住民が自らごみ山の実態調査し埼玉県へ要望書
4月の記事で少し古いが、仲間が苦労して調査したことが記事になったので紹介したい。私の住む埼玉県南の地域(西部地域と呼ばれている)は、東京に隣接しており東京で日々発生する大量の産業廃棄物が通過してゆく地域となっている。最終処分場へ運ばれる前段階の処理を受け持つ中小の中間処理施設がたくさん集まっている地域として、一部の人には良く知られている。しかし、何らかの理由で処理が滞った場合、日々大量に運び込まれるゴミは行き場を失い、たちまち巨大なごみ山が積みあがり、かなりの割合でごみ山はそのまま放置される。埼玉県全域の放置同然のごみ山の実態を自分の足で調査し、埼玉県に要望書を提出したことから生まれたのが以下の記事。
「ごみ山」対策、悩む県
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高さ約?㍍にまで積み上げられた産業廃棄物。山のようになり、雑草や立ち木も生えている=三芳町で
放置なら環境汚染、処理なら「捨て得」解体した家屋の廃材や廃プラスチックといった産業廃棄物を積み上げた「ごみ山」が、県内に少なくとも61カ所、計約74万立方メートルある。業者が逃亡するなど、責任追及が困難なケースが約6割を占め、撤去の動きは鈍い。放置し続けると環境汚染や崩落、蓄熱火災の危険もあるが、自治体が処理に乗り出せば業者の「捨て得」になりかねないジレンマもある。県の担当者らは「どこまで踏み込むべきか」と頭を悩ませている。(三島豊弘)
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三芳町上富の道路わきの約3300平方メートルの土地に、高さ約3300メートルの「山」がそびえる。通称「三芳富士」。山の表面には雑草や立ち木も生えている。中は廃プラスチックなどだ。
県や地元住民らによると、84年ごろから業者による産廃の野積みが始まった。焼却をほとんどしないまま、00年ごろまで搬入が続いたという。今では全体で約6万4千立方メートルと、県内でも最大級の「ごみ山」だ。
山に近づくと、硫黄のようなにおいが漂う。
「中で硫化水素が発生しているんです」。環境問題に取り組む住民団体「埼玉西部・土と水と空気をまもる会」事務局の森斌さん(60)が苦々しい表情を浮かべる。
同会の1月の調査では、山の北側頂上で危険水準とされる約1200ppmの硫化水素を検出。南側では地下50センチの温度が67度を記録し、森さんは「内部で材木などの発酵が進み、いつ発火してもおかしくない」と心配する。
県などによると、3千立方メートル以上の産業廃棄物のごみ山61カ所は、4年前に比べ12カ所減った。しかし、同会が2、3月に独自に調べたところ80カ所あり、「もっと多い可能性もある」と指摘する。
撤去は事業者の責任だが、県の把握しているごみ山の約6割は業者が倒産したり逃亡したりして連絡がつかない。県などが事業者に代わって撤去を代執行したのは3件。住宅地の中(久喜市)や、高速道路のわき(川口市)など「危険性が高い」と判断したケースに限られる。
問題は費用負担だ。産廃1立方メートルの撤去には最低1万円かかり、県内すべてのごみ山を処理すると、70億円以上になる計算になる。
事業者から徴収することは現実的には難しく、県廃棄物指導課は「税金での処理は『捨て得』になりかねない」と嘆く。
三芳町の「ごみ山」の事業者は事実上の倒産状態。県は昨年、代執行も検討したが、費用面の問題もあり見送った。硫化水素の流出などを防ぐため、3年前に土地の所有者が土をかけただけの状態が続く。
住民・行政の協力必要
ごみ山を作らせないため、県は七つの環境管理事務所や市町村、運送会社など業界団体と協力して、不法投棄を監視している。しかし、それにも限界がある。
同会は「解決には、住民と行政との協力が必要だ」として、調査結果に「住民参加による調査委員会の設置」「土地所有者への啓発」「ごみ山対策の条例策定」などの提言を添え、14日に上田清司知事に提出した。
同課は「住民との連携は重要」とした上で、「本来は事業者の責任で処理すべきこと。粘り強く指導していくしかない」と話している。
(朝日新聞4/18)