武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 1月第4週に手にした本(23〜29)

*情けないことに書庫にあることを忘れて同じ本を買ったり、読んだことすら忘れて図書館に予約を入れたりするようになってきた。読んだり読みかけたりした本を備忘録としてメモ、週1で更新しています。(今週もたくさんの本を手にしたが全部読了できたわけではありません。)

◎野澤延行著『ネコと暮らせば/下町獣医の育猫手帖』(集英社新書2004/6)*獣医と愛猫家との二つの視点から猫について語った猫読本、第四章に「野良猫とのつきあい方」という珍しい章がある。猫の本質的な生き方は、野良猫暮らしだと思っているので本書を手にした。抑制の効いた文体の奥から、著者の猫に対する思いがふつふつと伝わって来る良書。獣医さんの本らしく、猫の健康問題と猫の家庭医学の章が非常に詳しい、猫好きに勧めたい。
田中長徳著『考えるピント/クラシックカメラ実用入門』(岩波アクティブ新書2002/9)*3500台のクラシックカメラを所有すると豪語する筆者は、歴史遺物としてクラシックカメラをあつかうコレクターになることを拒み、どんなに古いカメラであってもカメラとしての実用性に拘るという姿勢を取ろうとする。第二部のシチュエーション別撮影術にこめられた情熱が、新鮮な説得力を持つ。あまりに便利になりすぎたデジタルカメラへの依存が、撮影技術と撮影能力を退化させていると言う指摘は 分かる気がする。
谷川俊太郎著『詩の本』(集英社2009/9)*比較的新しい谷川俊太郎さんの詩集、本の形で詩集を作ることをそれとなく意識して、こういう題名にしたらしい。衰えを知らないかのような鮮明なフレーズに年齢が付加した慈しみのある奥行きを感じた、珠玉の言葉を眩しく読んだ。
植村直己著『植村直己/妻への手紙』(文春新書2002/10)*今は亡き冒険家が奥さんに送った冒険先からの手紙。冒険の過酷さと残してきた公子さんへの心情がこもった貴重な心のドキュメンタリー。数々の冒険行の背後で植村直己が体験していた日々の葛藤が綴られており、植村の人間性が極めてリアルに体感出来た。
◎石井慎二著『すばらしき田舎暮らし/人間回復ガイドブック』(カッパブックス1983/2)*田舎暮らしの本格的なガイド、第2部に配置された5件の実践例が愉しい。別冊宝島の名編集長が書いた都会生活批判の書。30年前にでた名著、この本を超える田舎暮らし本はなかなか出ない。
向田邦子著『向田邦子全集第二巻』(文藝春秋1987/8)*著者の単行本4冊分をまとめた三巻全集の一冊、随筆集。作者の生き方が面白くないと面白い随筆は沢山は書けない、向田邦子さんはよっぽど楽しい人だったのだろう、物の見方が生き生きとしていて細部にわたる記憶力が鮮明、しかも文章の組み立てと展開が、気が利いていて切れ味抜群、何度読んでも気分良く読める。
谷川俊太郎・詩/伴田良輔・写真『mammaまんま』(徳間書店2011/1)*おっぱいの写真と その写真に添えられた ひらかなの3行詩によって構成された写真詩集、英語の翻訳が付いている。写真集としても詩集としても 少し中途半端だったかな。