武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 『図解・あなたのまわりのアスベスト危険度診断』中皮腫・塵肺・アスベストセンター編(朝日新聞社)

toumeioj32005-12-21

 洪水のようだったアスベスト報道が一段落した。国のほうも法的な整備をすすめ、アスベスト被害の救済策に新たな姿勢で取り組みだした。だが、これでアスベスト問題がなくなったわけではない。アスベスト被害者は今後も増え続け、被爆者の「静かな時限爆弾」が何時なんどき点火するか、それは今後の時の経過を待つしかないが、時は容赦なく時を刻み続ける。
 今後の対策は、既にアスベスト被爆してしまって今後発生するであろう被害者に対する対策と、新たな被爆者を作らない無アスベスト環境の構築に分かれる。そのための方策は、身の回りに既に存在するアスベストの実態について可能な限り正確な情報を入手、的確な対策を講じることであるはず。
 そんな今、最も信頼できるNPOである中皮腫じん肺アスベストセンターのメンバーによる素晴らしい啓蒙書が発売されたので紹介したい。「図解・あなたのまわりのアスベスト危険度診断」この本、100ページにも満たない中に、豊富な写真資料と分かりやすい解説で、素人にも極めて分かりやすくまとめてあり、すぐにアスベストチェックが開始できる具体的な方法が的確に盛り込まれており、実によくまとまっている。いたずらに詳しい内容は、素人をしり込みさせてしまうし、しかし、そんな素人にも実質的なチェックが確実にできることほど実用的なことはない。しかも、ことは手軽で慎重を要する。本当に上手くまとめてある。
 アスベストチェックのポイントはいくつかある。①使用の9割が建築関係なので、あえて建物に対象を絞り込んだのがいい。②盛んに利用された年代が絞り込まれているのがいい。70〜80年代、20年間に作られた建物が一番危ない。70年から90年代までの30年間が危険ゾーン。③と言うことは、次第に劣化してきているので経年劣化がもたらす危険性や解体時の危険性を強く訴えている点が、極めて現実的。④住民、周辺住民、作業に関わる労働者、それらの関係者全部に対する目配りが行き届いている。⑤行政など、どこに相談や責任を持っていけばいいかもまとめてある。庶民のアスベスト対策として必要項目をほぼ網羅している。アスベストに関心のある人は、必携といっていいほど。内容が掴めるので、目次を引用する。

アスベストっていったいなに?
②健康を蝕む「静かな時限爆弾」
アスベスト建材が使われた時期を知る
④写真で見る代表的なアスベスト建材
⑤飛散の危険性は種類によって違う
⑥飛散の危険性は状況によっても異なる
⑦気になる建物のアスベストチェック法
⑧木造日本家屋はここをチェックする
⑨鉄骨・鉄筋の建物はここを見る
⑩学校のこんなところに注意
⑪「設計図書」で製品名をチェック
アスベストがあるかどうかわからないときは?
アスベスト分析の手順
⑭見えない場所の調べ方
⑮どうする?近所の解体・改築工事
⑯自分の建物を改築・解体する時の責任
⑰公共建築物のアスベストを調べるには
⑱賃貸物件のアスベストを調べるには

 目次をご覧頂いただけで、内容の充実ぶりは一目瞭然、こんなによくできたハウツー物も珍しい。マニュアルや説明書を手がける方々にも参考書としてお手本にしてもらいたいほど。実際にアスベストのことで心配なさっている方に、この本をお薦めしたい。