武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 11月第1週に手にした本(29〜04)

*11月の声を聞くと、気圧配置が冬型になる日が出現したりしてみるみる寒くなりだした。武蔵野も11月は冬と心得て、住まいも身なりも調えた方がいい。今週はちょっと体調を崩してしまった。平地でも、気の早い木々は紅葉が進み、落ち葉になって降ってくる。夜が長くなり読書にはもってこいの季節になってきた。

◎蒲松齢著/柴田天馬訳『完訳 聊斎志異〈第1〜4巻〉 』(角川文庫改版1969/2)*聊斎志異を中学時代に読んで嵌ったという人は多い。私も中学生の時に初めて手にした。角川文庫の元版は55年に出ているので、私の中学生時代と一致するが文庫だったかどうかはっきりしない。柴田天馬氏の訳の素晴らしさには全く気づかなかったが、物語の妖しい展開に魅了されたことは覚えている。全部読んだという記憶はないので、膨大な物語の途中で気が変わったのかもしれない。先日、ちくま文庫聊斎志異を読み、再びその面白さに目覚め、ネットで安く入手した。ところが、ちくまの玄文社版再版と比べると、訳文が現代仮名に改訂されておりもの足りない。また現代仮名の味気なさにぶつかってしまった。

椎名誠/編集人『本の雑誌2003年分9冊』(本の雑誌社2003/1〜12)*本の雑誌のバックナンバー読みも、これで6年分、さすがにチト飽きてきた。雑誌は毎月発行されたのを読むのが常道、今回のようにバックナンバーを一気に読むのは特殊、面白そうな本にたくさん出会えたのと、<本の雑誌ゾーン>とでも呼びたくなる独特の出版物群を生み出す動力源の役割を果たしてきたことが再確認できた。
未読王著『未読王購書日記』(本の雑誌社2003/2)*本文を読むと勤め人なのだろうが、ひたすら本を購入することに情熱を傾けている人の日記、本の雑誌に連載され、評判が良かったので単行本にしたのだろうが、読みだして最初は面白かったけれど、延々と本を買い漁る話の連続なので、途中で飽きてしまった。本好きなら誰もが持ているバイヤーの部分を極端に肥大化させたようなこの著者の生き方にはついて行けなかった。脱帽。本買いのテクニックがいたるところに出てきナルホドと感心したが、とても真似できない。自分が単なる本好きでしかなかったことに何故かホッとした。
横田順彌著『探書記』(本の雑誌社1992/12)*ユーモアSF作家にして古典SF随筆家による古書探求をベースにした書物随筆集。古書あさりの一喜一憂が、面白おかしく書かれていて、クスっとなったり身につまされたり。書物の世界がいかに奥深いか、過去100年間に書かれた本の世界に迷いこむだけで、そこはほとんど迷宮のようになる。200年とはばを広げると、もはや手に負えない。この本は、本の愉しみの果てしの無さに気づかせてくれる。

イザベラ・バード著/金坂清則編訳『イザベラ・バード極東の旅1』(東洋文庫2005/6)*明治初期の頃の婦人旅行家が残した極東の写真集、<中国写真集>と<極東の風景>の2分構成。日本の風景が11枚含まれている。中国写真集の方は、撮影者のコメント付きなので分かりやすく一層興味深い。極東の風景の方は、コメントがないので、手がかりに乏しく、見ていても感興が浅くなってしまい残念。どんな写真も100年経てば、貴重な映像資料になるということに改めて気がついた。