武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 司法修習生の給与制問題、継続の方向へ第一歩


先日、東京弁護士会が主催する「司法修習生の給与制継続を求める市民集会」に行ってきた。今年に入ってから春頃に動き始めた運動が、みるみる拡大し全国的な規模に発展してきていることに意を強くした。新自由主義の側からはそれなりの意見はあると思うが、日弁連が主張しているように、経済的に苦しい階層の若者を法曹界から排除してしまいかねない改革は、職業選択の機会均等の理念にも反するし、法曹界を今以上に富裕層寄りに偏向した、偏ったものにしてしまう恐れは確かにある。機会均等は民主的社会に人材を供給する土壌である、コストを負担しても守る価値はある。
11月1日の新制度施行に向けた活動が、功を奏するかどうか危惧しながら給与制存続に向けた運動に協力してきたが、やっと曙光が見えてきた感じがするニュースがメディアに流れた。
民主党の党首選挙一色に塗りつぶされた感のある新聞だが、朝日毎日読売など各紙が、制度存続の方向でニュースを掲載した。三紙の記事を引用しておこう。
なお、今週の木曜日16日に、11時から日比谷野外音楽堂で<司法修習生に対する給費制存続を求める2000人決起集会・パレード>が日弁連主催で企画されている。久しぶりに2000人規模のデモ行進も計画されており、これまでの運動の一つのピークになるだろう。関心のある人は16日は日比谷野音へ。

司法修習生「給費制」存続を検討 民主党法務部門会議(朝日新聞2010年9月14日6時37分)
 民主党は13日の法務部門会議で、司法修習生が国から一律に給与を受け取る「給費制」存続の検討を始めた。今後、政策調査会で正式決定したうえで、関連法の改正をめざして野党との協議に入る。
 「給費制」は2004年に成立した改正裁判所法で、必要な人に貸し出す「貸与制」に今年11月1日から移行することになっている。民主党は改正時に賛成していたが、日本弁護士連合会などが「修習生が多額の借金を抱える制度では、優秀で多様な法律家が確保できなくなる」と主張していることに配慮した形だ。
 ただ、給費制を存続するためには、再度の法改正が必要。参院過半数を野党が占める「ねじれ国会」で成立の行方も不透明だ。この日の部門会議では「日弁連側も参加し、十分な議論を経て法改正したのをなぜ再改正するのか」との異論も出たという。
 貸与制では、修習生は月18万〜28万円を無利子で借り、返済まで5年間の猶予期間もある。9日に発表があった新司法試験の合格者から切り替わる予定で、最高裁はすでに貸与申請の受け付けを始めている。最高裁日弁連に対し、「富裕層しか法曹になれなくなる」とした主張の理由や根拠について、具体的な説明を求める質問書を10日付で送付。日弁連は、13日付の文書で「就職難や将来の収入が不安定な状況で経済的負担は大きく、法曹の道を断念する事態がすでに生じている」と回答した。

次の読売の見出しが、印象的、今の時点で「取りやめへ」の見出しはフライング気味だが、雰囲気は良くわかる。

司法修習生の給与継続、「貸与制」取りやめへ(読売新聞2010年9月14日03時04分)
 民主党は13日、政策調査会の法務部門会議を開き、司法修習生に国が給与を支給する「給費制」を維持する方針を確認した。政策調査会の了承を経て、議員立法による裁判所法改正を目指す。給費制については、10月末で廃止し、11月から国が資金を貸与し無利子で返還させる「貸与制」に切り替わる予定で、立法措置もされていた。
 現在、司法修習生には1年間の修習期間中、国から毎月約20万円の給与が支払われている。しかし政府は司法制度改革で法曹人口の増加が打ち出されたことなどから貸与制に切り替えることを決め、2004年に裁判所法を改正した。
 これに対し、今年4月以降、日本弁護士連合会は法科大学院の学費などで借金を抱えている人が多い現状を踏まえ、「富裕層しか法律家になれなくなる」として、国会議員に給費制の継続を働きかける動きを強め、最高裁が、主張の根拠を具体的に示すよう求める異例の質問状を日弁連に送る事態になっていた。

司法修習生:給費制度継続の方針 民主党部門会議、日弁連要請で「再修正」(毎日新聞2010年9月14日)
 民主党は13日の法務部門会議で、司法修習生に国が給与を支払う「給費制」を継続する方針を確認した。改正裁判所法が11月1日に施行され、給費制を廃止し生活資金を貸し付ける「貸与制」に移行するが、施行前に与野党協議などを経て再修正の議員立法化を目指す。給費制については日本弁護士連合会が「優秀な法律家の確保が貸与制では困難」として継続を求めていた。
 改正裁判所法は、司法制度改革の一環で、04年、自民、民主、公明党の賛成多数で成立した。司法試験合格者を年3000人程度に増やす方針を受け、財政負担の合理化を図った。臨時国会のスケジュール面から再修正にはハードルもある。
 この日の部門会議は宇都宮健児日弁連会長らから意見聴取して議論。終了後、座長の今野東参院議員は記者団に「修習生の仕事を考えて日弁連の主張を踏まえた」と述べた。
 司法修習は司法試験合格者が1年間研修を受ける制度。現在は月約20万円の給与が支給されるが、貸与制になれば毎月18万〜28万円が貸与され、修習の5年後から10年以内に返還する。【石川淳一