うか、図書館で借りるか、電子書籍か、読みでのある本が多いので迷いが出るところかも知れない。電子書籍の長所は、ページのサイズを読みやすい大きさに拡大して読めること、高齢者にとってこれは朗報かもしれない。
 電子書籍のサービスを提供しているイーブックジャパンに登録するのは無料なので、まず登録して解説目録を入手してみてはいかがだろうか。そして興味がわいたら、3つのどれかを選んでみる。初めての方なら、きっと新たな宝庫を探りあてたという気がするにちがいない。イーブック・ジャパンの平凡社東洋文庫のサイトは、以下のURLをクリックしてみて。
http://www.ebookjapan.jp/shop/genre.asp?genreid=10002