武蔵野日和下駄

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 再生採石のアスベスト混入問題−東京新聞のスクープとその後

 先月の中頃に、建築廃材のリサイクル品、再生採石のアスベスト混入問題を東京新聞がスクープ、その後の報道でも他紙よりも先んじて関連記事を掲載、この問題を深く掘り下げようとする姿勢がなかなか素晴らしい。他紙しか読まない人は知らないと思うので、消えてしまう前に引用して残しておきたい。
①この記事は一面トップを飾るスクープだった。

再生砕石にアスベスト 駐車場、工事現場で利用(東京新聞8/18)
 建物を解体したコンクリート塊などを再利用した砂利「再生砕石」に、人体に有害なアスベスト石綿)を含む建築資材が混入しているケースが多数あることが、市民グループが、東京、埼玉、神奈川の一都二県の約百三十カ所で行った調査で分かった。解体された建築資材の分別や処理が不十分だったためとみられる。再生砕石は、駐車場や工事現場で広く使われており、全国でアスベストが身近な場所で野ざらしになっている可能性がある。
 確認できたアスベストを含む建材の多くは、工場屋根などに使われるスレート材。調査した「浦和青年の家跡地利用を考える会」(さいたま市)の斎藤紀代美代表は「形を変えたアスベストが身近にあることに驚いた。全国的な実態や健康への影響を、行政が早急に調査すべきだ」と話す。
 同会は今年五月以降、さいたま市内約百十カ所、東京都荒川区や杉並区、川崎市川崎区などの約二十カ所の計約百三十カ所を調査。駐車場や道路建設用地の再生砕石から、スレート材などの破片を採取した。
 このうち約四十カ所のサンプルを、特定非営利活動法人NPO法人)東京労働安全衛生センターに分析を依頼したところ、すべてからアスベストの一種であるクリソタイル(白石綿)や、疾病リスクがより強いとされるクロシドライト(青石綿)が見つかった。
 分析した東京労働安全衛生センターの作業環境測定士、外山尚紀さんは「未分析のサンプルも、形状からアスベストが含まれている可能性が極めて高い。混入が特定の自治体だけで起きるとは考えづらく、全国的に同じ状況ではないか」とみている。
 環境省によると、アスベストの再生砕石への混入は過去に二例ある。和歌山県橋本市のケースでは、二〇〇八年十月、工場解体で出たスレート材ががれき類とともに処理施設に運び込まれ、再生砕石に混入していたことが、県の調査で判明した。さいたま市の県施設跡地の再生砕石からも昨年八月にスレート片が見つかった。
 建設リサイクル法を所管する国土交通省は「ほかでも混入している可能性は否定しないが、実態は不明」。環境省は「スレート片からの飛散状況の測定データもなく、健康リスクは判断できない」としている。
<再生砕石> コンクリートアスファルト廃材を破砕し、表面処理を施すなどして2〜4センチ程度の破片にしたリサイクル砂利。道路の路盤材や地下配管保護のクッション用、建設用地の水はけ促進などに使われる。駐車場に敷かれることも多い。価格は、一般の砂利の6割程度と安い。
<スレート材> アスベストとセメントを原料に波板や平板に固めた建築資材。工場や住宅の屋根に使われるスレート瓦、外壁や、間仕切りなどの内装材に使われた。アスベスト含有量は5〜20%程度。1930年代から製造され、2004年に製造、出荷とも禁止された。

②スクープの翌日、<解体現場ルポ>と視点を変えて続報を掲載した。アスベスト含有廃材の余りにも乱暴な解体現場の実情に背筋が寒くなる。アスベスト混入を防ぐのは簡単ではない。

