武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 11月第4週に手にした本(19〜25)

*武蔵野の平地の紅葉が、今年はひときわ美しい。毎日の散歩でも、一日一日紅葉の進展が鮮やかで、今日はどんな様子かなと、新鮮な気分が味わえる。同じ種類でも育っている場所によって違いがあり、色も違えば進み具合も違う。もう冬木のように骨組みだけになったのやら、今を盛りと発色しているのやら、場所によってかなり違いがある。今週、駐車場に置いてある車のフロントガラスに、初めてびっしりと霜が張り付いた。これからしばらくは、朝の霜取りが、散歩の準備体操になりそうだ。

目加田誠著『洛神の賦』(武蔵野書院1966/11)*先週からこの著者の随筆と中国文学関連のエッセイが興味深くて、手頃な価格ものを何冊か手にしてきている。60歳を過ぎるこの著作あたりから、文章の味わいが増してきたような気がする。繰り返し読みたくなるいい随筆が並んでいる。
目加田誠著『春歌秋月』(時事通信社1992/8)*亡くなられる2年前の最晩年の、おそらく最後の随筆集、80代後半の頃の文章、身辺雑記のたぐいには枯れた感じはあるが、専門の中国文学を話題にした文章には勢いがある。
目加田誠著『新釈詩経』(岩波新書1954/1)*この著者の中国文学研究の主軸をなす詩経研究の成果をやさしく紹介した啓蒙書、この国の万葉集に近い素朴な味わいの詩篇がほほえましかった。この頃の文庫や新書に使われていた紙質は、手触りも耐久性も、今では考えられないほど優れている。製紙工程の近代化で失ったものは小さくない。

奥野信太郎著『中国随筆集』(慶応義塾大学出版会1998/3)*この著者も明治生まれの中国文学者、広く知られた随筆の名手。柴田天馬訳聊斎志異の支持者の一人として、改めて手にした。こなれた筆致の興味深い随筆が目白押し。

今野真二著『振仮名の歴史』(集英社新書2009/7)*振仮名を主題にして書かれた初めての本と言うのが触れ込み、著者の<読み方としての振仮名>から<表現としての振仮名>という考え方はすっきりしている。振仮名についての多様な情報がうまく整理されていて読みやすい。類書を見かけないない良書。

◎「五重塔のはなし」編集委員会編著『五重塔のはなし』(建築資料研究社2010/8)*建造物としての五重塔について知りたくて、数冊手にした数冊の中で、最もわかりやすかった。ほとんどの内容が、Q&Aの形式で記述されており、興味のあるどこからでも拾い読みすることができる。図像と図解を多用した説明はとても分かりやすく、他の解説書が霞んでしまうほどよくできている、良書である。