武蔵野日和下駄

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 翼を広げて飛ぶ鳥形埴輪 和歌山の古墳から(画像は今朝の朝日新聞1面の埴輪の写真をスキャナーで読み込んだもの)

toumeioj32005-07-21


 7/21の今朝、朝日新聞の一面を見て、ひときわ目を引く1面の写真に釘付けになった。なんという愛らしくしかものびのびとした形、粘土を捏ね上げて、この形を作り出した大むかしの人々の気持ちが漂いだしてきそうな感じを受け、しばらくぼっと見とれてしまった。新聞の記事によれば、見つかったのは和歌山県の岩橋千塚古墳群、鳥の形をした埴輪は、全国で100例ほどだが、翼を広げた形は初めてらしい。記事の一部を引用する。

 見つかった鳥形埴輪は全体が赤茶色の素焼きで、高さ約40センチ、全長約50センチ。右側には長さ約25センチの翼が接合され、左翼はちぎれた状態だった。水平に飛んでいる格好を表したとみられる。胴体には直径1センチ程度の穴が約10カ所あり、制作当時、実際に鳥の羽が差し込まれ、装飾された可能性があるという。

 埴輪は、形がシンプルで抽象性が高い形をしていてレプリカが作りやすいらしく、小型のレプリカをよく目にするので、つい小さい形を思い浮かべがちだが、実物はかなりでかい。私たちのウサギ小屋のような室内のインテリアに納まるような代物ではない。
 古代人のビッグサイズの古墳を飾るための装飾品なので、大きさのスケールが違う。高さ40センチ、全長50センチという大きさ。同記事によると「鳥形埴輪には、死者の魂を来世に運ぶなど様々な解釈があるが、飛ぶ形にされた理由は不明という。」
 埴輪をみていていつも思うことだが、目の位置の空洞がなんとも印象的。あの穴から何かが漂いだすか潜り込むか、いずれにしてもあの穴の奥にじっとわだかまっている暗闇の存在が何ともいえないリアリティーを感じさせる。この埴輪についていえば、くちばしのシンプルな線の象徴性はどうだろう。頭部の可愛らしい形といい見事の一語につきる。
 まだ翼の片方だけしか見つかっていないようだが、はやく両翼が復元されたものの周りををぐるりと回って見てみたい。世界中の古代の造形に見事な飛ぶ鳥の形が見つかるが、この埴輪のような優しい感じがするものは珍しいのではないか。この国の古代人の美意識に、近しいものを感じた。