アスベスト材散乱 スレート破砕 解体現場ルポ(東京新聞 2010年8月19日)
 建物解体で出たがれき類をリサイクルした砂利「再生砕石」に人体に有害なアスベスト石綿)建材の破片が混入している問題。原因の多くは、解体現場での不十分な分別とみられている。八月初め、東京都江東区内で区や労働基準監督署の指導を受けた解体現場でも、アスベストを含むスレート片がコンクリートなどに混じって散乱し、実態の一端をうかがわせた。 (社会部・加賀大介
 江東区亀戸の事務所解体現場。二階部分から作業員が内壁のスレート板を手で外し、そのまま下に落とすと、板は砕けてほこりが舞った−。
 狭い敷地には折れ曲がった鉄骨やプラスチック板、コンクリートのがれきなどが散乱。本来、破砕してはいけないスレート板も大小さまざまに砕け、多数混じる。「これはまずい。分別しきれない」。近隣からの通報で駆けつけた労基署や区の職員が、顔をしかめた。
 付近の住民によると、建物は三十年ほど前には既にあった。当時のスレート材はほぼ例外なくアスベストが使われている。
 解体現場にはシートの囲いがなく、ほこりを抑える水まきもあまりされず、作業員はマスクをしていなかった。職員らに応対した現場責任者らしい男性は、アスベスト建材を確認する事前調査や作業計画、スレート片の処理方法などを尋ねられたが、詳しい説明ができない様子。記者の質問にも「スレート片は後で集めて処理業者に運ぶ」と繰り返すだけだった。
 区の担当者は、飛散防止のためスレート片を袋詰めにして保管するよう指示。作業員たちはがれきに水をまき、スコップで袋に詰め始めた。再生砕石の原料になるとみられる大きなコンクリートブロックなどは手で取り除いていたが、スレート片との完全な分別は難しそうに見えた。
 男性作業員に話を聞くと「アスベストがある現場とは言われてなかった」。吹き付け材に比べ、スレートの板など固形建材は非飛散性とされ、気にしないのだという。「見れば(アスベスト入りと)分かるし、割れれば飛ぶさ。でも、吹き付けの除去で、もうたくさん吸ってるからね」
   ◇  ◇
 全国解体工事業団体連合会の出野政雄事務局長は「啓発努力はしているが、会の組織率は業界全体の一割。重機で一気に壊すミンチ解体が、今も散見どころではないとの話は耳にする」と明かす。ある大手ゼネコン幹部も「安心して任せられる業者は一部。うちの委託先は一、二社に限っている」という。
 一般住宅ならミンチ解体は二、三日で終わるが、しっかり分別すれば二週間近く。その分、人件費などコストも増える。出野事務局長は「それでも100%の分別は難しい。まじめにやるほど損をするようでは困る。行政は対応を考えてほしい」とした。

③さらにスクープの2日後、今度は、環境省国土交通省の問題に視野を拡大、問題の深刻さを浮き彫りにした。行政の問題意識の甘さに慄然とする。アスベスト問題はまるで過去の過ぎ去った問題みたいだ。

「再生砕石」アスベスト混入 国、08年に可能性認識(東京新聞 2010年8月20日
 建物解体で出たがれき類を再利用した砂利「再生砕石」に有害なアスベスト石綿)建材の破片が混入している問題で、環境省と建設リサイクル法を所管する国土交通省が、二〇〇八年十二月には混入の可能性を認識しながら、その後発覚した埼玉、和歌山県の事例を「特異なケース」などとして有効な対策を講じなかったことが、当時の審議会資料などから分かった。この問題では市民団体が調査で広範な混入を指摘しており、国の認識の甘さが批判されそうだ。 
 環境省の担当者は本紙の取材に「〇六年の廃棄物処理法改正などでアスベスト含有建材の処理に関する規制を強化し、業者向けのマニュアルを作って啓発にも取り組んできた。自治体でも指導しており、分別解体の徹底が現場で守られていないとは、想定しなかった」と説明した。
 〇八年十二月、国交省社会資本整備審議会と、環境省の中央環境審議会の小委員会の合同会合が開かれ、建設リサイクル制度の施行状況についてとりまとめが行われた。
 会合では課題に「(再生砕石原料となるコンクリートなど)特定建設資材の再資源化に支障を来す有害物質等の存在」を指摘。さらに有害物質の例に屋根などに用いられる建築資材のスレート材などアスベスト含有材を挙げ、不十分な分別で資材に混入した場合は「再資源化を阻害し、種類や濃度によっては作業者や住民の健康に多大な影響を与えるおそれがある」とした。
 その八カ月後の〇九年八月、さいたま市の埼玉県施設跡地の再生砕石からスレート片が見つかった。県と市は環境省に報告したが、原因が特定できず、砕石を敷いてから二年半が経過していたため、同省は「後から不法投棄された可能性もある」として、再生砕石に最初から混入していたとは認めず、国交省にも伝えなかった。
 今年三月には、川田龍平参院議員が国会質問で、〇八年十月に和歌山県でも解体現場で分別されなかったスレート片が再生砕石に混入していたことを指摘。だが、両省は「業者の過失による特異なケース」とし、実態調査などはしていない。

