武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 アスベスト関連の最も信頼できるNPOが10項目のアスベスト対策を提言 その傾聴すべき内容を多くの人に知ってもらいたいために(写真は散歩の途中に道端で見つけたヘラオオバコの花、ヨーロッパ原産の帰化植物、江戸時代の終わりごろ開国とともにこの国にやってきた)

toumeioj32005-07-22

 アスベスト健康被害報道が連日新聞紙面に出ている。テレビも特集を組むなど、アスベスト報道に取り組みだした。電波媒体、新聞媒体、次は雑誌媒体、そして、書籍媒体へと池に投じた石の波紋が広がるように、今後も法則的に反響が広がってゆくものと予測でされる。
 しかし、これらのマスコミ報道(各種媒体)は、当然のことながら、問題を解決するものではない。マスコミが報道しようがすまいがいろいろな健康被害は厳然として存在する。今回明らかになったアスベストによる健康被害は、以前からあったしマスコミが今後興味をうしない報道の水面上に浮上してこなくなっても存在し続ける。健康被害対策は、健康被害そのものがなくならない限り継続しなければならない。健康被害による被害者の苦痛は、治癒が難しいこの種の被害では、生きている限り続く。今回マスコミが大きくアスベスト被害をクローズアップしたことは大きい。マスコミがこちらを向いている時でないと出来ないこともあるのだ。今のうちに出来るだけ前進しなければ。
 継続する問題に対しては、「中皮腫じん肺アスベストセンター」のような一つの問題関心のもとに結集したNPOの活動が重要な意義を持つ。私は、同センターの存在とその活動に深い敬意を抱いている。今回、同センターが発したこの提案を支持する。
 今回の提案は、①アスベスト関連の情報公開の徹底、②健康被害への緊急対策、③被害防止の緊急対策などの3点を主要な柱に、10項目の具体的な対応を提案するもの。できるだけ多くの人に知ってもらいたいので、全文を引用する。ぜひ、全文に目を通していただきたい。行動できる人は、行動を開始していただきたい。当ブログのアンテナから同センターのHPにアクセスできます。

石綿アスベスト)に関する10項目対策の提案
中皮腫じん肺アスベストセンター(2005年7月14日)

石綿製造業と周辺住民に発生した悪性中皮腫(ちゅうひしゅ)等の石綿関連疾患に関して、この間多くの報道が行われています。日本でも石綿製造業の石綿肺は戦前から知られ、悪性中皮腫石綿関連肺癌の発生は1970年代には知られていました。そうした事実は今までは、関係した被災者、NPO、行政機関、企業、労働組合、医療関係者、報道機関のそれぞれ一部にとどまり、今回ほど広く報道して頂いた事はありませんでした。欧米から遅れること数十年で石綿のリスク認識に到った事は大変残念ですが、石綿障害予防規則が施行された2005年7月に、日本の多くの人が中皮腫という言葉を知り、真剣に今後の対策を考えるに到った事は評価できる事態と考えています。
しかしながら現状の報道では、被害の報道が相次いで、今後の日本の石綿対策に対する、建設的な報道が少ないように思われます。私達は、石綿の全面禁止、石綿関連疾患の健康対策の充実、石綿障害予防規則の遵守と更に残る問題点、石綿の廃棄物対策の充実、大気汚染防止法石綿の敷地境界10F/Lの現在における妥当性、地震の際の石綿対策等、様々な石綿対策の必要性を感じております。今回は緊急に重要と考える以下の10項目に絞り、緊急の提案をさせて頂きます。

(1) 石綿情報の保有者による情報の提供

石綿製造業の情報開示
この間の石綿関連疾患の公表の流れを更に徹底させ、関連する下請会社や工場を含めた石綿関連疾患の情報を、是非公表して頂きたい。また、現在まで製造された石綿含有製品と代替製品に関して、写真と製造年代及び市場への流通年代を含めた情報を開示して頂きたい。特に過去の石綿吹きつけ業に従事した会社は、今後の環境への吹きつけ石綿の飛散防止のために、貴社が保有している石綿吹きつけ建築物台帳を、一定の形で公表されたい。
「関連する下請企業の数十人単位の被害が報告されていない。」等の情報が、よせられています。情報を正確に伝えている企業に準じて、今後の情報開示を行って下さい。
また、多くのユーザー企業や最終消費者にとっては、石綿含有製品及び代替製品の写真と年代情報が、過去の石綿曝露の不安を取り除くためにも、今後の飛散防止に役立てるためにも有用です。
石綿製造業及び石綿協会は、是非保有している石綿商品の情報を提供されたい。
その他の石綿関連企業も、今後石綿製造業に準じた情報の開示を行って頂きたい。

厚労省による石綿被害の事業場情報付き全面開示とHP掲載及び年次更新を、求めます。
厚生労働省本省には統計情報しかないとは思いますが、各労基署には、事業場名、疾病名、給付種別など個別情報が保管されています。石綿製造企業以上の情報を保有しているのは、厚生労働省なのです。厚生労働省は、認定年、企業名、疾病名に緊急に整理して、全面開示をするべきです。そのことで、多くの職種や地域の方が、石綿の被害の実態を知り、今後注意をする事が可能です。
また厚生労働書は特定化学物質等障害防止規則の関連で、1970年代から1000社を越す石綿製造業に関して、当該監督署による検査や指導を行ってきています。企業、事業所、名称、所在地、使用石綿の種類、量、時期、当該企業の石綿濃度、特定化学物質に関する健康診断結果等に関して、多くの周辺住民がわかるように整備して公表して頂きたい。

