武蔵野日和下駄

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 都内の清掃工場の焼却炉、水銀のために操業停止についての懸念


 数日前に気がかりなニュースが新聞各紙に流れた。東京都内の清掃工場で、焼却ゴミに多量の水銀が混入、5焼却炉が操業停止に追い込まれているという。焼却炉の排ガス中の水銀濃度が1立方m当たり0.05mgを超えたのがその理由。 (画像は今回東京都から発表された清掃工場焼却炉の一覧)
 気がかりな理由は、水銀で都内の焼却炉の1割の稼働が停止しているからだけではない。この国には実は、焼却炉の排ガス中の水銀濃度を規制する法律がない。東京都の場合は、東京23区清掃一部事業組合の工場操業協定による自己規制値があるから、操業を停止できた。(この水銀の自己規制値がEU基準と同じ値であることは評価したい)
 多くの自治体では、国の規制がないために、排ガス中の重金属濃度は日常的に測定していないところが多く、例え水銀が検出されても操業を停止する理由にならないことになっている。この国では、焼却炉の排ガス中の重金属への警戒心は極めて低い。
 東京都のようなトラブルが、他の自治体で生じていないか、早急に全国調査した方が良いと思うが、その法的な根拠がないのである。私の今回のトラブルで危惧する最大の気がかりは、このこと。
 今回のトラブルをもっとも詳しく報じた東京新聞の記事を参考に引用しておこう。ネット上からは直に消えてしまうから。

都内清掃工場の5焼却炉停止 水銀ごみ持ち込まれ(2010年7月22日 07時18分)
 先月中旬から東京都内の複数の清掃工場に多量の水銀を含むごみが持ち込まれ、焼却による有害ガスの発生で焼却炉が相次いで停止。健康被害はないとされているが、東京二十三区内のごみ処理能力の一割がストップし、ごみの滞留量は危険レベルとされる九万トンに達していることが二十一日、分かった。
 東京二十三区清掃一部事務組合は、事業者が不正に有害ごみを排出した可能性があり、廃棄物処理法違反(不法投棄)の疑いで、警視庁に刑事告発することを検討している。
 同組合によると、先月十一日、足立清掃工場(足立区)2号炉で排ガス中の水銀濃度が自主基準の一立方メートル当たり○・○五ミリグラムを超えたため、運転を停止。今月一日には板橋工場(板橋区)の一炉、八日には光が丘工場(練馬区)の二炉、十八日には千歳工場(世田谷区)の一炉でも基準値を超え、停止した。
 板橋工場は安全が確認され、再稼働しているが、他の三工場四炉は現在も停止中。二十三区内にある二十工場四十炉(処理能力は一日計一万二千トン)のうち、十八日以来、一割を超える千二百五十トンの能力が失われた状態が続いている。
 二十三区で処理待ちのごみの量は九万トンで危険レベルとされている。今回のトラブルによる未処理分は、これまで近隣の工場に運ぶなどして対応してきた。しかし、二十日には処理待ちの量が約八万九千トン、二十一日には約九万トンとほぼ限界に達している。
 同組合は「年数回、基準値を超えることもあるが、これほど相次いだことはない。持ち込まれた水銀量は家庭ごみから排出されたと考えるにはあまりにも多い」と話している。(東京新聞


 ちなみにEUにおける焼却炉の重金属類の排ガス規制値は、右表のようになっている。水俣病を経験していないのに、重金属類の健康影響に対していかに慎重か、参考にしてほしい。(環境総合研究所の池田こみちさんの資料より)