④同様の内容の記事が、「共同通信」や「しんぶん赤旗」にも掲載されたが、東京新聞が群を抜いてこの問題に熱心だ。そしてその翌日、追いかけるように各県の実情の報道された。まずは東京都。

アスベスト混入 都、業者立ち入りへ(東京新聞 2010年8月21日朝刊)
 建物解体で出たがれき類を再利用した砂利「再生砕石」にアスベスト石綿)建材の破片が混入している問題で、東京都の石原慎太郎知事は二十日の記者会見で「けしからんことだ。アスベストがあるかないかを厳密に調べて、処理しないといけない」と述べ、都内の砕石処理業者の立ち入り調査を実施する考えを示した。
 都によると、都が砕石処理を許可している業者八十八社のうち、一部を抽出して処理状況を調べる。「アスベストは産業廃棄物として分別されている、というのが前提だった」(都環境局)ため、混入をめぐる調査は初めて。市民団体の実態調査では都内でも混入事例が判明している。
 都は七月、東京建設業協会など七つの業界団体に文書で混入防止を徹底するよう求めた。石原知事は「粗忽(そこつ)というかずさんというか、あってはならないこと。一つの大きな反省の素材だと思う」と語った。

次に神奈川県。

市担当者ら状況確認 川崎区 アスベスト放置現場(東京新聞 2010年8月21日【神奈川】)
アスベスト入りのスレート片が敷かれた駐車場を確認する市の担当者ら=川崎区で
 アスベスト石綿)を含む建築資材のスレート材の破片が、川崎市川崎区小田の駐車場に大量に放置されている問題で、市の担当者らが二十日、現場の状況を確認した。
 スレート片は地元の屋根工事業の男性(故人)が約二十年前、捨てたものとみられている。この日は関係する環境対策課、廃棄物指導課、公害研究所の職員計五人と、土地を所有する東京電力の関連会社の社員二人が現場を訪れ、砂利に混じって敷かれているスレート片の写真を撮るなどした。
 市によると、これまで近所の住民からの通報などはなかったという。市は今後の対応を検討している。 (北条香子)

日にちは前後するがもう一つ神奈川県。

アスベスト混入 リサイクル以外でも(東京新聞 2010年8月20日
 川崎市川崎区の住宅地にある駐車場で、アスベスト石綿)を原料とした建築資材のスレート材の破片が砂利に混じって大量に放置されている。建物解体で出たがれき類を再利用する「再生砕石」にスレート片が混入する問題が明らかになっているが、この駐車場の破片は業者が建物解体で扱った廃材をそのまま捨てたらしい。リサイクル過程以外でもスレート片は身近な場所に流出しているようだ。 (川崎支局・北条香子)
 同区小田のJR南武線沿いの住宅地。車五台分の駐車場に大小さまざまなスレート片が混ざった砂利が敷かれている。砂利の大半がスレート片という場所も。大きいものは十センチ四方近くもあり、二〜四センチの再生砕石に混入する破片と比べると二倍以上だ。
 発見した近くに住む建築士渡辺治さん(50)が採取したサンプルをNPO法人「東京労働安全衛生センター」に分析してもらったところ、アスベストの一種のクリソタイル(白石綿)が検出された。
 渡辺さんは「車のタイヤがスレート片を細かく砕き、舞い上がった粉じんを近所の住民が吸い込む可能性がある」と警戒する。
 近所の人の話では、地元の屋根工事業の男性(故人)が二十数年前からスレート材を砕いて駐車場に捨てていたという。男性の妻(78)は本紙の取材に「主人は長年、工場の屋根の設置や解体をしていた。駐車場にスレート材を置いていたが、アスベストが騒がれだし、十年ほど前に処理した。その一部が残っているかもしれない」と話した。
 環境省によると、二十年前とすればスレート材は一般の産業廃棄物と同じ扱いで、小規模なら処理の届け出などは不要だった可能性があるという。担当者は「今後処理する場合は現在の法規制が適用される」とした。渡辺さんは「この地域はかつては工業地帯で屋根などにスレート材を使った工場が多かった。同じような経緯で、ほかでもスレート材の破片が野ざらしになっていないだろうか」と心配する。
 川崎市は「現地を確認し、対応を検討する」としている。