③その他の国、自治体行政の情報開示
経済産業省窯業建材課は、石綿関連企業の商品とその代替化等に関して、経年的な調査を行ってきました。その情報を多くの国民が利用できる形で、公表して頂きたい。
環境省大気汚染防止法に基づく過去の情報を保有しています。公表が必要です。
文部科学省は、過去の学校等における吹きつけ石綿の情報を、保有しています。
自治体の建築部局は過去の公共建築物の吹きつけ石綿及び石綿含有建材の情報を、保有しています。それらの情報を、周囲に滞在した人が使用できる様に公表して頂きたい。

(2)国は過去に永眠、現在発症している悪性中皮腫石綿関連肺癌の方への対策を、早急に行って頂きたい。
石綿関連疾患の診断基準として最も有名なヘルシンキ・クライテリアによると、悪性中皮腫の80%が職業性石綿曝露によるとされています。欧米ではガン登録制度の一つとして中皮腫登録制度の国もあり、労災認定を受ける比率も高いとされています。またその他の20%の中には、石綿の環境曝露や家族曝露が一定の比率で含まれている訳ですが、日本では報告が散見されているにすぎません。現在まで複数の団体が、悪性中皮腫の全数調査の実施を要望したのにもかかわらず国は実施せず、家族曝露を報告した臨床医師に対する調査すら実施していません。

④国は、早急に中皮腫登録制度を導入し、過去の中皮腫の全数調査の実施を行って頂きたい。
他の国は、癌登録制度の一つとして中皮腫登録制度を導入し、職業や環境曝露や家族曝露の診断に成果をあげています。国は中皮腫登録制度を実施すべきです。また、死亡診断書の提出されている、過去の悪性中皮腫の全数調査を早急に行う調査研究班を設置すべきです。この調査結果で、今後の日本の石綿対策が進展する事になるでしょう。

⑤労災補償制度で補償される人に向けた対策
呼吸器内科医や胸部外科医は主に治療に専念し、職業性疾患に詳しい医師に並行して受診し、NPOの援助を受けて労災認定に到る事が実際的な場合が多いと思われます。2003年の労災認定者の恐らく3分の1は、民間の医師やNPOの援助を受けた例だと思います。労災病院に限定せず、広く民間の医師やNPOの情報も周知する事が現実的です。現在不安を感じている方への対策も同様です。

⑥環境曝露や家族曝露の方への対策
環境曝露や家族曝露の方は、既存の医療保障や休業補償や遺族補償の体系では、救済されない状態になっています。国は環境曝露と家族曝露の実態の調査研究を行うと共に、関連する患者が救済される様な補償体制造りを検討して頂きたい。

⑦診断と治療に関する対策
悪性中皮腫石綿肺癌に関する診断と治療の進歩が、切実に望まれています。診断と治療を促進する研究体制造りを早急に行って下さい。
その一方、各方面の努力にかかわらず大変残念な事ですが、数年以内に悪性中皮腫患者の予後を画期的に改善する診断と治療法の国際的な開発は難しい可能性も多いと思われます。患者さんと家族にとっては、外来入院含めたケアの体制に関する研究が重要な時期が続きます。当事者団体・NPOを含めた、ケアに関する研究班を是非設置して頂きたい。

⑧退職後の健康管理体制の確立 石綿健康管理手帳の改善
職場で石綿退職後の健康管理として、石綿健康管理手帳制度が既に設けられています。しかしながら、手帳の支給要件が、石綿肺の存在、胸膜肥厚斑の存在と狭めているため、石綿吸入者の多くが支給されていません。また厚生労働省が認可した都道府県内2カ所程度の医療機関しか認められない制度となっています。
1)職業性石綿曝露が数ヶ月以上の全員に退職後の石綿健康管理手帳を支給する事
2)石綿健康管理手帳で健診の受けられる医療機関を届け出制とする事
3)職業性曝露に伴う家族曝露者に健康管理手帳制度の対象に拡充

(3) 現在、石綿の飛散が予想される方への緊急対策

⑨吹きつけ石綿の部屋で暮らす人への緊急対策 国、行政、建築物保有者は、天井や壁に、吹きつけ石綿、吹きつけ岩綿石綿含有)のある施設や部屋で、長時間過ごさざるをえない方への対策を、早急に実施して頂きたい。
封じ込めも、囲い込みもない、吹きつけ石綿の下で、暮らし働く方からの悲痛な相談も増加しています。早急な除去対策が必要であり、零細の民間の建物保有者の場合には、新しく補助制度を導入した吹きつけ石綿対策が必要と考えます。

⑩その他の石綿吹きつけ、石綿含有建材の対策
飛散が懸念される場合は、石綿障害予防規則の周知を、当面より一層行って頂きたい。住民が飛散を懸念した際の相談先を明示して頂きたい。