武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

昨日の夕刊に気になる記事があった。ここ数年、教育現場では性教育の混乱と後退が起きていた。取り扱いが非常に難しいが、心の成長に極めて大事な性教育が、政治的なパフォーマンスの対象になってしまい、「不当な支配に屈しない」はずの教育の中立性が危機に瀕していた。今回の動きが、この国の性教育の現場にどのように作用するか、注目したい。白黒つける事柄ではないかもしれないが、白黒つけなければ先へ進めないこともある。以下、2紙を引用する。

養護学校長ら都教委提訴へ 「性教育行き過ぎ」処分で
朝日新聞2005年05月10日)

 「行き過ぎた性教育が行われている」との東京都議会での質疑をきっかけに、都教育委員会から降格処分や厳重注意を受けた都立七生養護学校(日野市)の校長や教師らが都と都教委、都議3人、問題を報道した産経新聞社を相手に「必要な教育ができなくなった」として総額約2670万円の損害賠償を求める訴訟を12日に東京地裁に起こす。元校長らは「一連の出来事は教育への不当介入だ」としている。

 代理人らによると、都議会での質疑後の03年7月、都教委と都議3人が同校を視察し、人形などの教材を没収した。産経新聞記者も同行し、「過激性教育」として報じた。視察後、校長が降格、教師13人も「不適切な性教育」を理由に厳重注意を受けた。

 同校では「こころとからだの学習」という、知的障害のある児童・生徒向けの性教育に力を入れ、障害児にも分かりやすいように内容や教材を工夫していたという。

損賠訴訟:「性教育教材没収は不当」 東京都教委を提訴へ−−日野の養護学校教員ら
毎日新聞 2005年5月11日)

 東京都立七生養護学校(日野市)が独自に実施していた性教育について、都教育委員会が「不適切だ」と教材を没収し、教員を処分したのは不当として、処分を受けた教員らが12日、教材の返還と損害賠償を求め、東京地裁に提訴する。教員らは「教育内容への介入は教育基本法10条に反し、処分も行政裁量を逸脱するものだ」と主張している。

 同校独自の性教育は、約半数の生徒が暮らす併設施設で99年、園生同士の性的な問題行動が起きたことを機に始まった。「問題が再発しないよう具体的で分かりやすい内容にしよう」と教員や保護者が共同で研究を重ねた。男女の体の違いなどを教えるため、性器の付いた人形を使ったり、頭から足、性器も含めて、体の部位を示しながら「からだうた」を歌わせたりする内容だった。

 これに対し、都教委は03年7月、教材を没収し、同年9月に「学習指導要領に沿っておらず不適切」として教職員13人を厳重注意処分にした。

 このため04年1月、保護者や支援者8000人余が東京弁護士会に人権救済の申し立てを行い、同弁護士会は今年1月、処分の撤回や性教育を以前の状態に戻すよう都教委に警告している。

 訴訟に加わる卒業生の保護者(55)は「知的障害児を性の被害者や加害者にしないためには具体的な教え方が必要で、ようやく学べる場ができたとうれしかった。早く元に戻してほしい」と訴えている。