そして栃木県。

栃木県 アスベスト混入防止徹底を通知(東京新聞 2010年8月20日
 アスベスト建材の破片が再生砕石に混入している問題は、対策に動きだす自治体が現れた。まずは行政として業者に混入防止を求める通知を出す手段がとられるが、アスベスト建材の破片が各地に散乱している状況が見つかれば、業者への立ち入り調査や、砕石使用場所の実態調査も迫られそうだ。
 本紙の報道を受け、栃木県は十九日、再生砕石の製造に携わる県内の八十七業者に対し、混入防止を徹底するよう通知した。
 県廃棄物対策課は「解体現場での分別が不十分であれば、リサイクルの過程で混入する恐れは否定できない。処理施設にアスベスト建材が搬入されないよう、事業者には管理体制を強化してほしい」としている。
 昨年八月に埼玉県施設跡地の再生砕石からアスベストを含むスレート片が見つかったさいたま市は今年六月、市内十五の砕石処理業者に混入防止を促す通知を文書で出した。
 文書は「再生砕石にかかる石綿含有建材の混入防止について」と題し、許可がなければアスベスト含有建材の受け入れ、処理ができないことを説明。解体現場などから廃材が搬入される際、スレート材など異物混入チェックを十分行い、混入している場合は受け入れ拒否するよう求めた。
 二〜三月には処理施設への臨時の立ち入り検査も実施した。本年度も既に立ち入りを行ったが、スレート材などの混入は見当たらなかったという。

⑤ここまでが東京新聞の記事、どうですかこの組織的な問題の追及姿勢、見事な連続記事ではないか。
今度は、記事の掲載先が変わって、日経BP社のウェブマガジン「ECO JAPAN」に掲載された再生砕石へのアスベスト混入問題に対する各自治体の対応についての記事。これも全文引用させてもらおう。

