武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 『聴け聴けクラシック―ぼくの名曲101選』 砂川しげひさ著 (発行朝日文庫1993/12/15)

いつの頃からか、漫画家砂川しげひさのクラシック・エッセイの愛読者になっていた。砂川しげひさの良いところは、クラシックへの熱烈なファンの立場からの視点を、かたくなに崩そうとしないことと、決して難しいことを言わないこと。ことクラシックをネタにした時には、イラストは漫画風に戯画化しても、テキストの方は意外なほど真面目さを守って、軽さに意を尽くしてくれること。
楽しいマンガ表現と軽妙なテキストのおかげで、寝っ転がって気楽にクラシックの話題を楽しめるので、いつの間にか何冊も読んでしまっていた。中でも<ぼくの名曲101選>とサブテーマのついた一冊は、砂川さんの好みで絞り込んだひと味違う選曲による名曲案内となっており、よくある名曲案内に飽き足らない人には、是非お勧め。非常に趣味の良い、しかも抜群の選曲眼によって選ばれた癖のある名曲揃いなので感心する。長年の蓄積なければこんな選曲は出てこない。筋金入りのクラシック・フリークと言うべきか。
つけられている推薦文に長短はあれど、多様な砂川さんの語り口が冴え渡り、角度をかえた変化球となっていてどれも楽しい。専門家には真似の出来ない情のこもって推薦文を読むと、ついCDラックを探して手元にあるものは聴き直してみたくなる。聴き返してみると、なるほどと頷くことも多く、得した気分になることが多い。目次をもとにして、曲数を数えてみたら次のようになった。曲数が多いだけに室内楽には一段と力が入っているような気がする。

交響曲―14
管弦楽曲―22
協奏曲―14
室内楽曲―25
器楽曲―17
オペラ・声楽曲―9

ついでに、砂川しげひさのクラシック関連書籍を検索してみたら何と15点が見つかった。漫画家としては、ずいぶんとこのジャンルに力が入っているのに今さらながら驚いた。半分以上読んだことがあるが、未読ものもがあるで今後の楽しみにしておこう。

スラブの星ドボルザーク音楽之友社1982/04)
なんたってクラシック―ぼくの一方的音楽宣言(光文社1984/07)
演奏家たちのタックルランド(音楽之友社1984/11)
コテン音楽帖(朝日新聞社1986/09)
クラシックだドン!―ぼくの漫楽帖 (共同通信社1986/9)
コテン氏のおもしろ組曲朝日新聞社1987/09)
コテン氏の面白オペラ(朝日新聞社1989/01)
コテン氏のカプリッチョ気分(朝日新聞社1989/10)
コテン氏のラストコンサート(朝日新聞社1990/11)
がんばれクラシック(朝日新聞1993/07)
聴け聴けクラシック―ぼくの名曲101選(朝日新聞1993/12)
つべこべいわずにベートーヴェン(東京書籍1998/12)
のぼりつめたら大バッハ(東京書籍1998/12)
なんたってモーツァルト(東京書籍1998/12)
コテンコテン流 クラシック超入門(東京書籍2000/8/9)