アスベストに対する意識の差が歴然、明暗分かれた自治体の対応/リサイクル揺るがす再生砕石のアスベスト問題(2)/ジャーナリスト井部正之(2010年9月13日)
 建築物の解体にともなって発生するコンクリート廃材などから製造した再生砕石にアスベストを含んだものが多数存在することが明らかになった今回の問題を巡って、行政の対応は大きな違いをみせた。
「あってはならないこと」と石原都知事
 「東京新聞」のスクープから2日後の8月20日、東京都の石原慎太郎知事は定例会見でこの問題について聞かれ、「そこつというかずさんというか、あってはならないこと」と感想を述べた後、「これから、ある建物が解体されて、その素材を何かの形で有効に使うという時に、その中にアスベストがどの程度あるかないかということは、厳密に調べて、処理をしなくちゃいけない」と調査を実施する意向を明らかにした。
 神奈川県の松沢成文知事は25日の定例会見の冒頭でこの問題への対応策を発表した。それによれば、(1)関連業者にアスベスト混入確認やそうした建材の破砕処理をしないよう依頼した、、(2)再生砕石を生産する産廃処理業者46社に緊急立入検査を実施する、、(3)建設リサイクル法の届出書にアスベストがあると記載されているすべての解体工事現場に立ち入り調査を実施する──という。また松沢知事自身の考えについてこう語った。
 「今のところ、どのような経緯で再生砕石にアスベスト含有のスレート板の破片が混入したかというのは分からないわけで、それを立ち入り検査で県の方もきちんと調べます。断定的なことは言えませんが、まず廃棄物処理法に抵触する可能性があると思いますし、アスベストによる健康被害を防止するためにですね、法に基づいてきちんとした処理をしていく必要があると思います。もし、そういう含有物があった場合は、それぞれの業者の皆さんにも責任があるわけでありまして、県の方としては、しっかりと調査をして対応を考えていきたいと思います」
 川崎市は市長発言こそなかったが、神奈川県と同じく25日に解体現場への立ち入りの強化や市内で再生砕石を製造する産廃処理業者への調査を開始すると発表した。このように、いずれの自治体もきちんとした調査と対応を明言した。
埼玉県の異常な対応
 それに対し、今回の問題の発生源ともいえる埼玉県の対応ぶりは異様なものだった。
 石原都知事が厳密な調査を約束した翌日の8月21日、埼玉県の上田清司知事は定例会見でこの件について問われると、用意していたアスベスト建材のサンプルを示しながら、「先般、新都心の場所で30分で5個、アスベスト入りの破片を見つけたということでしたので、18日にも早速、職員を行かせて見てきましたが、発見されなかった。念のためにということで、今度は21日に、産業廃棄物指導課長自ら、合計4名の職員で30分間、延べ2時間やったんですが、発見できなかった」と答えた。
 前回報じた「東京新聞」のスクープ記事は、さいたま新都心の県有地からアスベスト建材が見つかっていることに関連して、この問題を告発した市民団体「浦和青年の家跡地利用を考える会(考える会)」の斎藤紀代美代表らとともに記者が現地を訪れた際、30分でスレート片を5個見つけたとも報じていた。上田知事の発言は再生砕石へのアスベスト混入を実質否定するものである。
 また上田知事は「固まったやつの中にアスベストが混入されている状態で飛散をする可能性はゼロではありませんがほとんどない。したがって、地域住民の方がこれによって何か被害を受ける可能性ってのはほとんどない」と言いながら、わざわざアスベスト建材を密封してあるビニール袋から出して、断面を記者のほうに向けたり、ひらひらと振ったりするパフォーマンスまでしてみせた。
 「東京新聞」の記者から、専門家も同行せず本当に職員だけできちんとアスベスト建材が見分けられるのかと質問されると、「もちろん。廃棄物指導課長ですから」と即答した。
 さらに記者に調査が不十分ではないかと聞かれると、「いえいえ、だから搬入先はちゃんとチェックしましたが、なかったんです。なぜか、そこから持ってきたんですが、そこん中にはあったと。なかなか不思議なことが起きていますね。ミステリーですね」と芝居っ気たっぷりに言い、「いろんないたずらもあるのかもしれません」と付け加えた。
 会見で上田知事は、十分な調査をしたにもかかわらず見つからないのだと強調し、あたかも市民団体や「東京新聞」の記者が再生砕石にアスベスト建材が入っていることをでっち上げているかのような言いぶりだった。
現物前に「ない」と言い張る
 さいたま市にいたっては、もっと露骨だった。
 今回の再生砕石へのアスベスト混入の原因について、さいたま市環境対策課の担当者に聞いたところ、「連絡してきた住民がスレート片を(現場で)混ぜたんじゃないか」と言い放った。根拠は何も示さなかった。さいたま市環境省にも同様の説明をしていて、「信用ならない人物による犯行」と同省の担当者は信じていたほどだ。
 「とんでもない話です。そんなことをする理由が私たちのどこにあるんでしょうか」と斎藤代表はあきれた様子で話す。
 彼らにはそんなことをしても何の得もない。むしろ斎藤代表らに責任を押しつけることで、行政側はずさんな調査などを正当化できる。特に市内100カ所以上で再生砕石からアスベスト含有とみられるスレート片が見つかったさいたま市にとっては、その恩恵は大きい。
 今回の再生砕石のアスベスト問題は、2009年8月に斎藤代表らが県有施設跡地からアスベストを含有するスレート片を見つけたことが発端であることは前回報じた。斎藤代表らは今年3月ごろから徐々に調査を始めていくのだが、かれらがこの件にこれほどのめり込むようになったのは、実はさいたま市の対応の悪さによるところが大きい。
 斎藤代表らは5月ごろから市内の河川の歩道や公園、道路工事現場に使われた再生砕石にアスベスト建材が混ざっていることを埼玉県やさいたま市に連絡し、対応を求めてきた。
 ところが、行政側が現場に行くといつもアスベスト建材は発見されないのである。そこで斎藤代表らは調査時にいっしょに立ち会い、建材を共同で採取することを提案してきた。しかし、県や市は拒否し続けている。
 例外的にさいたま市が6月にいくつかの現場で「考える会」の立ち会いのもと調査をしたことがある。その際、いずれの現場でもスレート片を確認し、市が回収したのだが、それらのサンプルを同市はいまだに分析しようとしない。
 一方、その後に改めて環境部局が現場を訪れて調査をし、「なかった」と報告している。住民にも「アスベスト建材はなかった。安全です」と説明するのだからたちが悪い。
 改めてさいたま市に、なぜ採取して2カ月以上も分析しないのか質したが、「(対応)方針が決まっていない。方針を検討中」と繰り返すばかりだった。
 「行政は再生砕石のアスベスト問題をなかったことにしようとしている」と斎藤代表は危機感を抱いている。

埼玉県の異様な対応ばかりが目立って、埼玉県民として恥ずかしい。産業廃棄物を利用した名前だけは美しいリサイクル品なるものの危険性がお分かりになっていないようだ。これはハッキリ言って廃棄物処理法違反の違法行為であろう。今後の厳しい対応を期待する。
環境問題は、広域的な大気汚染や水質汚濁から、局地的な狭い範囲の土壌汚染へと、汚染の範囲がシフトしてきているので、取り組みが非常に難しくなってきている。対岸の火事にしてはならない。